四十一話
それから何不自由無い生活が四日ほど過ぎた。
いや、不自由無い、と言うのは変な表現か。とは言っても、僕の場合は不自由と言って良いと思う。
何せ外に出て町へと繰り出そうと言った事は簡単には出来ないから。ミーチェもここから遠くには出ていない。
この地下に作った隠し部屋での生活は快適と言って良いハズの物だ。けれども閉塞感は防げない。
ソレを解消するのに時折外の空気を吸う為にこの地下室から出るけれども。
その時には僕は姿を隠す魔法を使って上空へと跳んで遠目から町を眺めるだけ。
ミーチェは直ぐにでも地下室に入れる様に入り口側に待機して一分か、二分程度の深呼吸をするくらいだ。
それ以外での僕はメーニャからまだまだ色々な事を教わったり、遊戯盤で遊んで貰ったりと変わらぬ時間を過ごしていた。
相変わらずメーニャは遊戯盤での勝負に手を抜いてはくれなかったけれども。
ミーチェは部屋に籠もり切りになっている状態ではあるが、コレは諦めて貰うほかは無い。命の保証がこの中に居る間だけはされるのだから。
外に出てまた何かに襲われたりしたら目も当てられない。それにもし、ブレッツ商会の手の物が万が一にもミーチェの「行方不明具合」を確認しに来たりして、ソレに遭遇などとなったら面倒だ。
そこら辺の面でメーニャは一日一回は町へと繰り出して情報を集めて来て貰っている。
これまでは勇者の件を中心にして集めていた情報を、ケルカム商会とブレッツ商会の物にして貰っていた。
この四日間で集められたその情報で言うと。
「それじゃあミーチェが言っていた事は本当だったんだねぇ。コレで心置き無くメーニャは行動を起こせるね。」
「はい、時間を掛けてゆっくりと「削って」行く計画を建てております。」
「それってより長くこの町での情報収集に努める為って事?」
「はい、この町は王都からは超が付く程に離れておりますので、情報の信憑性や新鮮さなどは皆無です。しかし無いよりもマシなので、なるべく多くを集めて精査、集約して少しでも精確性を得たいと考えております。なので長く様子見をしておきたい所だと思いまして。」
「離れてる、それって勇者が出た王国の首都から見て田舎とか地方とか言った事だよね?でも、僕の見る限りでは町の規模はそこまで小さくも無いし、寂れても居なさそうだけど?」
「どうやら町は交易等の面で他の地との利便性が高い様子です。様々な他国の情報が旅商人等から齎される様で。ソレに、この森から得られる様々な物が町の特産品となっており、ソレを目当てにやって来る商人の買い付け等も多く、情報は入り易いのです。」
「実際に行ってみないと分からない事だねそれは。僕自身が簡単に町には入らない方が良いだろうしね。頼りにしてるよメーニャ。これからも情報収集を宜しくね。あ、それで、ケルカム商会の方は大丈夫そうなの?」
「はい、まだまだ「交渉」などが続いており、ケルカム商会は粘りを見せております。あの娘の父親は中々やるようです。ですがあと三日もすれば耐えられずに行動を起こすかと。」
「その根拠は?」
「人を多く雇っています。ソレも暴力の臭いを放つ者たちを。近日にはブレッツ商会へと襲撃を掛けると見られます。」
「わーお、ミーチェの父親って、過激派なのか・・・これは伝えておいた方が良いね。」
僕は隣の部屋へとノックをしてから入る。
もちろんメーニャが持って来たこの情報と予想をミーチェへと伝える為だ。
「ミーチェ、ちょっと君には刺激が強い知らせがある。伝えておいた方が良いと思って入らせて貰ったよ。」
「・・・はい、配慮して頂き、感謝します。で、その知らせとは?」
ミーチェはこの四日で僕への警戒は大分薄れた。メーニャへはまだまだなのだけども。
これは僕がミーチェを脅したからだけど。メーニャは魔族で、人を見るとどんな弾みで衝動を爆発させるか分からない、と。
コチラのミーチェ専用部屋にはメーニャは入らせていない。一応はどちらにも配慮しての事だ。
僕が命令と言う事でメーニャに言えばソレに従ってくれるので、これまでには暴走、或いは暴発、もしくは爆発はしていない。
こうなれば爆弾が近くに無いと言う事でミーチェも安心が増すと言うものだ。とは言え、まだまだ僕との距離を取った所に座ってこれから僕の話す情報に耳を傾けている。怖がられているのだ。
そうして僕がケルカム商会の今後の動きの予想を説明し終えるとミーチェは口元に手を添えて俯いて黙って考え始めてしまった。




