四十話
さて、あっと言う間、と迄は行かないまでも、そこそこに短い時間でかなり豪勢な部屋が出来上がった。
もちろんソレはミーチェと出会ったその場所の地下である。
こんな森の奥にこの様な地下室が存在するなど誰が想像できようか?
これまでに培って来た「暇潰し」で内装などもかなり凝った物を作れたのではないかと思う。
「さあ、ここでミーチェは暫く暮らしていれば良い。メーニャには色んな必要物資とか買い物を頼んであるから暫くすれば生活面での諸々の用意も終わるし。なるべく快適に暮らせる様に工夫はしたけど、何か不便だと思う所があれば言ってみてくれて良いよ。」
明かりは魔法で作り、便所も完備。風呂もある。ベッドは少々硬いかもしれないが、そこはまあ少し我慢して貰う所だ。
「・・・」
ミーチェからの返事は無い。茫然自失と言った感じで部屋の壁際で佇んでいる。
「そっちの扉は僕らの部屋と繋がっているから、何かあればいつでも入って来てくれて良いよ。暫くは同居、と言った感じになるのかなコレって。」
一々遠いあの迷路の最奥の部屋に戻るのは面倒だ。
ならば町の側にこの様に別荘を作ってしまえばいい話である。
「これならメーニャも町に行きやすくなるし、ここが必要無くなったら元に戻しちゃえば良いだけだしね。」
幾つもこの様な隠し拠点を作っておくのは悪い事では無いだろう。
勇者から逃げる為の手段はもっともっと欲しい所だ。隠れるだけでは根本的な解決には至らないが、時間稼ぎは出来る。
まあ解決するのに本気で取り掛かるのならば、ダンジョンを探して魔石を吸収して地力を上げる事を目指すのが良いのだろうけども。
それはソレでリスクも存在する。ダンジョンで偶然にも勇者と鉢合わせになるかもしれない。
そうなれば致命的だ。逃走一択になる。
勇者側も突然にダンジョン内で魔王と遭遇などすれば準備不足だろうから逃げられる確率は高いと思いたい。
けれどももし、その際に追跡などと言った効果の魔法があったりして、それを掛けられたりすれば?
その後の逃亡で大幅に不利となる。それは避けたい。じわじわと追い駆けられるのは勘弁願う。
「・・・父へ、私の無事を知らせておきたいのですが。」
「いや、それは不許可だね。君の要望に僕はしっかりと答えた。その結果がコレだ。それよりも上乗せしてやって欲しい事を頼むのならば、君はしっかりとその報酬を提示してから相談するべきだ。ついでに言うけども、ちゃんとその報酬は前払いが基本だよ?僕とミーチェの間には後払いと言う信用関係はまだ築けてはいないからね。」
ミーチェはどうやら僕らが本当に害意が無い事をここに来て察したらしい。
その安心からか追加で頼み事をして来たけれどもソレを僕は却下した。
だってミーチェは今何も僕らへと支払える物を持っていないからだ。
ソレに僕は魔王で、ミーチェは人族、その間にはかなり深い溝があるはずで。
「ミーチェはかなりお人好しなのかな?さっきまでの警戒心は何処に消えちゃったの?」
「・・・いえ、ソウデシタネ。でも、ちゃんと約束を守ってくれましたから。そこまで強い不信感は抱かなくても良いのだと判断しました。」
「いや、不信感はちゃんと抱いておいて。僕にじゃ無くメーニャに。彼女は僕とは違ってミーチェをどんな弾みで殺しちゃうか分かったもんじゃないから。メーニャは衝動を堪えるのに結構無理してるみたいだから。そうならない様に一応は僕もメーニャをしっかりと見てはおくけどね。」
僕のこの注意喚起にミーチェが小さくビクッと体を震わせるのだった。




