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四話

「ふ、ふは!フハハハハッ!やはり、やはり中身は魔王様では無いのだな!万が一!億が一にも何かの間違いかと!思っていたのに!・・・逃げる、だと?魔王様がその様な事をするなど!天変地異が起ころうが!絶対に無い!一体魔王様は!その魂はどうなされたのだ!?このままでは我らの悲願はどうなると!」


 いきなりマードックが正気に戻った。そして悲願がどうのと叫ぶ。


「人族を根絶やしにし!この地上を我らの楽園に!」


「えぇ・・・?それ、本気で言ってるの?」


 僕は先程からマードックの発言にドン引きさせられっぱなし。


 人を根絶、地上支配などと夢物語だと僕は感じてしまうのだが。


「魔王様の御力があれば!勇者などと言う神の使者を真っ先に殺す事さえできれば!・・・クソう!何故いつもいつも!憎い!神が!人が!勇者が!ああああああ!何故我ら魔族がこの様な!」


 正気を取り戻したのだと思ったら、違った。コレは狂ったままに一周回って戻って来ただけだ。


 僕はコレにメイドさんに目配せをした。これ、放っておいて大丈夫なの?と。


 コレにはメイドさんは黙って左右に少し首を振ってから小さな溜息を吐いただけ。


 どうやらもうマードックは元に戻せ無さそうな感じである。


「じゃあそう言う事で、僕だけでも逃げるんで、他の魔族ってのはどうぞ御勝手に。」


「・・・貴様ぁ!逃がすと思っているのかぁ!魔王様が居ないのだ!お前に代わりをやって貰うぞ!逃亡など許さん!こうなれば私が全体の指揮を執り、人族を殺し尽くしてくれる!」


「え?ヤですけど?」


「強制だぁ!逃がしてなる物かぁ!」


 そう叫んだマードックが何やら小声でうなり出した。


 僕は何をしているのかとコレを観察してしまう。してしまった。


「私の全力をぉぉぉぉぉ!掛けたぁぁぁぁぁ!封印!結界!だあああああああああ!」


 そう叫んだマードックの全身から青白い光が広がって一気にこの部屋の中を満たした。


 その光が消えた後にマードックの叫んだ言葉が僕の頭に染みて来て。


「・・・え?・・・は?ちょ、ちょっと待って?封印?結界?・・・僕の事、閉じ込めたのぉ!?うそーん!?」


「ふ、ふあははははははは!私は相手の魂を見定める事の出来る特殊な目がある!そして!お前の魂は完全に見切った!この封印結界はお前だけを通さぬ!この部屋からお前は!お前だけは出られない!大人しく魔王様の役を演じて貰うぞ。もうこうなれば私が人族の全てを撃滅せしめれば良いのだ。お前になどに何も期待はせん。只そこの椅子に座り続けていれば良い。寧ろ・・・何もさせるかぁ!このボケがぁ!」


「えぇ、ちょ、何ソレェ・・・」


 マードックは最後に僕へと罵倒の言葉をぶつけて来る。どうにもコレには精神崩壊仕掛けて来ている様に僕には感じられた。


 どうやら狂気のままに一周回った頭でマードックは人族へと戦争を仕掛ける気マンマンだ。


 しかも僕はお飾りで、そして何もさせないと言っている。


 この戦争をマードックは独自の判断と戦略で人族を攻める気の様だ。


「メーニャ!分かっているな?誰にもこの事を漏らすなよ?魔王様が魔王様では無いなどと、そんな事がもし魔族の中に広がればその混乱はどれ程となるか・・・喋れば・・・殺す。」


 メイドさんはどうやらその名をメーニャと言うらしい。


 マードックはそのメーニャに口止めをしている。


 しかし殺すとまで脅されたメーニャは何故か少々の呆れを含んだ溜息を小さく一つ吐き出して「はい」とだけ口にする。


 コレにはどうにもメーニャの様子が僕には奇妙に見える。


(どうにも凄く偉いのだろうマードックに水をぶっ掛けて冷静にさせようとするわ、今のみたいに殺すなんてめっちゃコワイ顔で睨まれてもあの反応って・・・度胸があるとか言う段階を遥かに超えて無い?)


 度胸と言う言葉がどうにもこの場合適切では無いと思った。


 メーニャから感じるその雰囲気はもっと別の何かに思えて仕方が無い。


「私はもう行く。メーニャ、世話は任せたぞ。こやつが何かおかしな真似をした際にはお前が止めろ。手に終えなかった場合は直ぐに私に連絡を寄越せ。良いな?」


 僕がそんな事を考えていたら冷たい視線をこちらに向けて来ていたマードックはそう言って部屋から出て行ってしまった。

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