三十九話
「父親の元に戻れればソレで身の安全は確保できるじゃ無いか。僕にソレをお願いすれば良いんじゃないの?一々遠回りに自分なんて居ない方が良いなんて言うもんじゃ無いと思うけどね。・・・あ、そっか、君から見れば信用のしの字も置けない魔族なんだよね、僕らは。そりゃ商会を助けて欲しいとは口が裂けても言えないね。僕らが君を商会に無事に送り届けようモノなら、助けた恩が君にだけ発生するのでは無くて君の父親にも波及するもんなぁ。後でその事を材料に何を要求されるか分からないと考えれば、まあ、ここで町に戻る選択肢は無くなるか。」
僕はこの見た目である。そして魔王などと名乗った。
ならばミーチェは人族として、僕らへと信用など一切できるはずも無い訳だ。
しかし必死に自分の命の保証諸々を考えて、この様な歪な事情説明になっていると。
「うん?もしかしてメーニャの喋ってた事もちゃんと理解しての説明?」
僕はここで気づいた。どうやらミーチェはかなりしたたかな性格をしている模様だ。しかも頭の回転もそこそこに高いらしい。
「悪党だって事で、その敵対商会をメーニャに、もしかしたら潰して貰えるかもとか思い付いた?」
ミーチェはかなり度胸もある方で、そう追究した僕から顔を逸らしたりはしなかった。
この情報を知らせれば自分の身が今後に如何になろうとも、そのブレッツ商会とやらをメーニャに壊滅して貰える目が出る。
情報を知らなかったらどうしようも無い。だけども今こうしてメーニャの耳に入ったのだ。
メーニャが今後に魔族の持つ衝動を解消するのにブレッツ商会を利用するかもしれない。
中々に策士であるミーチェは。僕はコレに感心する。
だがしかし、本人の心の内はこれ正しく「命がけ」と覚悟を決めている事なんだろう。
そのミーチェの瞳からは僕らへの信頼など一切入っていない。
強く睨む様な、死を待つかの様な、そんな目で僕を見つめているのだ。
(いきなり信用なんて出来る訳も無いよね、魔族と人族の間で。そりゃ自分の命を投げ打つ覚悟が必要だっただろうな、こうして僕と話をするのはさ)
ミーチェの事を慮ればそんな感想が僕の中に浮かんで来る。
とは言え、さて、どうしようかと悩んでしまう。
「さてさて、メーニャ、調べてみてくれるかい?ケルカム商会と、ブレッツ商会の事を。それで、まあ、本当にブレッツ商会が悪ーい奴等だったら、遠慮無くメーニャの采配で自由にやっちゃって良いよ。」
この僕の言葉にメーニャは「畏まりました」と。
ミーチェは驚きで唖然とした顔になっている。
「じゃあ次に、ミーチェを町には送り届けないとしても、身の安全を確保して欲しいと願われたし、まあ、拠点に連れて行ってあげても良いかな。あー、その場合はメーニャに我慢を強いちゃうだろうから却下か。ならこの場に地下室でも作ってそこに入って貰うってどうだろうか?身の安全はそれで一旦の確保って事にならないかな?」
「え?」
「ん?」
ミーチェが不審の目になってしまった。何でそんな目になるのかとちょっとだけ僕は思案した。
そこでハッとする。いきなり地下室作ってそこに入って一時の安全を、などと言われても信じられないのはしょうがないだろう。
「ああそっか。ゴタゴタが落ち着くまで只々に閉じ込めるなんて事したら餓死しちゃうし、食料と水と、後は就寝用のベッドが必要かぁ。どうせなら快適に過ごせる様に色々と作り込みたいよねぇ。うん、そうしよう。楽しくなって来たなあ。」
「・・・え?」
ミーチェが「何言ってんだコイツ?」と言った目になっていたが、僕は全く気にしなかった。




