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三十六話

 未だに僕らの事を怯えた目で見て震え続けている女性。


 そんな事を無視して僕らは会話を続ける。


「ねえ、メーニャ?それって、その内に誰かにバレて問題が大きくなるよね?それこそ、その、処分、した奴等ってどの様に「お片付け」してるのかな?証拠が残っていればバレるだろうし?証拠が無いなら無いで、消えた奴等の事を気にする者たちが現れるよね?」


 当然にメーニャは証拠など残しはしないだろうから、その襲って来た奴等の事は完全に消滅させている事だろう。


 けれどもだ。その行為を目撃した者がいなかったとしても、消された奴等のその姿が何日も見かけられ無くなればその内にソレを不審に思って調べる者たちが出て来るはずだ。


 それこそ、治安維持やら警邏を仕事にしている者たちが調べたり。


 或いは、その消された者たちが所属していただろう組織の者たちが調べたりと。


 時間が経てば経つ程にメーニャのやった事は自然と明るみに出る事となるはずだ。時間の問題と言うヤツで。


「はい、その通りで御座います。ですが、その際には別に相手にしなければ良いだけの事だと判断致しました。」


「えぇ・・・物凄く軽い対処・・・まあ僕が言えた義理じゃないけども。」


 勇者から逃げて生き延びると言う目的がある僕だって、目の前に勇者が現れそうになったら相手にしないで逃げる気マンマンなのでメーニャの事をとやかく言える権利が無い。


「調査などを始めたそう言った者たちが人族の中の、いわゆる犯罪組織などであれば寧ろ、遠慮無く殲滅してしまっても構わないと考えております。その様な組織が消える事は町にとっても、人族にとっても喜ばしい事でしょう。もちろん、正体がバレない様に配慮をしますが、バレても犯罪者を殺すのであれば人族からの恨みや報復などをそれ程は考慮しなくても良く、わたくしもその時には遠慮せずに力を振るってこの衝動を解消できるので寧ろその様な展開になって欲しいと思っております。」


「考えてる事がえげつないよ・・・いや、でも、うん、メーニャってそういう所あるよね、知ってた。」


 妙に納得してしまった僕はここで話が一段落付いたなと思ってまだまだマトモに会話が出来そうにも無い女性の方に目を向けた。


「ああ、そう言えば僕には別に殺人衝動とか起き無いねぇ。コレは例外って事なのかな?」


 僕は「魔王」だから、そこは当然に「魔族の王」と言う意味だと思っている。


 魔族は人を見るとどうにも「殺したい」と言った衝動を発生させるのが性質らしいのだ。


 なので僕も魔族だと解釈していたからそう言った衝動が湧き上がって来るのかと思っていたのだけれども。


「うーん?サッパリそう言った事も無いねぇ。メーニャはコレに何か心当たりある?」


「いえ、わたくしも分かりません。見当も付きません。」


 まだまだ背を向けて女性の方を見ない様にしているメーニャからも何も分からないと言われた。


 取り合えず答えの出なさそうな問題だったので僕は話題を切り替える事に。


「ああ、ソレはソレでまあいいや。で、そろそろ落ち着いて来たかなぁ?貴方は、お名前、何て言うのかな?教えてくれると会話し易いんだけども・・・あ、そう言えばそうだ。何で今まで気にもしなかったんだろう?メーニャ、僕って名前、何て言うのか知ってる?」


 そう、僕は今まで「魔王」とだけしか呼ばれた事が無い。


 それで不便が無かったし、これまで名前の事など気にもしなかった、と言うか、気にする必要も無かったので気づけなかったと言えば良いのか。


 無理に必要が無かったのですっかりと忘れていたと言っても良い。


「先ずはこちらから名乗らないと失礼ってモノだよね。でも、僕、自身の名前、知らんのだけども。」


 間の抜けた話だ。コレには自分で自分に困ったものだと感想を持ってしまった。


 けれども目の前の女性は「一体何の話なのか?」と言った感じで恐怖がまだまだ大きい様で。


 冷静になれずに頭の回転が鈍い状態から抜け出せないのか困惑の表情をしていた。

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