三十二話
さて、僕がこの馬鹿デカい迷路を作ってその最奥に引き籠って早くも一か月は経過した。
その間に僕はメーニャから色々な事を教わったり、魔法の練習などをしていた。
何も無い殺風景な最奥地下室では寂し過ぎるので棚を形成したり、ベッドや椅子、テーブルなどを作ってみたりもした。
部屋の明かりは魔法で作り出した光で照らしたりもして視界の確保をしている。
魔法での暗視を常態化して日々を過ごしていても良かったのだが、以前にソレで失敗があったので却下となっている。
家具等だけでは物足り無かったので壁面や柱と言ったモノへと装飾を施したりもした。魔法の練習と言った名目でササッと。
十階層も作った広大な迷路にも後々で思いついた仕掛けなどを追加で作ってみたり。
或いは謎解き等を仕込んでおいて余計に難易度を上げてみたり。もちろんこれも魔法の練習代わりに。
暇な時間を潰す為に結構様々な事をしていたりした。
メーニャは時折この迷路から出て外の人族の町へと変装をして入り込んで情報を得て来たり。
僕へのお土産、そして勉強の為として魔道具と呼ばれる特殊なモノを買って来てくれたりしていた。
ついでと言った感じで盤上遊戯も買って来てくれて相手をしてくれたりもしている。
この様にメーニャに全てをお世話して貰っている事に罪悪感を感じない事も無いのだが、こればかりはどうしようもない。
僕自身が動き回るよりも余程良い。僕が外に偶々気分転換に出たとして、そこで致命的な失敗や、死につながるトラブルなどが起きないとも限らないのだ。
この迷路外で活動するのは僕では目立ち過ぎる。
ソモソモに、どうにも僕はメーニャから幾ら教わっても変装と言うか、幻術と言うか、見た目を変える魔法が何故か出来ない。
どうして出来ないのかの原因も特定できていない。
その代わりと言ったら変だし、可笑しいと思うのだが、透明化や消音等の魔法は使えている。
やはり見た目を変えられる魔法はあった方が良いと思うのだが、どうしても幾らメーニャから教わってもコレだけが習得できていない。
であればメーニャに最初から全てを託してしまった方が上手く行くと言うものだ。
「魔王様、どうやら勇者はまだ準備段階と言った様子で動き出してはいない様です。国にその行動を非常に細かく管理されていて未だに訓練を続けているのだとか。まあこの情報は勇者の居ると見られる王国からかなり離れた場所の町での噂でしかありませんのでその詳細は分かりません。得られる情報の時間差も考えればそもそもに確度が足り無さ過ぎますね。信用性は皆無と言っても宜しいでしょう。とは言え、無いよりかはマシと思いこうして報告はさせて頂いておりますが。」
そうなのだ。メーニャが外に出てアレコレと仕入れて来てくれているとは言えだ。
勇者が居ると見られている王国?を直接には見に行けないのである。
物理的な距離としても、その警戒性や時間の問題的にも。
この地下大迷路はそもそもに、存在している場所がふざけていると言わざるを得ない所にある。
そんな場所から人の居る町を探す所から難航していたのだ。
最初はメーニャが迷路から出て探索をした時には三日帰ってこなかった。
それ程に遠い場所まで町を探して飛び回ったと言うくらいである。
以降はメーニャも位置を把握したおかげで一日で戻って来る様にはなったけれども。
そこまで連日に町に用事がある訳でも無いので頻繁にメーニャも出て行ったりはしない。
そんな見つけた町からより一層に遠い所に在るのがその勇者の居ると見られる王国の首都であるのだ。
どうやらしっかりと「魔王の復活」に合わせてその国でも「勇者の顕現」が発生した様で。
「コレは本当に外に出ない方が良いって事だね。何処でどんな風に勇者とバッタリ、何て事になるか分かった物じゃ無い。ああ、そうなると僕はずっとここに閉じ籠って居るしかない訳だ。暇との戦い・・・ウン、一体僕は何と戦っているんだろうか?」




