二十九話
その部屋はアッサリとしたものだ。
正方形と言えば良いのか、その中央に巨大な球体が浮かんでいた。
「で、どうすれば良いんだろう?頭の中にやり方が浮かんで来るって事だったよね?あの浮いてる真っ青な球に触れば良いのかな?」
「恐らくはそうであるかと。しかし魔王様、罠である可能性も否定はできませんので危険回避の為にもわたくしが接触を図りますゆえ、魔王様はお下がりを。何が起こるか分かりません。」
この部屋への入り口になる「渦」に入る時もそう言って先にメーニャが先行して入って行った。
その後で僕が様子を見てから踏み込んでいる。
今回のこのダンジョンを支配すると言うのも、どの様な罠が仕組まれているかは分からない。
あのボス、双頭の怪鳥にはどうにも仕込みがされていて、魔族から逃走してまともに戦闘をしない感じだったのでここでも警戒は必要だ。
と言う事でメーニャが球に触れてみる事に。
しかしここでそんな警戒を嘲笑うかの様に事はアッサリと終わる。
「・・・魔王様、出口を直ぐに作成致しますので少々お待ちを。」
「え?あそう?別に何とも無さそうだし、方法は合ってたんだね。じゃあ今はメーニャがこのダンジョンを支配出来ているって事だね。やっと出られるのかぁ。・・・いや、外に出たとしても安心してる場合じゃないんだった。逃避行の真っ最中だったよ。」
このダンジョンに入ってからかなりの時間が経過していて忘れかけていた。ソレを思い出す。
結局はここを隠し拠点にするつもりは無かったし、ここから出れば広大な森の中へ再び戻るだけ。
その後の事など全く何も考えちゃいなかった。
「どうしよう?」
「魔王様の御心のままに。」
そう言われても具体的なこの先の予定とか作戦など僕の頭の中には無い。ちょっと困ったなぁと思ってしまった。
このダンジョンに入ったのも行き当たりばったりだ。そもそもに僕の頭の中にはこの世界の知識や常識などは一切無い。
僕と言う「魔王の体の中」の存在は、この世界ではそれこそ異物だと何となく思うのだ。
そもそもに僕自身も僕の事を全く理解出来ちゃいない。
この先でどの様に行動すれば生き残れるのか?そこにしか興味が無い程だ。
メーニャから説明を受けただけではあるが、どうやら魔王と言うのは大幅に不利で、毎回やられていたらしいし。
そんな話を聞かされては勇者にみすみすと殺されてやる気は僕には一切無い。
逃げ切る、その点だけを目指してこうして僕は行動を起こしている。
これまでの「魔王」の言動がどうだったのかなどは一切関係無い。
僕は僕が生き残るためだけに勝手にやらせて貰う覚悟だ。
そう思っていれば僕の目の前にこのダンジョンに入った時のあの扉が出現した。
どうやらメーニャが完全にこのダンジョンを制御できる様になったらしい。
「では、参りましょう。」
「あれ?ここのダンジョンの支配って放っておいても良いの?」
折角支配をしたのだからもうちょっとメーニャの采配でこのダンジョンを改造しても良いと思うのだ。
なのでその為に多少は時間を取っても良かったのだけれども。
「その点につきましてはもう大丈夫です。少々弄っておきました。後は自動にしておいて支配権は放棄致しましたのでこの先もわたくしは魔王様と共にまいります。」
「何だか分からんけど、まだまだメーニャには助けて貰いたいし、有難いよ。じゃあ出ようか。」
こうして僕らはダンジョンを脱出した。




