二十八話
双頭の巨大怪鳥はずっとこちらの様子を窺いつつもメーニャからの牽制で放たれる魔法を避けて逃げの姿勢でいた。
しかし少しでもこちらに隙が出来れば向こうも攻撃を仕掛けて来ている状況だ。
僕のやる気が戻るまでずっとこの様なやりとりが続いていた。
「ああ、メーニャありがとう。やっと調子が戻って来たヨ。何時までもこんな状態に居続ける事自体が無駄だったね。」
僕は気持ちが回復して来たと同時に構えた。魔法を使う準備だ。
腕を前に伸ばし人差し指を怪鳥へと向ける。
この動作に怪鳥の方は警戒をし続けてはいるが、しかし攻撃は仕掛けて来ない。
どうやら僕が魔法を撃って来てもどうとでも避けられる様にと体勢を整えている様子だった。
知恵があり、機動力がある。そんな相手を仕留める為には絶対に避けられない、もしくは逃げられない様な魔法を撃ち込まなくちゃいけない。
遥か上空を優雅に飛行しているそんな怪鳥を狙って放つのは広範囲に高威力を及ぼす魔法でなければならない。
「このボス(仮)はどうやらメーニャの魔法に慣れて僕の事も同じく舐めている様だよ。それじゃあ、遠慮無くやってしまおうじゃないか。」
僕が怪鳥に向ける人差し指の先に魔力が収束していく。
逃げられたりしない様に一気に魔法を放つ為にその魔力を強く意識して圧縮して行く。
ソレを解放した際の威力と速度を上げる為だ。
その圧縮している魔力は段々と渦を巻き高速回転を開始している。
「メーニャ、細かい所の制御の補助などを頼んでも良いかな?」
「微力ながらお手伝いいたします。」
その後に僕が放ったのは風の爆弾。
爆発後に圧縮された魔力が解放と同時に荒れ狂う風へと変化するものだ。
その範囲は広大。油断していた怪鳥がコレにアッサリと巻き込まれて錐もみ状態になり、その際に気絶でもしたのか墜落となった。
「目の前にまで飛んで行くまでの早さはそこまでじゃ無かったからなぁ。向こうもソレで余計に油断でもしたんだろうね。様子見でもしようとしたのか、避けるまでも無いとか思ったのか、全然動いて無かったなぁ。」
僕の放ったその危険な魔法を前にしてそもそもに怪鳥の動きが鈍かった。
そしてどれ程に油断していたと言うのか?その目の前で魔法は爆発、怪鳥はそれにモロに直撃していた。
アホだったのだろうか?と言える位にその姿は僕には間抜けに見えた。
で、墜落、地面に衝突、即死。
これ程にアッサリと終わってしまった事に思わず僕は溜息が漏れた。
「・・・ああ、どうやらちゃんとボスだったんだな。コレがダンジョンの核に移動する「扉」で良いのかな?」
怪鳥の墜落現場に行けばそこには空間を捻じ曲げる様に奇妙な「渦」が存在していた。
「はい、ここへと入ればこのダンジョンからの脱出をしたも同然であると思われます。」
「ああ、そう言えばメーニャはダンジョンの攻略はしてなかったっけ。知識だけはあったんだよね。そりゃ実物も初めて目にするか。」
そんな会話をして僕は再びその「扉」へと視線を戻して言葉を続けた。
「ちょっと躊躇いもあるけど、さっさと入ってしまおうか。時間経過で消えない保証も無いしね。」
何もかもが初めてである。僕にも、メーニャにも。
と言う訳で、ここで考えたり躊躇したりする時間が勿体無い。
この目の前の空間の歪みがもしも何らかの罠だったりしても、ソレを看破できる材料も経験も方法も、今の僕らには持ち合わせが無い。
そもそもに何時までも僕はここに留まって居たくは無かった。




