二十二話
空を飛ぶなんて簡単な事では無い。当たり前だ。
メーニャがしてくれた説明をザックリと解釈するならば。
重力魔法で自身を先ず無重力状態にするらしい。
そこから再び重力魔法を自分を引っ張る様な感じで操作すると言う事だったのだが。
「加減が難しい!酔う!メーニャ!だけ先行してヤツを追いかけていて!後から追い付くから!・・・うぉん!?・・・ほぎゃ!?」
「魔王様をその様な状態で一人にさせる訳にはいきませんので。どうかご勘弁を。・・・あ、見失いました。」
メーニャが索敵魔法の外にボス(仮)が出て行ってしまった事を告げる。
そうなったらもう焦っても仕方が無いので僕はゆっくりと魔法の制御を落として地上に降りた。
「ぐふゥ・・・ヤバいよ、コレ。本当に自由自在に飛べる様になれるかなぁ・・・」
「これまで通りに練習を重ねて行けば、魔王様なら本日中には習得できますかと。」
メーニャがそう言って励ましの言葉を掛けてくれるけれども、僕はコレに頷けない。
「・・・おえぇ・・・ちょっと頭がくらくらする。マトモになればこの酔いも感じなくなる?」
「はい、安定すれば先程の様になる事は無くなりますので。」
僕はまるで空気の抜ける風船の様に滅茶苦茶にそこら中を飛んでいたのだ。
あっちにこっちにと急激にランダムでギュインギュインと急カーブを描きながら。
そんなので良くもまあ地面へと激突しなかったものだと自分を褒めたい気分だ。
城を出た後に直ぐに空を飛んで逃げる、などと言った選択肢を取らなくて正解だったと言う事である。
もしその選択肢を取っていたならどうなっていた事か。想像すると恐ろしい。
制御をできずにそのまま城にでも突っ込んでいれば自身がどうなっていたか。そこに思いを馳せるとゾッとする。
「魔王様、ヤツが逃げて行った方向は大体判っておりますので、ここでしっかりと飛行魔法を習得してから追跡をするのは如何でしょうか?」
「そうだねぇ。それしか方法は無さそう。走って追いかけるのは無茶だろうからね。こんなに何も無い草原だったとしても、走るのと空を飛ぶのとでは雲泥の差だよね。そうしようか。・・・あー、でも、もうちょっとだけ休憩させて?」
僕は大の字になって草原に寝転んだ。
何時までもそんな事をしている場合では無いとは思うけれども、連続しての練習はキツ過ぎる。
頭がグワングワンして再び挑戦してみても上手く行かないと確実に言える状態だから。
そうして休んでは再び空を飛び、休んでは空を飛びと続けていれば流石にこの「魔王」と言う体はチートで。
「段々体の方が慣れて来たのか、スムーズに行く様になってる・・・僕の意識も感覚も全然変わったり慣れて来たって感じは無いのに・・・ちょっとコレ、何か不気味だなぁ・・・」
まるで先に体の方が最適化をしている様な、自分の意識とは関係無く制御がされていると言った感じに僕は背中に薄ら寒い物を感じ始める。
そうしてメーニャの補助も入ってようやっとマトモに飛行できる様になった。
体感時間としては大体三時間とちょっと、と言った感じだろうか。
掛かった時間が長いのか、短いのかはサッパリだ。基準が分からない。
けれどもこうして飛べる様になったのであれば、逃げたボス(仮)を追いかける事が出来る訳で。
「では、参りましょう。魔王様はまだ急激な速度上昇などの制御は無理でしょうから、そこはわたくしが調整致します。」
「うん、頼んだよメーニャ。でも、あんまり高速は出さないで貰えると助かるよ。それじゃあ行こう。」




