二十話
風を乱すと言っても、ぐちゃぐちゃにするってイメージでは無い。
僕の目に見えるその巨鳥の様子はどうにも羽をはばたかせて飛んでいると言った様子じゃない。
滑空と言うか、風に乗っている、そんな感じなのだ。
大きな大きな翼を目一杯に広げてこちらへと迫って来ているソレを見て僕は思う。
「上から下に叩き付ける様な、そんな風が良いかな?ああ、ソレに付け加えるんだったら重力も一緒に混ぜたら効果が上がるかなぁ?」
顔の前に僕は手を持って来てアレコレとイメージを膨らませようと手遊びの様な動きをする。
「うん、ちょっとずつ、ちょっとずつ、固まって来た固まって来た・・・良し!今、ここ!」
別に僕がこの鳥の魔物を片づけなくても良いはずだ。
メーニャがやっても良いと思うのだ。
けれども僕も魔法の練習はしなくてはならないだろうし、メーニャも補助をしてくれると言う事なのでこういった機会に慣れて行かなくてはならないだろう。
「・・・うん、風も重力もどっちも目に見えないから地味だなぁ。だけど、威力が・・・ね。ヤバイ。」
鳥魔物は多分、飛行してくるその速度のままに僕らへと正面から急襲するつもりだったのだと思う。
だけどもそこには「壁」がある。僕らの目の前には。
それは僕が魔法で作り出す事に成功した「風の滝」だ。物凄い威力の。
そこに加えて重力の魔法もその中に重なっている。ソレの威力はその範囲に入った存在を地面へと叩き付けるイメージにしてある。
そんな危険な魔法のフィールドに突っ込んだ鳥魔物はまるで直角に急降下?墜落?する。地面とキッスだ。
いや、そんな甘っちょろい表現では済まない。これまた地獄絵図だった。
その鳥魔物は地面と激突して首の骨が折れて即死。
胴体も半ばまでぺしゃんこで即死。
魔石へと変わって次々に消えて行くその光景はさっきの人面牛と同じ。
後続の鳥魔物もその速度が速度だっただけに旋回して回避と言った事も出来ない程のスピードが出ていてその僕の作り出した魔法のフィールドに入り込んでしまう。
そうなるともう駄目だ。次々に直滑降で真下にダイブ。鳥魔物がズドドドドと言った感じで地獄への直行。
「自分でやっておいて何だけど、酷い。」
目の前の大体5m程でその光景が続いている。死ぬと魔石に代わってしまうので魔物の死体が山と積み上がる事も無く魔石がジャラジャラと生産され続けて行く、ある種の不思議な景色となっている。
「流石魔王様です。これ程の数をこの様な魔法で全て、それも短時間で殲滅とは恐れ入りました。」
「いや、メーニャが僕の魔法の補助をしてくれてるからじゃないかな?」
「わかくしは今回その様な事をしておりません。全てこれは魔王様が成された事に御座います。」
「・・・えぇ・・・?」
コレに僕は困惑しかない。メーニャが補助をしてくれているものと思っていたのに、ソレが全否定。
「地面から坂道を作った時には、助けてくれてたんだよね?」
「はい、ソレはもう。ですがこの度は魔王様の魔法を発動なされ様としている御姿を観察させて頂き、その必要は無いと判断した次第に御座います。」
「信用が重いなぁ。もし結果が上手く行って無かったら危なかったんじゃないか?」
「ソレは大丈夫で御座います。密かにわたくしめが障壁を張っておいてありましたので。万が一にも魔王様に傷を負わせる様な事が無い様に万全にしておきました。」
「え?」
メーニャからのその言葉を聞いて僕はそっと手を伸ばしてみる。
すると立っている位置から50cmくらい前に目に見え無い硬い何かが存在していた。
「コレが障壁?メーニャが出したって言う?・・・僕が魔法を使わなくてもこのまま鳥を突っ込ませておいても殲滅出来たんじゃない?」
僕が魔法を使わなくたって、メーニャの出したこの見えない壁に衝突事故を起こして鳥魔物は自滅したのでは無かろうか?
「深く考えるのは止めよう。じゃあ魔石を拾い集めて休憩にしよ。」
難しく考えるのが何だか馬鹿らしくなったので僕はこの件は忘れる事にした。




