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二話

「・・・一体どうなっている?確かにちゃんと、肉体の復活は完全に為されている!しかし!私の事を魔王様が忘れてしまわれるはずが無い!断じて無い!・・・はッ!?キサマ、何だ?どうしてその様な・・・有り得ん!私には、私には見えるぞ!その魂・・・貴様は一体何者だ!?」


「そんなに興奮されても、僕だって分からないよ。自分で自分の事が分からないんだよ?何にも、だよ?それこそ僕の方こそ貴方に問いたいよ。僕は一体何者なの?僕は誰で、僕じゃないその魔王ってのは何処のどちら様?体が復活だの、忘れるとかだの、で、魂?ソレって何?何が何やらサッパリ解らないんだよ?ソレ、僕の方こそ聞きたいんだけど?」


「ふざけているのか?惚けているのか?・・・好い加減にしろ!」


「えー?何でそんなにも激高してるの?僕はさっきから真面目だよ?・・・はぁ~。もっと冷静に話をして欲しいんだけど?感情ばっかり前面に出されても僕にはその理由がどうしてかも分からないんだよ?あー、そっちのメイドさん?代わりに説明してくれないかな?」


「わ!?わたくしめがで御座いますか!?」


 僕はメイドさんのその驚き様にも動じずに「うん」とだけ返して首を小さく縦に振る。


 だけどもここでまたマードックとやらがお怒り感情を爆発させて叫ぶから話が先に進まなかった。


「貴様!魔王様に何をした!お前の様な者が魔王様であるはずが無い!どの様な汚い手を使って魔王様と瓜二つの偽物を用意したか知らんが、何を企んでいる!一体魔王様の魂に何をしたぁ!?」


「いや、さっきも貴方がちゃんと自分の口で言ってたじゃん。これ、魔王様ってのの身体なんでしょ?ちゃんと。本物でしょ?ソレと、魂?それって何?どう言う事なの?僕だって何でこんな事になってるのか解ら無い、って伝えたよねさっき。もうちょっと生産的な問題解決の為に頭を使おうよ。さっきから感情だけで口を開いてるけど、ソレが長年仕えて来たって者ってのの矜持なの?しかも勝手に汚い手を使ったとか決め付けて来るけどさー、その証拠、何処?そういう迷惑な妄想を押し付けてくるの、止めて貰えませんかね?」


「・・・き!貴様ぁ!」


 僕は確かに自分の事が全く以ってサッパリ分からない。


 だけどもこのマードックの吠え具合に自然とそんな煽り文句が口から出ている。


(多分コレって僕の元々の性格が滲み出て来てるのかなぁ?何も解らないのに「これが僕だ」って何となくしっくりくるし)


「マードック様!お気を確かに!」


 ここに来てそう叫んでメイドさんがピッチャーに入った水を一気にマードックへとぶっかけた。


「え?マジで?めっちゃ思い切った事してるし、メイドさん・・・」


 このメイドさんの突然の大胆な行動に僕はドン引き。いきなりソレは有り得んだろ、と。


 でもコレが功を奏してマードックがピタリと止まる。それこそ微動だにしない事、たっぷり7秒。


「・・・私とした事が、余りの事に取り乱してしまいましたね。すうぅぅぅぅ~・・・はぁぁぁぁぁ~・・・では、聞きましょう、キサマは・・・魔王様の身体の中に居る、貴方は、一体、何、者、です、か?」


 長い長い深呼吸を一度してからマードックは僕へとそんな問いを投げて来るけれども、その中身にはまだ消し切れていない怒りの炎が籠められている。


 だけども僕はコレに素直にもう一度、その答えを口にした。


「だから、僕も自分の事が自分で分かっていないし、どうして今こんな状況、状態になっているのかも、それこそ分からないんだよ。本気で。さっきも言ったよね?何も、解らないから、貴方が教えてくれ、って。」


 この返事をしている間をずっとマードックはこちらを睨み続けていた。そして口を開けば。


「・・・本当に、本当に、魔王様、では、無いのだな。そして、何も知らぬ分からぬと。嘘を言っている訳でも、ましてや謀ろう、惚けようなどとしている訳でも、無い、のか・・・魔王様が実はおふざけで揶揄っている訳でも、無い・・・その様な事を為される魔王様では、無いからな・・・うおぉぉぉぉぉ!魔王様は一体どうなされてしまったのだぁ!魔王様!ああ!魔王様ぁぁぁ!」


 今度はマードック、いきなり発狂。僕、超ドン引き。


 取り合えず僕はその後に黙っている事にした。


 何か僕が続けて言葉を吐いてしまえばこのままマードックが発狂から戻って来ないのではないかと思って。


 彼が現実を受け入れて落ち着くまで待つ事にして、暫しの時間が経った頃。


 ここでメイドさんが躊躇いがちに僕に向けて口を開いた。


「あの、魔王、様?では、無い、のですよね?えー、そのー、マードック様がこの様になられてしまわれましたので、代わりと言っては何で御座いますが、わたくしめが説明をさせて頂きます。」


「あ、そっすか?じゃあスイマセン、宜しくお願いします。」

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