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百二十九話

 メーニャがこの町を完全と言える位に支配をしてしまった。


 そんな日から既にもう九十日は経過している。


 やれ、この町で一、二を争う商会を手中に収めた、やら。


 やれ、この町で一番の鍛冶屋を自由に扱える立場になった、やら。


 やれ、この町で一番腕の立つ魔法使いを下僕にした、やら。


(本当に恐ろしいんだけども。メーニャって、何?完璧超人?本当に魔族?え?魔族って、何?僕は魔王だけど、これって寧ろメーニャが魔王じゃ無い?)


 これまでにそんな報告を受けていた僕の心境と言うのはそんな感じだ。


 そして今はその様な報告も無くなった。そう、無くなったのだ。


 その様な事をする必要が無い状況、状態になったと言う事である。


 それはもうこの町「マブロン」がメーニャの支配地になったと言っても過言じゃ無い訳で。


「魔王様、町の方は既に粗方片付きました。今後の方針はどうなされますか?」


「いや、うん、粗方って言うか、もう完璧にじゃ無い?まあ、そこはイイとして。勇者の動向としては王国からかなり離れたって事を昨日聞いたしねぇ。もうそろそろ動こうか。」


 そう、大分日数が経って勇者の方も本格的にダンジョン攻略の遠征をし始めた。


 このマブロンはかなり王国から遠いとは言え、かなりの規模の大きさだ。


 この町へと出入りする者の多さは半端じゃない。その分だけ情報と言うモノも出入りも激しい。


 勇者の情報などそれこそジャンジャン手に入れられていた。


 それもそうだ。人族にしてみれば魔王と戦う為の勇者の動きが気にならない訳が無い。


 人族にしてみれば勇者は最終兵器、頼みの綱、希望の光である。注目の的。


 ソレと同時に、今ぶつかり合っている魔族との戦争、その最前線の情報も同じ位に僕の耳に届いていた。


「マードックの方も前線を押し上げてるって言う話も聞いたけど。魔族って空飛べるよね?逆に人族の魔法使いは空を飛んでの戦闘が出来る数は少ないって事じゃなかった?」


 空から一方的にバンバンと魔法を放って敵を殲滅、と言った戦法が取れるハズの魔族だ。


 しかし何故かじりじりとしか戦線を押し上げていない、とはどう言う事なのだろうか?と疑問が出てしまうのだが。


 一気に押し上げてしまえないのか?と僕には思えてしまった。


 その答えをメーニャが教えてくれる。


「人族と比べると圧倒的に魔族の数の方が少ないので慎重に戦闘を行っていると思われます。かなり緻密な計算の元で戦線を押し上げて行かねば、恐らくは数の影響で人族に裏に回られて挟み撃ちなどと言った事も狙われるでしょう。戦闘力が圧倒的に人族と比べて高い魔族であっても、一人や二人で保てる戦場と言うのは限られてしまいますし。兄には兄の戦略、戦術があっての事だと思います。」


「うーん、そう言うモノか。確かに僕は戦争を知らないしなぁ。素人が考える事はたかが知れてるって事だね。マードックは僕なんかよりもよっぽど頭が良いハズだし?何かしらの考えがあるのは当たり前か。最初の方に聞いた話では一気に魔族側が押せ押せだ、って事を聞いてたからその辺の事もあるのかなぁ。難しいね。」


 戦況なんて全く分かっていない僕である。引き籠り続けて何も知らないヤツが、現地に一度でも行った事すら無いのに何を馬鹿な事を考えていると言うのか。


 戦争は現場で起きているのだ。この部屋で起きている訳じゃ無い。


 こんな能無しな僕がマードックの思い描く戦場を理解できる訳が無い。


 他の所の事など気にしないで今の僕に出来る事をすればいいのだ。


「余計な事は気にするだけ無駄だね。僕は魔族の事も人族の事もどうだって良いって口にしてるんだから以前に。なら、明日にでも王国首都へと向かおうか。」


 長かった様な短かったようなこの町での滞在がこうして終了した。

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