百十七話
ラジムとの顔合わせから七日が経つ。しかし、平和だ。
コチラから一切仕掛ける事をしなくなっても町に蔓延る悪の組織は互いに小競り合いを続けていた。
と言うか、もう止め所、落し所が無くなって行きつく所まで行かないと終われない、と言った感じになっている。
四つもあるモノだから、互いが互いに削りあいと言った形になって絡み合い過ぎているのだ。
何処か一つが「もう止めよう」と言ったとしても、残り三つの内一つが「ここで止めたらお前らばかりが有利だ」と突っぱねれば話は纏まらない。
そこで不利になってしまうと主張する組織が他へと「ケジメを付けろ」などと言って条件を持ち込めばソレに反対する所も現れるはずだ。
そうなれば「舐められたら負け」と面子を気にする組織は当然にどんな条件を言われても受け入れず、話し合いは強制的にそこで終了。また争い合う明日が不可避になる訳で。
と言うか、これまでに既に五度、その様な会合が行われているけれども一切の合意には至っていないと言う報告をメーニャから聞いている。
「これ、どうしようも無いね?メーニャは何か良い案ある?」
「魔王様が何を以ってして「良い」とお考えなのかをお伺いしても宜しいでしょうか?」
「あぁ~、そうだよねぇ。コイツらの処分をどうするかを考えるべきであって、良い感じに争いを止めさせる案が欲しい訳じゃ無いんだったね。」
メーニャの当初の見込みとしては一年くらいは持たせたいと言う事であったんだった。
しかしどうにも予想していた以上に事が上手く、そして順調に行き過ぎて今この様な状況になっているのだ。
メーニャもコレには少々の計算外と言った感じだけれども。
最終的に「全て潰す」と言った事は変わっていないので別にこのままで良いと言えば、良いのだ。
別に予定外とか、計画外と言った事になっていたりする訳じゃ無いのが何とも言えない。
だけども、ここで官憲の方の動きが気になり始めていた。
「治安維持にどうやら思い切って舵を切ったんだよね、衛兵やら官憲の方は。守備隊を大幅に動員して一気に叩くって?」
「はい、ここまで大胆に決断を下す事も想定内ではありましたが、予想していたよりも動きがかなり早いです。」
当然の事だと思うが、きっとこの情報は組織の方も掴んでいるはずだ。
だけどもソレを分かっていても手を取り合って四つで協力して官憲の介入を跳ね返そうと言った所にまで至っていないのである。
「まあどこの組織も対策やら罠なんかを考えて独自にこの窮地を脱そうとはしてるとは思うんだけどね。でも、ソレが突破されて組織が潰れるとなるとさ?ここまで来ておいて官憲に横から手柄を掻っ攫われるみたいになるのは、ちょっとだけ頂け無いなぁ。」
とは言ってみるけども、別にどうでも良いって言えば、どうでも良かったその事は。
言うなれば、事が終わった時に官憲らにデカい顔をされるのが嫌なだけで。
組織が官憲の手で処理される事に対しては別に良いのだ。
「この町に蔓延る悪を消滅させるのに最初から最後まで政府の力でやり遂げました、何て宣伝をされると、ちょっとモヤッとする所じゃ無いよね。」
この僕の心情にメーニャが案を出してくれた。
「ならばこうしたらどうでしょうか?」
僕はその説明を聞いて良く吟味してから許可を出した。