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十一話

「魔王様、少々宜しいでしょうか?」


「ん?今更何だい?何か僕、知らぬ間にヤバい事しちゃってる?」


「溢れ出ている魔力を抑えて体外に出さぬ訓練をした方が良いかと存じます。」


「・・・え?何だって?」


 僕はもう既に部屋から出てしまっているが、しかしこの建物、デカい、広い。そんな場所を僕は歩いているのだ。


 呑気に歩いて外へと出ようとしている時点で危機感の欠片も無いと言われてしまえばそうなのだが。


 走って慌ててドタバタしてしまうとソレはソレで余計に目立つ事になるとメーニャに言われたので、こうして堂々と、ゆっっくりとここからの脱出を図っている。


 自然に、そして大胆に、そう見られる様に仕向けている。誰かに見られても不自然では無い様にとの事である。


 もう魔王の復活はマードックによって広められているはずなので、もしも他の魔族がここに居て、僕らの事を視界に入れたとしてもオカシイと思われない様にする為だ。


「うーん?どんな感覚かを言葉で説明して貰っても良い?」


「はい、では僭越ながら御説明させて頂きます。」


 メーニャは物凄く落ち着いている。僕は内心物凄くドキドキしているのだが。


(潜って来た修羅場の数が違うんだろうなぁ。僕はもう緊張感で表情筋がカチコチだよ)


 どうやら垂れ流しになっている僕の魔力。どうやらずっとその状態だったらしい。


 まだまだそう言った事を分かっちゃいない僕にこうしてメーニャが付いて来てくれているのは非常に助かる。


 さてメーニャから教えられた方法と言うのは、特に何か特別な事をする訳じゃ無かった。


 イメージとしては体内の魔力が渦を巻いてお腹の中心に集めると言った具合。


 どうやら僕は魔力を操れる様になったからと言っても、ソレを効率的に運用出来ていた訳では無いのだ。


「玉座の間に魔王様が居ないと分かれば、兄は絶対に捜索をして来る事でしょう。その時には魔王様の魔力の残滓を追って兄が自ら追跡してくるかと。ソレを撒くには魔王様の魔力を漏らさぬ様にせねばなりません。」


「うんうん、分かったよ。何とかしてみる。マードックとまた会う事になっちゃうと絶対にキレ散らかすもんね、あの分じゃ。」


 僕は急いで自身の身体の内へと意識を向けて魔力の操作をする。


 メーニャから教わった通りのイメージをそのまま運用する。


 身体の外に体内の魔力が出て行かない様にするのだから全身へと意識を集中しなくちゃいけない。


「結構難しいなぁ。意識し続けて無いと直ぐに渦が止まっちゃいそうになる。これって慣れて行けば自然と意識せずに持続するものなの?」


 魔法覚えたての初心者な僕にはかなりの難易度だと思われたけれども。


「魔王様ならば直ぐにでも習得できるかと。」


 メーニャはそんな事を言うだけだった。


 ===  ===   ===


 メーニャの案内で僕はとうとうこの建物から外へ出る事が出来た。


「うん、めっちゃお城。しかも何この禍々しさ。やばいよネ。こんな所だったんだなぁ。」


 目の前に広がる森も何だかおどろおどろしい雰囲気を頻繁に出している様に見えている僕の目には。


 だがその森以上のヤバさを感じるのが、今さっきまで僕が居たこの城だ。


「あー、うん、でも、もうここには戻って来る気は無いし、気にしなくても良いよネ。じゃあ早速逃げよう・・・と、言いたい所なんだけども。ねえ、どっちに行けば良いと思う?町はどっち?国境とかは?」


「魔王様の御心の赴くままで宜しいかと。」


「そう言う所は僕に丸投げだよねぇ。うん、まあ、逃げるって僕が決めたんだからソレは当たり前で、そう何だけども。」


 こういう時は目的地が決まっていた方がヤル気も逃げる気も上がると言うモノ。


 ソレに僕はこの世界を見て回ると、逃亡をしつつも楽しむ事を決めたのだ。


 だけども直ぐにでも前へと進みたい気持ちを抑えて僕は意地の悪い事を考える。


「あーでも、ここはちょっと馬鹿真面目に考えるべき所じゃないよね。絶対にマードックにはいずれ僕が逃げ出した事はバレるのだろうし?」


 少しでもマードックから逃げ続ける様にする為にも、ここの初手で何かしらの策を弄しておきたい。


「魔王様は既に魔力を抑える事は出来ておりますので、どの方角へと向かっても追跡は困難だと思われますが?」


「いやいや、それだけだとちょっとねぇ?まあ、必死になって意識したおかげで魔力を体外に出ない様にするのは体得出来たけどさ。」


 この城から出て来るまでの短時間、実質五分程で僕はその魔力操作を習得できてしまっていた。


 魔王の身体はこんなにもズルいのだからこの程度の事は簡単に熟せてしまうのだろうけども。


 次々短時間であれもこれもとできる様になってしまっている「僕」としてはその力を把握するのに苦労しているのだった。

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