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一話

「もうこの様な生は沢山だ。この先を後どれだけ、幾度この様な変わらぬ、変えられぬ結末を迎えねばならぬのか・・・この様な仕打は耐えられぬ。虚無だ。もう我慢も限界だ。何万回繰り返せば気が済むのだろう?どれだけ繰り返せば飽きるのか?我が魂はこれ以上無い程に擦り減った。もう良いだろう、消滅する事にこれ程の安らぎを感じる。あぁ・・・すまぬな、何処の何とも分からぬ、その魂よ。代わりにあの体の中へとお前を入れる我を許せとは言わん。恨んでくれ。憎んでくれ。ふむ、もっともっと言わなくてはならぬ、伝えなくてはらなぬ事があるのに、制約に阻まれて出来ぬ。最後の力を振り絞って為せるのは、自身の魂の消滅までだ。こうしてせめてとお前に語り掛ける事が出来ているのはその力の残滓に過ぎん。ソレも我の負の感情を込めた言葉を一方的に聞かせる事しか出来ぬとは。自分勝手で最後まで締まらぬ。そんな我を哀れんでくれ、笑ってくれ。・・・あぁ、時が来た様だ。我の魂は完全に消える。もう二度と、相まみえる事は無い。さらばだ。お前の今後の生に僅かでも幸運がある事を祈る。」


 ===  ===  ===


「・・・んぁ?ここ、何処?」


「お目覚めになられましたか魔王様。御復活の件を魔族全体へと知らせろ。早急にだ。」


 僕はそんな言葉を目の前の「これぞ如何にも!」と言いたくなる存在から告げられていた。


(・・・まだ頭の中がボーっとしてて全然状況が把握でき無いんですけど・・・)


 どうにも僕が目を覚ました事を知らせる為だろうその召使の様な服を着た、またしても「これぞ如何にも!」と言った人物が受けた命令を実行する為に部屋から出て行った。


(と言うか、何?ここ?全体的にぱっと見、あれか?お城のどっかの一室?)


「魔王様はどうやらお目覚めの直ぐで意識が朦朧とされていらっしゃる様で御座いますね。誰か、冷えた水を。」


 僕の目の前のその人物がそう言うと部屋にはやはり「これぞ如何にも!」と言った者がメイド服を着て入って来た。


 その手にはお盆、上に乗っているのはキンキンに冷えているであろう水が入ったピッチャーにコップ。


「どうぞ、お魔王様。」


 コチラに近づいて来てコップを恭しく捧げ持つそのメイドさん。


(・・・うん?マオウサマ?それって、僕の事?)


 差し出されたコップを受け取って僕はソレをグイッと飲み干した。流れに乗る様に。


 するとその冷たさにやっと僕は自分の置かれている状況を少しずつ認識して行く。


「・・・は?何?ここ?あれ?そもそも、僕は誰?え?何?まお・・・?さっきからそれ、僕、の事を指して言ってる、んだよね?」


「どうなされましたか魔王様?何処か調子が悪いのですか?復活為された直後ですので無理は為さらずに。何か御座いましたら躊躇わずに直ぐに私に何でも申し付けてくださいませ。」


 調子が悪いなどでは無い。寧ろ水を飲んでスッキリした頭は自身の身体が万全である事をしっかりと理解している。


「いや、何処も悪くは無いんだけど、寧ろ頭の中が混乱してて・・・って、そもそも貴方は誰?」


「は?・・・ま、魔王様?」


 このやり取りに部屋の中がシンと静まった。こんな広い空間に僕と、その目の前の人物と、メイドさんしか居ない状況だ。


「ど、どうなさってしまわれたのですか?私は長年、魔王様に仕えておりますマードックではありませんか。お忘れになられてしまわれたのですか?そ、それこそ悪い冗談はお止しになられてください・・・いえ、どう言う事でしょうか?その様な、悪い冗談を、ま、魔王様が口になされるはずがありません。ほ、本当に私を誰なのか分からない、のですか?」


 メイドさんもポカンとした顔でこの流れを見ていた。


 どうやら僕は何かやらかしているらしいけれども、どうしたってその「やらかし」に心当たりなんて無い。


「そもそもの話、ここは何処?僕は誰?貴方は何者で、そっちのメイドさんも、さっきの執事の人も?記憶に無いし、初対面なんだけど・・・」


 物凄く驚いた顔で、ソレでいて非常に険しい表情になったその人物を見て僕は頭の中で「ああ、これが絶句した」って事なのだと、そんな呑気な感想を思い浮かべていた。

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