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第三話 妄想と筋肉

マックスマ・グワイアは故郷ホーミーバレーの窮地を救うため変態ガンマンジルと手を組むと、さらに7人の戦士を集めるため、今日は旧友のもとを訪ねていた。

ジルの集める7人の条件は【とにかく癖のある人間】、平たく言えば変態であること、マックスには思い当たるやつがいた、前に一緒に賞金稼ぎを追いかけたことがあるガンマンだ。やつならばきっとジルの眼鏡にかなうだろう、そいつは一人で高台の山小屋に住んでいた。マックスは小屋のドアを軽くノックした


コンコンコン!


「おい、俺だ、マックスだ、開けてくれ」


小屋の中には人の気配があった。しかし返事はない。マックスはもう一度声をかける


「俺だ、マックス・マグワイアだ、開けてくれないか?」


しばらくしてカンヌキを外す音がすると、扉があいた。中から出てきたのは黒いハットに黒いコートを羽織った長身の男


「なんだ、あんたっスか、俺はまたてっきり隣に越してきた人妻が引越しのあいさつに来て、世間話をしたら旦那が単身赴任らしくて欲求不満だからムラムラしてるって話になるんじゃないかと思ってドキドキしちゃいましたよ」


彼の名は、ジョブズ・アレハンド、とにかく想像力が豊かであることないこと想像してはひとりで悶々とする日々を送っていた。愛銃はスペンサーライフル、いわゆる狙撃銃で離れたところから相手を正確に撃ちぬく事に長けてる


「相変わらずの妄想癖だな」

「そうかなぁ?さすがにもう腹違いの妹が俺を探しに来て、ここに二人で住むことになって、だんだん仲良くなってこれは家族愛なのかどうなのか疑問を抱くようになって、結局その妹がここを出て行ってしまうんじゃないか、って心配はもうしなくなくなりましたよ」

「……そ、そうか」


マックスはジョブズと会うのが久しぶりなこともあってか、ちょっと引いていた、しかし裏を返せばそれだけジョブズの変態度が高いという事、きっとジルも納得してくれるだろう。ドギマギしながらそんな事を考えているとジョブズの方からたずねてきた


「で、用件はなんですか?」

「ああ、実はな、攻めてるやつを集めてるんだ。お前のライフルの腕を見込んで頼みに来た」

「攻めてる?」

「そうだ、そしてタートルヘッドを撃つ」

「タートルヘッドを?」

「そのためには戦士が7人必要なんだ」

「7人ってそんな、そんなの無理ですよ、だって俺人見知りが激しくてあんまり人としゃべれないから長距離射撃用のライフル使ってんのに、そんなことしてうまくいったら俺は英雄扱いされて、みんなが祝杯を上げるときには人見知りして一緒には居れなくて、盛り上がっているところを避けるように一人で外で飲んでたら、おとなしそうな女の子が、自分もお酒弱いんですとか言って二人きりになって、好きになってそれで……わかりましたやります」

「ありがとう」


妄想スナイパー、ジョブズ・アレハンド、参戦決定!









ジルと一平は保安官コックスの案内で地下の留置所に来ていた。果たしてこんなところに腕利きのガンマンがいるのだろうか?一平はそれとなくコックスにたずねた


「ここは?」

「悪人どもを閉じ込めておく場所だ、どいつもこいつも一筋縄じゃ行かねえ様なくせ者がそろってる」


なるほど言われてみれば確かにそうだ、それならば戦士を集めるには手っ取り早い、しかし悪人をメンバーに加えて大丈夫なのだろうか?そんなことを考えているうちにコックスの足が止まる、凄腕の悪人とは一体どんな人物なのかと一平の緊張感は高まった、コックスは少しだけ中を覗くとすぐに声をかける


「女盗賊、ペネロペ・ロペスだな」


ペネロペ・ロペス、盗賊集団ペニー一家の女ボスで通称ペニーママ、一平とジルは彼女と面識があった。ペニー一家によるカウパータウン襲撃の際、ジルとペニーママは対峙していたのだ


名前を呼ばれても眠ったままのペネロペ・ロペスを見てコックスが牢屋の鉄格子をガンと蹴る。


「おい、起きろ」

「なんだい、なんだい、人がせっかくいい気分で寝てたってのに」

「女盗賊ペネロペロペス、間違いないな?」

「けっ」


ペネロペ・ロペスの態度にコックスは語気を強めた


「女盗賊ペネロペロペス、盗賊集団ペニー一家の女ボス、ジル・リキッドに撃たれて捕まり、投獄中、間違いないな?」

「ああそうだよ!ペネロペロペスはアタシだよ!」


ペニーが怪訝な顔でそう言うと保安官コックスは用件を告げた


「面会だ」

「面会?」


コックスが手招きするとジルが鉄格子の中からでも見える場所に近づいてくる


「久しぶりだな、ペニーの」


面会という言葉に不思議そうな顔をしていたペニーだったが、ジルの顔を見るなり急に態度を変え、まるで値踏みをするような視線で鉄格子の外に立つ男を見る


「ふん、なんだジルじゃないか、まさか面会ってこいつかい?」


コックスが「そうだ」とうなづく、ペニーは再びジルに視線を戻しながら自分のあごを軽くさすった


「で?」

「聞きたいことがある。」

「ほう、面白いねぇ、伝説のガンマン、ジルリキッド様ともあろうお方が、このアタシに何を聞きたいってんだ」

「お前はノーマルか?それともアブノーマルか?」

「なんだいそりゃ?禅問答かい?」


ペニーは頭のキレる人物だ、質問の真意を二手も三手も読んでくる、下手な嘘は通用しない。しかしジルも謎かけをする気は毛頭無かった。


「タートルヘッドを撃つ、攻めてるやつが必要だ」


ジルがタートルヘッドの名を出したところであからさまにペニーのやる気が無くなった


「タートルヘッド?よぼよぼのジジィじゃないか、興味ないね、あたしは若い男じゃなきゃお断りだよ」


タートルヘッドの恐ろしさは有名だ、関わればまず命は無い、ジジイには興味が無いとはウィットを効かせたうまい逃げかただった。それを知ってか知らずか保安官コックスが単純な質問をする


「若い男?顔か?」

「顔?馬鹿言っちゃ困るね、顔なんかどうでもいい、筋肉だよ」


ペニーはうっかり趣味を返答してしまったがジルがそれを聞き逃すはずが無い


「筋肉?」

「なんか文句でもあるのかい?」

「いや、悪くない」

「アンタに解るはずが無い」

「いや、解る」


お互い視線を外さないジルとペニー、そこでジルが先にしかけた


「タートルヘッドのところにはイイ男がいるかもしれないぞ」

「安く見るんじゃ無いよ、筋肉が無きゃダメだ」

「聞こう」

「あたしゃ男の筋肉が好きなんだ、割れた腹筋、銃のグリップを握ったときに出る腕の筋、あと鎖骨周辺、筋肉がないやつは嫌いだよ」


すかさずコックスが口を挟む


「筋肉を、舐めたりはするのか?」

「は?」

「おいコックス!今はダメだ、我慢だ」

「す、すまない、つい」


コックスは少し小さくなる。

ジルは再びペニーに視線を落とす


「手伝えばここから出られる。相手はタートルヘッド、どうだ?」

「ふん……いいだろう」


筋肉フェチの女盗賊、「ペネロペ・ロペス」参戦!





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