2-2 初仕事
ルクリアさんのとこに転がり込んで2,3日、とりあえず食事の準備や掃除など身の回りのお世話をさせてもらっている。
しなくてもいいと言ってくれるのだが、住まわせてもらってる以上そういうわけにもいかない、
追い出されたりしたら大変だもの、
やってることは召使い時代と大差はないのだが、苦ではなかった。
3日目の日も暮れかけるころ、ラジオか無線を聞いてたルクリアさんが動き始めた、
ルクリア「アザミ!行くぞ、」
アザミ「人さらいの情報でもあったんですか?」
ルクリア「後で話す、とにかく行くぞ」
走り出すルクリアさんをなんとか追うようについていった、
影町のどこら辺かはわからないが、雑居外のようなところまでくると、隅の方で2人で身をひそめた、
アザミ「ここで、待ち伏せですか?」
ルクリア「さっき光町で強盗が発生した、子供を人質に逃走、影町の方へ向かったと言っていた、」
アザミ「それで、ここに来るんですか?」
ルクリア「おそらくな、こっちの大手ギルドは犯罪者からの盗品だろうがどんな人間だろうがすぐに換金してくれるからな、ここはそのギルドへの通り道ってことだ」
アザミ「なるほど・・・」
そこからものの数分もしないうちに、
アザミ「あっ、まもなく向こうから二人走ってきます」
ルクリア「わかるのか!?」
アザミ「はい、急いでる足音が二つきます」
ルクリア「耳がいいんだな、おまえ、」
アザミ「いえ、召使いの時、ちょっとでも手を止めたり休んでたりしてるとすぐ怒鳴られたり、しなくてもいい仕事させられたりするので、少しでも足音がしたら働いてる姿を見せることに徹していたので・・・」
ルクリア「そうか・・・、今その能力助かってるぞ!」
アザミ「あ、ありがとうございます、」
そうこう話してるうちに、奥の方から2人の男が金品らしき荷物と小さな男の子を抱えて走ってきた、
ルクリア「あいつらだな、とりあえずお前はあんまり前に出なくていいからな。私が行くから様子をうかがってろ、もしガキが奴らから引き離されたら保護してやれ、」
アザミ「は、はい!」
これからわたしはこの影町で人さらいとして生きていくんだ、そう決めたんだ、
自分がどういう風に見えているかはわからないが、精一杯堂々と構えているつもりだった。
ルクリア「もし私が負けたら逃げていいからな」
アザミ「え、負けるかもしれないんですか?」
ルクリア「まさか」
ルクリアさんは笑いながら飛び出していった。
・・・!?
言われた通り影から様子を見て子供を助けようと思い、一旦落ち着こうと目を閉じ深呼吸をひとつしたところで、振り返るとルクリアさんはすでに強盗二人をのしてしまっていた。
アザミ「も、もう終わったんですか?」
ルクリアさん「ああ、ちょろいなぁ」
アザミ「あ、君!大丈夫?」
少年「うん、うん・・・」
少年はべそをかきながら立ち尽くしていた、
アザミ「怖かったよね、もう大丈夫だよ」
少年「うわぁぁぁぁぁぁぁん」
本当に一瞬の出来事だったが、とりあえず無事に終わってホッとした。
アザミ「この子とこの人たちどうするんですか?リンドウさんとこですか?」
ルクリア「賞金首でもねぇし、こっちの男は保安隊が追ってる手配犯の強盗だからな、そっちの方に引き渡す。おまえはそっちの男を運んでくれ」
アザミ「はい、君、歩ける?おうちに帰れるよ」
少年「うん・・・」
そういうと二人と少年を連れて影町の奥の方へ向かっていく、
・・・
アザミ「手配犯と賞金首って違うんですか?」
ルクリア「まーな、手配犯ってのは保安隊がちゃんと証拠そろえて捕まえる犯罪者だが、賞金首は誰かがこいつを捕まえてくれってギルドに依頼してる奴だから一概に犯罪者だけってわけじゃないんだ。犯罪系の賞金首だと保安隊も捕まえるって事にはなってるみたいだけどな、」
アザミ「あ、そうなんですね、」
ルクリア「金さえ積めばどんな奴でも誰かがさらってきてくれるかもしれないってところかな、」
アザミ「なるほど・・・」
ルクリア「偉い政治家やトップアイドルをさらってきてくれ~なんてのも頻繁に見るぜ、まぁリスクだけで誰もやんねぇけどな」
アザミ「へ、へぇ~・・・ところで、光町と逆方向じゃないですか?」
ルクリア「私も賞金首だからな、あんまり光町の方歩きたくないんだ、」
アザミ「え?そうなんですか?何やらかしたんですか?」
ルクリア「何もしてねぇよ!」
アザミ「でも、賞金首ってことは誰かに狙われてるって」
ルクリア「この仕事始めたころ、どうやって人さらいを捕まえようか考えててな、いいアイディアを思いついたんだ、」
アザミ「どんなですか?」
ルクリア「前に言った大手ギルドの少し離れたところで張ってるとな、人さらいみたいな連中が金目の物や捕まえた人たち抱えてぞろぞろ通るんだ、そこを根こそぎぶっ倒してリンドウさんとこに売り飛ばしてたんだ」
アザミ「効率いいですね、」
ルクリア「そしたら大手ギルドに目をつけられてな、そりゃあ向こうからしたら商品が入ってこなくなるんだから当然だよな、その大手ギルドに賞金掛けられて、近づくといろんなやつからすぐ狙われるようになってな、さすがに私も自分を狙いに来てる奴らを正面から何人も相手に出来ないからな、」
アザミ「結構なことしてたんですね、でも、だからこんなに強くなったんですね」
ルクリア「はははっ!かもな!」
アザミ「じゃあ、手配犯ではないから保安隊から狙われることはないんですね、」
ルクリア「・・・いや、罪状が人さらいだから保安隊の目の敵だわな、」
アザミ「いろんなところから狙われてるんですね、」
ルクリア「もう慣れっこだよ」