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わたしの仕事は人さらい  作者: おどるニコル
2.ルールだらけの仕事
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2-1 仕事がない時に動ける人と何もしない人の違い


治安の悪い影町の街並みも、この人と一緒に歩くのならさほど怖くはなかった。

普通に歩いているだけなのだが、ルクリアさんには周りを威圧し簡単に敵を寄せ付けない雰囲気が漂っていた。

わたしにもわかるくらいなのだから、この辺で生活している人たちにはなおさらの事だろう。


ものの十数分、道を覚えながら歩くと路地裏の壊れかけた古い一軒家にたどり着いた。


アザミ「ここ、ルクリアさんの家ですか?」

ルクリア「ああ、昔つかまえた人さらいのねぐらだったからそのままもらっちまった!電気はつくから安心しろ!」

ルクリアさんは笑いながら家に入っていく。


一緒に入ると中は足の踏み場もないほどゴミだらけで、脱ぎっぱなしの服や下着が散乱していた。

ルクリアさんは自分の腰のベルト付きのバッグを放り投げると、すぐさまベッドに寝転がってしまった。

何でも完璧にこなせる素敵な人だと思っていたけど、人間らしい部分が垣間見れてなんだか安心できた。


ルクリア「おまえも適当に休んでいいぞ~」

アザミ「は、はい、」

休もうにも座る場所もないので困ってしまう、


アザミ「わたし、掃除しましょうか?」

ルクリア「いいよしなくて!休め休め!」

そう言うとそこら辺のゴミや荷物を足でよけてわたしに場所を開けてくれた、


アザミ「掃除しない方がいいですか?この方がルクリアさん使いやすいんだったら余計な事しませんから、」

ルクリア「そりゃ綺麗な方がいいけどよ、どうせすぐ汚れるんだし、おまえ今までずっと召使いで掃除してたんだろ?これからはもうしなくていいんだぞ!飯食うとすぐ眠くなってよ~」

そういうと物の数秒で眠ってしまったようだ。


ルクリアさんにとっては寝ながら適当に言った言葉かもしれないが、もうしなくていい、その言葉が長年お屋敷で働かされていた辛さが吹き飛ぶくらい嬉しかった。


・・・


翌朝、ルクリアが昼過ぎに目覚めると、まるで違う家かのように綺麗になっており、壁には昨日着ていたドレスが掛けられていた。


ルクリア「!?、!?」

寝起きの感覚も残っていて一瞬思考が止まってしまった。


アザミ「あ、おはようございます、ルクリアさん。」

アザミは両手にゴミを抱えて掃除をしているようだった、

ルクリア「お、おう・・・お前、こんなに綺麗にしてくたのか?」

アザミ「はい、隣の部屋はまだ手付かずです。あ、いるものかいらないものかわからないものは隣の部屋に分けておいたので後で確認してください。とりあえずこの部屋と台所とトイレだけ綺麗にしました。朝ごはん作ろうと思ったんですけど食べるもの何もなかったので起きてから聞こうかと・・・」


ルクリア「い、いいんだよ!そんなに働かなくて!まさか寝ないで働いてたんじゃないだろうな!」

アザミ「いえ、あの後すぐ寝ました。朝早く起きるのが習慣だったので、外に出るのも怖いし、ご飯も作らなくていいので掃除してました」

当然のことのように淡々と話すアザミに、ルクリアは昼まで寝ていた自分が少し恥ずかしくなってしまった。


アザミ「でもいつもよりたくさん眠れました、それにルクリアさんが傍にいたので安心して眠れました、」

ルクリア「あ、ありがとな、こんなに綺麗にしてくれて、」

言い慣れないお礼に口がうまく回らなかった。


アザミ「朝ごはんは食べないんですか?」

ルクリア「昨日の夜二日分くらいまとめて食ったからな、あとは腹減ってきたらその時考えるけど、腹減ったか?」

アザミ「い、いえ、まだ大丈夫です、」


・・・


アザミ「いつもどうやって仕事してるんですか?」

ルクリア「基本は情報収集だな、新聞とラジオ、あとは無線でだ」

アザミ「そういえばこのまえ、どうやって捕まってたのから逃げられたんですか?」

ルクリア「腕と靴に刃物仕込んであるからな、縄なら簡単に解ける。木や鉄の錠の時も対策してある。どんな状況にも対応できるようにな、」

アザミ「なるほど、」

ルクリア「お前もいざという時には自分で逃げられるようにしておけ、いつでも私が傍にいれるわけじゃないし、私も捕まるかもしれない、」

アザミ「で、出来るでしょうか・・・」


ルクリア「あと体を柔らかくしとけ、足も手と同じように使えるようにしておくと何かと役に立つぞ」

そういうとI字バランスのようにあしをあげ頭の髪留めをほどいた。

ルクリア「おい、柔軟してみろ」

アザミ「はい、」

足を開いて体を倒すと、ルクリアさんが背中を足で踏んづけてくる。


アザミ「いーっ、痛いですっ・・・」

ルクリア「はははっ!まだまだ固いな!、いきなりはできないからな、少しずつでいい!」

アザミ「やってみます、」

ルクリア「何でも毎日コツコツやる、それが一番身につくんだ」


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