6-6 愛の嵐
ルクリア「三人そろって何しに来たんだよ」
タトゥーの女「リンドウのおっさんから聞いたんだよ、ルクリアがかわいいの二人育ててるっていうから見に来てやったんだ!」
ユッカ「かわいいだなんて~」
ルクリア「あの変態おっさんめ、」
タトゥーの女「どういう風の吹き回しだ?ルクリアちゃんよ~!」
ルクリア「うっせぇな!、まぁ丁度いいや、このタトゥー入ったバカがソテツ、そっちの長髪の頭おかしいのがツガ、デッカいのがサツキ、一応全員女だ」
ソテツ「よろしくな、アザミ!ユッカ!」
サツキ「よろしくね、」
ユッカ「ユッカです!」
アザミ「アザミです、みなさんもこちらで働いてるんですか?」
ソテツ「大体な、俺は借金取りも兼ねて影町の家から電気代や水道代の徴収してんだ。光町のやつらはこっちに来たがらねえし、素直に払わねえやつも多いからな、」
アザミ「そんな仕事もあるんですね、」
ソテツ「なるほどな!最近ルクリアん家の光熱費が急に増えてきた理由がわかったよ!」
ルクリア「うっせー!人ん家のプライバシー見てんじゃねーよ!」
ソテツ「今までが異常なくらいに少なかったんだよ!」
アザミ「初めて来たときガスも出なかったから・・・」
ソテツ「ひゃははっ!!!ようやく人並みの暮らしになったって訳だな!」
ルクリア「黙れっ!」
アザミ「でもこっちで集金なんて、危ない人とかも多そう、」
ユッカ「ケンカになったりしないの?」
ソテツ「だから見た目で威圧してんだが、それでも払わねえ奴は力づくで払わせてるけどな、」
ユッカ「怪我したりしないの?」
ソテツ「そしたらこいつが治してくれっからな」
ツガ「くくくっ、まぁね、」
ルクリア「こいつは医者だからな、」
ユッカ「えっ!闇医者って初めて見たっ!」
ツガ「闇じゃないよ、ちゃんと医師免許は持ってるよ、けど勝手にやってるだけだから治したいやつしか見てやんない」
ルクリア「腕はいいけど少し頭がおかしいからな、」
アザミ「ちゃんとした病院とかじゃないと薬とか道具とかはどうしてるんですか?」
ツガ「裏の仕事で病院の期限切れの薬とかこっそり持って来てくれる人とかいるからね、大きい声じゃ言えないけどね、」
ルクリア「バレたら大問題だけどな!」
ツガ「くくくくくっ、二人とも何かあったらうちが体の隅々までじっくり見てあげるからね、安心してケガしていいよ、」
アザミ「あ、ありがとうございます・・・」
ペンタス「そっちの大きくてかわいいのがサツキちゃん、」
サツキ「わ、私はこっちへの荷物の配達をやってるの、」
ペンタス「うちにも食材とか持って来てくれるんだよ、朝早いから会ったことなかったね、」
サツキ「お昼になると、お客さんいっぱいいて恥ずかしいから・・・」
ソテツ「ったくよ~、こんなデカい図体して気が小せぇからな、」
ツガ「くくくっ、何回かプロレス団体からお誘い来たもんね、」
サツキ「言わないでよ、」
最初に見たときは怖かったが、ルクリアさんとペンタスさんの知り合いということも繋がり、見た目とは裏腹に三人とも実にちゃんとしている人たちだった。
ルクリア「こいつらは影町の巡回も兼ねてんだよ、」
ソテツ「俺とサツキでいろんな家回ってるとな、明らかにさらわれてきた人間とか、虐待されてるケガだらけのガキとかゴロゴロ見かけるからな、」
サツキ「それでね、あまりにひどい所はルクリアさんに頼んでさらいにいったりしてもらってるの、」
ユッカ「ケガした人は闇医者さんが治してくれるんだ」
ツガ「まぁね、」
ルクリア「そういやソテツ、この前のチンピラ風情のガキども、ちゃんと金返してるか?」
ソテツ「ああ!ちゃんと働かせてるし、少しづつだが金も返して謝罪させて回ってるぞ」
ルクリア「わりーな、面倒ごと頼んでよ、」
ソテツ「気にすんな!あいつらからしっかり手数料取ってるからな、早く返し終わらねえと払う分だけがどんどん溜まるぞって言ってあっから!」
ルクリア「そいつぁ良かったよ」
ソテツ「ま、こっちで生活してる女同士、仲良くしようぜっ!」
アザミ「よ、よろしくお願いします、」
みんながフォローしてくれてとても嬉しかった、と同時にやっぱり問題を起こした原因はわたしなのではないかという不安はぬぐい切れなかった。
わたしひとりのために大勢の人が動いてくれたことが、嬉しいのだが申し訳ないと思う気持ちが強く出てしまった。
アザミ「・・・でも・・・わたしの仕事で騒ぎ起こして、みなさんに迷惑かけて・・・わたしなんか、いない方がいいのかなって・・・」
ルクリア「テメーふざけんなよ!!!」
わたしの胸ぐらを思いっきり引っ張ってきた。
眼前に映る目は本当に怖い時のルクリアさんの瞳だった。
ルクリア「じゃあテメーを連れて来たわたしの判断ミスって事か?、お前と一緒に生活してるのも間違いか?、おまえは今そう言ってんだぞ!」
そう言い放つと掴んでいたわたしを雑に払いのけた。
何が起きたか全くわからなくなってしまった、
ユッカ「アザミちゃん!絶対そんなこと言っちゃダメ!!言わないで・・・お願いだから・・・!!!」
わたしの両肩を掴むと、こんなにも悲しい顔ができるのかという程の表情に涙を浮かべ、わたしの顔を見つめて来た。
ペンタス「いいかい、たとえ料理をひっくり返そうが、客をぶん殴ろうが、店を潰したっていい!でも間違ってもそんなこと言うもんじゃないよ!」
いつも優しくしてくれるペンタスさんまでが見たことのない冷たい顔をしていた。
アザミ「あ・・・あの・・・」
怒りに達したような三人は言葉も途中に店の外へ出て行ってしまった。
自分が悪かったという謝罪を伝えたかっただけなのだが、もうどうしたらいいかわからなくなってしまった・・・。
・・・
・・・
ソテツ「おまえ!愛されてんなっ!」
アザミ「・・・え?」
ツガ「くくっ、あんなこと言ってくれる人なかなかいないよ、」
サツキ「アザミちゃんがいつもみんなのために頑張ってるなっていうのがわかったわ」
アザミ「でも、怒らせちゃった・・・」
ソテツ「おまえはあいつらが大事だからあんなこと言ったんだろ?」
アザミ「はい・・・」
ソテツ「同じくらいあいつらもおまえが大事なんだよ!」
アザミ「・・・」
ツガ「もし、あの太眉の子がきみに同じ事言ってきたらどう?あたしなんかいない方がよかったって、」
アザミ「やだ、そんなの絶対嫌です!そんなこと言わないでって・・・あっ・・・」
なぜ三人があんなに怒って、泣いてくれたかが理解できた。
ソテツ「おまえ、周りの事ばっか考えすぎだぞ!」
ツガ「自分の事も考えいいんだよ」
サツキ「そうね、自分の事を大事にするのも、周りのためだったりするのよ」
アザミ「はい・・・はい、」
彼女たちの言う通りだった。
周りのため、みんなのためと思いすぎてしまったことがかえってみんなを傷つけてしまった。
人の気持ちってわからなくて、難しい。でも優しい。
ソテツ「ほら、勘定だ、ごちそうさん!」
サツキ「ごちそうさまでした、おいしかったわ」
ツガ「また来てあげるね」
アザミ「あ、ありがとうございました、」
ソテツ「次来るまでにもっといい顔になってろよ!」
アザミ「・・・」
誰もいなくなった店内でちょっとだけ考えた後、黙って彼女らの食器を片づけ始めた。




