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わたしの仕事は人さらい  作者: おどるニコル
1.一番嫌いな仕事
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1-5 ルクリアの花


ギルドの近くの古びた食堂のような場所へ連れていかれると、中はそれなりに活気があり、数人のグループが食事をしたりお酒を飲んだりしている。


お店での食事が出来るなど思ってはいけない事だと植え付けられていた、

お屋敷のご主人様と奥様と、一人娘のお嬢様がよく3人で食事に出かけていたのは、羨ましくも別世界のことだと割り切っていた、


外から眺めたことしかなかったが、光町のお店とさほど変わりないようだ。

ただ客層は少々ガラの悪そうな人が目立つ感じではある、


店内はテーブル席、小上がりの座席、カウンター席がそれぞれ数席ずつ設けられており、半分くらいの席がうまっていた。

厨房のおばさんが忙しそうに一人で切り盛りをしている、


おばさん「いらっしゃーい、おや、ルクちゃんかい!」

ルクリア「おうペンタスさん!メシ頼むぜ!こいつの分もな!」

ペンタス「あら、今日はお友達も一緒かい?」

アザミ「こ、こんばんわ・・・」


ペンタス「かわいい子だね!ルクちゃんにさらわれてきたのかい?」

ルクリア「そうだ!ついでにさらってきた!」

アザミ「よ、よろしくお願いします、」

ペンタス「ゆっくりしていきな」


気さくな人柄の感じの良い人だ、なんだかこの影町の雰囲気には似つかわしくない気もする。

・・・だが、左目の周りに描かれた何かの花のタトゥーが、初対面の会話にブレーキをかけた、


ルクリア「何食う?なんでもいいぞ!」

アザミ「お、おまかせします、」

ルクリア「オッケ、じゃあオムライスと焼肉丼大盛とあずきパフェくれ!全部2人前でな」

アザミ「わ、わたしそんなに食べられないです、」

ルクリア「そうか?、じゃあここのオススメのオムライスでいいか!」

アザミ「はい、ありがとうございます、」

ペンタス「あいよ!いっぱい食ってって頂戴ね!」


ルクリアさんは店のおばさんに冗談を言いながら注文をすると、隅っこの小上がり席に座りこんだ。

脱いだ靴も片方がひっくり返ったままに、


ほどなくして注文した料理が目の前に並べられると、2,3人分くらいの食事を一人で食べている。

せっかくわたしの分も頼んでくれたのだから、遠慮なく一緒に食べていいのだと思った。


ルクリア「どうだ、うまいか?、ペンタスさんのオムライスは昔わりと有名だった・・・」


挿絵(By みてみん)


料理を一口食べたとたん、その味が体中を駆け巡ったのを感じると目から涙がとめどなく溢れてきてしまった。


アザミ「・・・おいしいです、・・・うっ、うっ、」

ルクリア「お、おいおい、泣くほどのもんでもねぇだろ」

アザミ「誰かと、誰かと一緒に、ご飯食べるのなんて、初めてです・・・なんか、気持ちがごちゃごちゃになっちゃって・・・」

ルクリア「そ、そうか・・・まぁ、ゆっくり食え!」


人前で涙を流したのも何年ぶりだろう、召使いのころは泣いてもすぐに怒鳴られるだけなので、泣くのも笑うのも随分とやめてしまっていた。

夜になるとふと泣きたくなることがあり、寝床の物置でひとりで泣いたことは何度もあったけど・・・


少しして落ち着いた後、ちょっとずつ食事を続けることができた。

アザミ「・・・ルクリアさん、何で、そんなに、わたしなんかに優しくしてくれるんですか?」

ルクリア「ん?何がだ?」

アザミ「だって、こんな見ず知らずのわたしに、」


ルクリア「おまえ、さっき私を助けてくれようとしたじゃないか、自分もつかまって売られる寸前だったのに、」

アザミ「あれは・・・、」

ルクリア「優しくしてくれる奴には優しくする、当たり前のことだろ?」

アザミ「・・・」


ルクリアさんは、おまえは当たり前のことを何聞いてるんだ?というような顔で笑っていた。

今までどれだけ頑張っても褒められたことなど、優しくされたことなど一度もなかったわたしにとって、その当たり前をしてくれることが衝撃だった。


ルクリア「逆に人さらいのようなことしてるむかつく奴らには遠慮なく殴ったり蹴ったりしてるけどな!」


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