5-12 利用できるものは何でも利用しよう
お嬢様を背負ったユッカは、逃げる体制を整え再び3人で脱出を試みた。
アザミ「わたしが先導する、」
後ろの二人のことを考えるとあまり無理にスピードは出せなかった、
一階に降りようとしたときにただならぬ異変を感じた。
アザミ「ストップ!」
ユッカ「わわっ!どうしたの!」
アザミ「何かいる!」
1階には降りたものの、察知した危険から一旦階段の影に隠れた。
おそるおそるフロアを見ると、保安隊が3~4人、ホテルのスタッフが4~5人男女を問わずに倒れている、
はっきりと確認はできないが奥の方で男が一人、保安隊の一人と格闘していた、
あの男が一人でこの人数を倒したのだろうか?だとしたら絶対に近づいてはならないと感じた。
もしお嬢様を狙う輩だとしたらとてもじゃないけど太刀打ちできない・・・、
ユッカ「そういえば、さっきの人達、下の仲間が~みたいなこと言ってた、」
やはりわたし達の敵か、
保安隊とやり合っている隙に裏口へ行けないかと思ったが、考えがまとまる間もなく男の攻撃に保安隊は倒されてしまった。
アザミ「(くっ・・・!もっと時間稼いでよ!)」
ユッカ「どうしよう、アザミちゃん」
アザミ「・・・!!!」
この喧騒の中わたしたちのわずかな気配を感じたのか、男が真っ直ぐこちらに向かって走ってきた!
アザミ「まずい!気づかれ・・・!!!」
状況を伝えきる前に男はわたしたちの目の前に立ちはだかった。
アザミ「早っ!!」
ヒメシャラ「こ、今度はなんですの!?」
男「ヒメシャラ、イル、ツカマル、アト、ドデモイイ」
ユッカ「片言・・・?」
アザミ「(マズいマズいマズい!!!話も通じそうにない!!!)」
片言の男「コイツ、ドク」
言葉を理解しようかと考える暇もなく、片言の男は狙いのお嬢様を背負っているユッカを邪魔者とみなしたのか、もう殴りかかろうとしていた。
アザミ「(ユッカがやられる!、でもわたしが横から歯向かったところでおそらくビクともしない、)」
わたしはとっさにユッカ達をかばうように前に立ちはだかった、何か算段があったわけではなくただ体が反応してしまっていた。
アザミ「ふぶしゅっ!!!」
ユッカ「アザミちゃんっっ!!!!!!」
ヒメシャラ「きゃっっ!!!」
片言の男の振り上げた拳は当然わたしの左頬に直撃し、痛みが頭に走ると同時に壁際まで吹っ飛ばされてしまっていた。
殴られた衝撃と壁に激突した衝撃でだんだん意識が遠のいていくのがわかったが、遠のく前に唇を思いっきり噛んで無理やり正気を取り戻した。
アザミ「(どうする?次どう動けばいい?数秒後にはユッカ達が狙われる・・・)」
頭と唇から血を流しながらも考えることはやめなかった。
片言の男は狙いのお嬢様に集中していたようで周りへの注意はおろそかになっているようだった。
わたしは近くにあった消火器を手に取ると、2回転3回転と横に振り回し、遠心力をかけて片言の男の頭部にヒットさせた。
片言の男「グゥ!!」
男が片膝をついた隙に、消火器のピンを抜き男の顔をめがけて中のガスを勢いよく発射した。
片言の男「フブブブブブ!!!」
あたりがガスまみれになって視界が悪くなる中、消火器を捨て把握していたユッカたちのいる場所へ向かい手を握った。
アザミ「西口から逃げるよ!」
ユッカ「正面の方が近くない?」
アザミ「そっちは警備が多いから、わたしたちまで保護されちゃう、それに・・・」
ユッカ「それに、」
ヒメシャラ「あの変なのが起き上がってきますわ!」
ガスまみれの部屋は次第にその視界を取り戻しつつあった。
アザミ「化け物には、化け物をぶつける!・・・とにかく行こう!」
ユッカ「うん!」
片言の男「マツ!コドモ!」
男が起き上がる前に三人で駆け出した。
ヒメシャラ「追いつかれますわよユッカ!もっと急ぎなさい!」
ユッカ「走ってるよ~!」
ヒメシャラ「出口ですわ!」
アザミ「いた!保安隊さん!誘拐犯が追ってきます!」
ナンテン「あら、アザミちゃん、ユッカちゃん、あ!内緒だったっけ?」
そこには西口のけいびをしていたナンテンさんの姿があった、
アザミ「あの男、悪い人です!」
ユッカ「お願いします~!」
ナンテン「オッケー!まかせて!」
わたしたちが通り過ぎると通路を遮るように男の前に立ちはだかってくれた。
ナンテン「止まりなさいっ!」
片言の男「ドク!」
ナンテン「きゃっ!!!」
男の振り回す腕一振りがナンテンさんの顔を弾き飛ばしてしまった。
ヒメシャラ「やられちゃいましたわ!頼りない保安隊ね!!」
ユッカ「大丈夫だよ」
片言の男「グォァッ!!!」
男の脇腹をナンテンさんがドロップキックをするようにえぐっていった。
ナンテン「いてーんだよコノヤロー!!!」
片言の男「オンナッ・・・オグッ!!!グォッ!!!」
起き上がろうとする男に隙を与えることなく立て続けに蹴りを入れるナンテンさん、スイッチが入ったようで安心した。
片言の男「アグッ!、ヤメル!・・・」
ナンテン「あぁ?何言ってっかわかんねーよ!」
ヒメシャラ「保安隊があんなことしていいんですの?」
アザミ「何も見てない」
ユッカ「あたしも何も見てないよ!」
ヒメシャラ「・・・、」
アザミ「あとは見つからないように待ち合わせ場所まで行けば!」
ユッカ「そうだね、任務達成です!お嬢様!」
ヒメシャラ「そ、そうね・・・」
狙ってくる敵の気配も感じなくなり、建物内の喧騒がひどいのため後はもう逃げ切るだけという算段がついた。
ユッカ「アザミちゃん、化け物扱いはナンテンさんに怒られるよ、」
アザミ「ご、ごめん・・・内緒にして・・・」




