2-3 聞いて嬉しい意外な返事
そんな話をしながら10分ほど歩き、日も沈み始めたころ、2階建ての古い屋敷が見えてきた。
さらに影になっている裏手の方へ向かうと、一人の保安隊らしき姿の女性が立っていた。
アザミ「あ、保安隊の人ですよ、ルクリアさん大丈夫ですか?」
ルクリア「大丈夫だ」
アザミ「捕まらないんですか?」
保安隊の女性「ルーちゃーん!やっぱりきたー!」
アザミ「???」
ルクリア「ほい、こいつら今日の強盗だろ、頼むわ」
保安隊の女性「さっすがー!頼りになるー!」
ルクリア「おい!あんまりでけぇ声出すなよ!ほれ、盗品とさらわれたガキだ!」
保安隊の女性「ありがとー!もう大丈夫よ、私はナンテンっていうの、君の名前は?」
少年「スミレ・・・」
保安隊の女性「スミレ君って言うのね!よく頑張ったわね!お姉さんと一緒にパパとママのところに帰りましょう!」
スミレ「うん!」
少年は保安隊の姿を見て安心した表情になったのがわかった。
八の字眉毛がその性格を物語っているかはわからないが、見た感じは優しそうな人だ、
額の傷は保安隊として事件を解決した証なのだろうか、
また、保安隊の女性はしゃがんで少年と目線を合わせ、笑顔で頭を撫でてくれる、
こういった仕草の一つ一つが、子供に寄り添うために大事なことなのだろう、
ルクリア「こっちの男はお前らの獲物だろ、持ってけ!」
ナンテン「ありがと!そっちの人は前科もリストにもないし、ただのコマっぽいからそっちで処分しちゃって」
ルクリア「オッケ!じゃあそいつの分、今度よろしくな!」
ナンテン「りょうかーい!」
はた目には女子同士がわいわい話しているような雰囲気だったが、中身は随分と殺伐とした内容だった。
ナンテン「あれ、そっちの子は?」
アザミ「こ、こんばんわ・・・」
ナンテン「こんばんわ!ルーちゃんのお友達?」
アザミ「いろいろあって、ルクリアさんのところでお世話になってます、アザミです・・・」
わたしは今までの経緯をナンテンさんに話した。保安隊の人だから話せたのではなく、ルクリアさんの信頼してる人だったから心を許して話すことができた。
ナンテン「・・・そっか、あなたも大変だったのね、」
2人の楽しそうな空気が重苦しい雰囲気になりそうで申し訳なかったが、すぐに、
ルクリア「こいつ!めっちゃすごいんだぜ!掃除も料理もすげーうまいし、足音でどんな奴が近づいてくるかわかるんだぜ!」
そう言うとわたしの頭をくしゃくしゃと撫でてくれた、
ナンテン「そうなんだ!ルーちゃんに認められるなんてすごいわね!でもルーちゃんガサツだから一緒にいると大変でしょ!」
ルクリア「うるせーなぁナン!おまえも人のこと言えねーだろ!」
ナンテン「今度私の部屋も掃除お願いしようかな~」
2人は笑いながらもわたしを交えて楽しい話にしてくれているのがすごく嬉しかったのと同時に、大人の人の会話の上手さというものを実感した。
ルクリアさんが捕まえた男たちの身ぐるみを剥いだり、売るために体つきを確認してる時にナンテンさんがこっそりと話しかけてきてくれた。
ナンテン「アザミちゃん、ルーちゃんのために一緒にお金稼ぐって言ってたけど、本当はルーちゃんと一緒にいたかったんでしょ?」
アザミ「は、はい・・・」
照れくさくて顔を背けて返事をしてしまったが、内心は馬鹿にされないかとか、そんな事してないでちゃんとした生活をしなさいと言われないかとても不安だった。
ナンテン「わかるー!ルーちゃん優しいもんね!」
アザミ「!!!」
アザミ「はい!とっても!、お二人は友達なんですか?、賞金首と保安隊なのに・・・」
大きい声を出すのは苦手なはずなのに、予想外の嬉しい返答に思わず声を上げてしまった、
ナンテン「ちょっと昔いろいろあってね、今は友達だよ!」
アザミ「もしこんな所見られたら、お仕事クビになっちゃうんじゃ・・・」
ナンテン「いいのいいの!保安隊なんていつでも辞めていいと思ってやってるから!」
アザミ「そんな・・・折角の仕事なのに・・・」
ルクリア「終わったぞ!ナン、また頼むぜ!」
ナンテン「こっちもよろしくね!アザミちゃんもルーちゃんに何かされたらいつでも相談しに来ていいからね~」
ルクリア「さっさとそいつら連れて帰れ!」
やっぱりこの人たちは信頼できる人たちということを改めて実感した。
変に真面目に話をされるよりも、悪態をつくような冗談を交えながらの楽しい会話は、二人の関係性がより親密であることを物語っていた。
ナンテン「あ、ルーちゃん、」
去り際にルクリアさんの近くに寄ると、小声で且つ真面目な顔になって囁いた。
ナンテン「最近、白仮面の連中を町で見かけてる、」
ルクリア「・・・そうか、近々何かあるかもな、」
ナンテン「私達もアンテナ張ってるけど、そっちも気を付けてね、」
ルクリア「わかった、お互い何かあったら頼むな」
不意にまじめな顔になる二人に少し距離を感じてしまった。