1-1 絶望からの絶望
少女「・・・ここは・・・?」
ふと目を覚ますと、そこは薄暗い小屋の中のようだった、
わたしは両手を前に縄で縛られ拘束されていた。
少女「痛っ!」
顔と腕に多数の擦り傷があり、鼻血を出した跡があった。
少女「(・・・そうだ、路地裏で確か4人の男の人に囲まれて、さらわれると感じたから・・・抵抗したら殴られて、気絶したんだろうな・・・)」
少し離れたところで男が4人話をしている、
少女「(・・・はっきりと覚えてないけど、おそらくわたしをさらった奴らだろう・・・やっと、やっと解放されたのに、わたし、また誰かの言いなりになるのだろうか・・・?)」
わたしは自分のこれまでの生活を思い出した、
学校にもいかず、何年も何年も休みなく召使いとしてこき使われた毎日、それがわたしに与えられた人生だった。
光の見えない毎日からようやく抜け出せると思った矢先にも、また闇が待っているのだろうか・・・
一瞬、何もかもが嫌になり、もう何も考えず、すべてを投げ出してしまいたくなった。
・・・どうせ終わるのなら、最後に好きなように行動してみよう、
誰かの言いなりではなく、自分の考えで、
少女「(考えよう、奴らはまだわたしが目を覚ましたことに気づいていない、)」
男たちの話を聞きながらまずは周りの状況を知ろうとする、
少女「(敵は4人、話を仕切ってるのがおそらくリーダー、腕っぷしの強そうなひげの男、背の高い男が部下、返事だけしている若い男、たぶん一番下っ端、会話からすると最近入ったばかりだろうか?・・・出入り口は一つだけど近くに奴らがいる・・・、窓は二つあるけど手を縛られてて乗り越えられそうにはない・・・)」
不用意に顔を動かさないように、周囲の様子を確認しながら何気なく後ろを見ると、もう一人女性がいた、
少女「!?(あれっ?このひと今までいた?)」
一瞬ビクッとなってしまったが、やつらに気づかれないように冷静を装った、
少女「(この人全く気配を感じなかった、なんか危ない人・・・?、それともただ影の薄い人・・・?)」
女性は金髪の長い髪に綺麗なドレスを纏っている、
ただ私と同じようにさらわれて来たのだろう、両手は縛られ表情は曇っており、うつろに目を開きもう何も考えられないような絶望の表情をしている、
少女「(無理もないよね、これから売られた自分がどうなるか考えたら・・・)」
たぶん生気がなかったから気配を感じなかったのだろう、
ただ、わたしにとって一人ではない、同じ境遇の人がそばにいてくれたのはとても心強かった。
少女「お姉さん、大丈夫ですか?」
わたしはギリギリの小声で女性に声をかけるが返事はなく、遠い目をしたままである。
そうこうしてるうちに4人の話が終わったのだろうか、3人は若い男一人に見張りを任せて外へ出て行った。
・・・
少女「お兄さん、」
若い男「おっ、なんだお前、目覚ましたのか?」
若い男は女2人を支配しているという優越感を醸し出し、へらへらと話しかけてきた、
もともと引っ込み思案な性格もあり、召使い時代のトラウマも追い打ちをかけ、人と会話をするのも得意ではないのだが、気を遣うような相手ではない、
何を言ったところで失礼もクソもない、
少女「お兄さんは・・・本当にあの人たちの仲間なんですか?」
若い男「あ?何言ってんだ?当然だろ!」
少女「私、連れてこられるときにこっそり聞こえたんですけど、あの人たち今回の取り分は3等分とか何とか言ってましたよ、」
若い男「はぁ?」
もちろんそんな話は聞いてないが、人さらいをするグループのリーダーならまだしも下っ端がそこまで考える力はないと判断した。
少女「お兄さん切られるんじゃないですか?だってせっかくの取り分は多い方がいいし、あの3人相手にお兄さんひとりが力で勝てるとも思わないし、」
若い男「ん、んなわけねーだろが!」
その言葉から虚勢を張っているが内心は不安が募っていることがわかった、
少女「たぶん、今どうやってお兄さんを始末するかの相談だと思います、だからお兄さん一人に見張りさせて三人で相談に行ったんですよ。やられる前に話に行った方がいいんじゃないですか?」
若い男「・・・いいか!おとなしく待ってろよ!」
男はわたしたちをおいて、慌ててリーダーたちの元へ駆け出してしまった。
少女「(きたっ、チャンスだ、)」
少女「お姉さん、今です、早く逃げましょう、立てますか?」
女性「・・・」
少女「お姉さん、」
女性「私はいいから、あなたは早く逃げなさい・・・」
やっと話が出来た、こんな小汚い小屋には似つかわしくない綺麗な声だ、
少女「何言ってるんですか、売られちゃいますよ、」
女性「・・・早く逃げなさい・・・」
少女「!!!」
どうしようか、まさか断られるとは思っていなかったので戸惑ったが、考えてる時間はない、
少女「・・・本当に、いいんですか?・・・」
女性「・・・」
わたしは女性と一緒に脱出することを諦めひとりで出口へ駆け出し、ドアから奴らがいないことを確認する、
少女「(大丈夫、行けそう、足音もまだ聞こえない、)」
少女「・・・」
・・・