某アニメ化作品の、原作漫画の話
そのアニメは、端的に言ってとても面白い。
滑らかに動くアクションシーン、テンポの良い掛け合いや没入感のある日常シーン、原作で表現されなかった・できなかった部分の補完。
放送枠に関する前例のない取り組みなどもあって話題を呼び、
いわゆる『構文』の流行もあって、SNSで凄まじい人気を博した。
かくいう私も視聴者の1人であり、グッズや原作などを買い求めるファンの1人でもある。
さて。
アニメから入って、面白かったから原作を買う。
これ自体はそこそこ良くあることだと思う。
ただ、原作が思っていたほど面白く感じないというのは、ずいぶん珍しい経験だった。
なんというか、漫画というメディアを十全に活かしていないような気がする。
まず、ほとんどのコマの四隅が90度で、台形になっているコマがかなり少ない。
コマ同士にはタテヨコに一定以上の感覚が必ず開けられていて、キャラや吹き出し、効果音なんかがコマからはみ出すこともまずない。
見開き2ページを貫通していたり、1ページを丸ごと使ったりするような大ゴマはほぼゼロに近い。
大抵の漫画では、画面や展開に緩急を付けるために、上記のどれかしらの表現は多くなってくるはずだ。
単行本をまる一冊読んで、こうした表現のあるページが両手で収まる作品を人生で初めて見た気がする。
良くも悪くも……というか、淡々とし過ぎている。
検索サイトに作品名を入れると、嫌いだとかつまらないだとか、ネガティブなサジェストがつくことはよくある話だ。
そして大抵の場合は、アンチや逆張りのような、作品自体をあまり見ていないような人間が書き込んでいたり、検索をしていたりすることがほとんどだ。
この『つまらない』というサジェストに少し共感してしまったのも、人生で初めての経験だった。
ただ、原因もなんとなくわかる。
原作担当と作画担当が別々であること。
1話完結を軸にストーリーが進むこと。
その1話の中で、高頻度で現在と回想を行き来すること。
そして、週刊誌での連載であること。
多分これ、ページ数に対して内容が多過ぎるんじゃないだろうか。
製作にあたって、何かしらの連携が不足しているか、処理が追いついていないんじゃないだろうかと。
むしろ、そうであってほしい。
追記 もう一人の私から「感情の起伏が少ない(ように見える)主人公の精神性を反映しているのでは?」という意見がもたらされましたが、別に彼女が関わっていないシーンでも同じようなテンションなので真偽不明です。まぁこの文章自体、事実を言っている部分以外は予想に過ぎないわけですが。