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呪われた貴方を佑ける方法  作者: 槻 みことӪ
第一章 アウラ島脱出編
8/25

合流

村に着いたのは、夜が一番深くなる頃だった。


精神的なダメージももちろん大きいのだが、昼間以降何も口にしていないのと、何よりかなり冷え込んでおり

霧により衣服も濡れて、体温が奪われる。


濡れて顔に張り付く前髪を、何度もかき分けて

周りを気にし合いながら歩くが、体力の限界を迎え、座り込んでしまう者も少なくは無い。

その為、先遣隊と本隊とで別々で動くことになった。


比較的元気で、体力がある人達を二つに分け、子ども達を抱え、シャロア様と先に村へと向かってもらう

もう一つの部隊には、族長の妹である私が率い、高齢の方に肩を貸し、状態を配慮しながらゆっくりと進む。


『大丈夫、少しずつ村に近付いてますから

ゆっくり急ぐ気持ちで⋯

辛い方は言ってください、適宜休憩をとりながら行きます!』


どんなに辛くても、声掛けを忘れてはいけない

人間は互いに励まし合い、助け合えるのが強さなのだ。










『や、やっと村の入口だ⋯』


先に向かったはずのシャロア様達とは、到着時間は大差無かったようだ。

やはり疲れや不安で子ども達がぐずったり、親の手を払ってどこかへ向かおうとしてしまったりあったらしい

それでも、避難していた村人は全員無事に村に帰ることが出来たのだから、まずはそれを素直に喜ぶべきなのだろう⋯。


「メノン!!!」


村に入るとすぐ、一番聞き慣れた人の声が聞こえる

私は、その声がした方を振り向くと同時に、硬い何かに強く抱き締められた。


『ぐっ⋯

に、兄様⋯苦しいよ⋯』


それでもアゲット兄様は、ぼろぼろと涙を流しながら

私の存在を確かめる様に、強く私を抱き締めた。


「はは⋯、許してやってくれ、メノン

アゲットは本当にメノンが心配で

狩りだって半ば切り上げて、帰ってきたようなものなんだ」

『タイズさん!』


兄様の右腕であり、頼りになるもう一人のお兄さんの様な存在であるタイズさん

普段は生命力溢れる顔をしているが、今日に至ってはやはり、どこかやつれていた。


「メノン、良かった!

無事だったのか!」

『スフェンも!』


私達を見付けて、スフェンも駆け寄ってきてくれる

その元気な姿に、本当にいつもの日常が戻ってきた様で、実はやっぱりあんな出来事は夢だったんじゃないかと、目頭が熱くなる。

それでも、駆け寄ってきたスフェンの後ろには、怪我をした戦士団の姿があり

冷たい現実に、また打ちのめされそうになる。


「って、メノン!

服に血が着いてる⋯

怪我でもしたのか!?」


アゲット兄様から私を引き剥がし、私の肩を掴んで青ざめるスフェン

その声に、アゲット兄様まで叫びながら私をあらゆる角度から見渡した。


『ちょ、ちょっと!

私自身は怪我をしていないので大丈夫!


⋯でも、村の子ども達が⋯』


その私の一言で、しん⋯と静まり返ってしまい、何人かの戦士団の人も駆け付けてきた。


「メノン、亡くなった子どもは誰だか分かるか?」

「構わないから、メノンさえ良ければ教えて欲しいんだ!」

『え⋯?』


⋯ああ、そうか

皆も見たのか⋯

そうだよね、あんな姿じゃ一体誰が殺されてしまったのか分からない

もしかしたら、自分の子なのではないか、と

不安に思う人の方が多いことだろう。


でもこれは、私から言えるものでもなく

ただ言う勇気が無いのもある、不安に満ちたその表情が崩れるのを私は見たくは無い


『一度作業を中断して、皆で顔を合わせましょう

今は一番、それが大事なことだと思うんです』

「⋯ああ、そうだな


おーい!皆!

一度作業は中止だ、避難していた者達が帰ってきたんだ!」


私のその言葉に、兄様はそっと頷き

村のあちこちで片付けをしている戦士団を呼び寄せてくれた。

作業に没頭して、私達が帰ってきたことに気付かなかった者もいたので

改めてクラース族で集まって、皆で顔を合わせた。


当然、家族で集まり互いに怪我はないかなどを確認し合うが

悔しそうにその場で項垂れる戦士団の男性と、泣き叫ぶ女性の声が聞こえてきたので

きっと、我が子が殺されてしまったことに対して、教えてもらったのだろう

その時もまた、全体が静まり返ってしまう程、全員で悲しみに飲み込まれてしまった。


「シャロア、妹から聞いたが

皆を導き、助けてくれたそうだな⋯


族長として、改めて感謝する。」

「いいえ、私は神の導きのままに行動を起こしただけですから」


兄様が感謝の意を示し、他の戦士団の人も

シャロア様に頭を下げた。

そして兄様は改めてクラース族皆の方を真っ直ぐ見る。


「クラースの民よ、互いに何があったのか

話せたらで良い、状況を把握したいから教えてはくれるだろうか」


そこで私達は、互いの身に起きた事の情報交換を始める。

村では、シャロア様の神託で早くに避難していたこと

村の場所がバレてしまったこと、黒い兵が村に来たこと、サフィの身に起こったことなどを説明するり

いろいろな反応があったが、アゲット兄様は皆を鎮めながら、戦士団もその黒い軍勢に襲われた事などを話し始めた。

アゲット兄様の胸騒ぎで、早々に帰還し始めていたこと、軍勢はアンデッドであり、容易ではないが倒せない敵ではなかったことなど

戦士団の皆も、危険に晒されていたことを知った。


「⋯そうか、メノンは頑張ったんだな

危険な目に合わせてしまってすまなかった


無事でいてくれて、本当に⋯良かった⋯」


兄様はまた涙ぐみながら私の頭を撫で、そんな兄様の背中を戦士団の皆が擦った。

⋯それにしても、アゲット兄様の胸騒ぎも的中していたし、本来危機察知能力というのは

生き物の本能として、携わっているものではあるが

互いにこんな事は初めてだった。


「よし、いろいろあったけどまずは休もう!」

「お日様が昇ったら、村を立て直そうぜ!」

「解体した大きな熊の皮があるんだ、暖はとれそうだぞ」


戦士団の人達が、暗い顔をする村人達を元気付ける為か、周囲を和ませながらいろいろ狩りで得た物をもってくる


「⋯だが、村の場所がバレてるんじゃ

また攻めてくるのでは⋯」

「その時は返り討ちにすれば良い!」

「それならいっそ、村の場所を移した方が⋯」

「霊木とご先祖様の加護が無いところに行くっていうのか?」


誰もが心のどこかで不安に思っていた“私達クラース族のこれからの生活”

確かに、一番重要であり、一番難しい話だった。


「⋯⋯そう、だな

これからの事か⋯」


兄様は頭を抱え、小さな溜息を吐く

正直、これからの不安はとても大きいし、定まっていない内はこの不安は消えないだろう

けれど、あまりに疲労困憊してしまった我々に、これからを考える余裕などなく

今を生き続けることすらも、大変だった。



『アゲット兄様⋯、クラース族の皆⋯

まずは、休みませんか


村を照らすものがなくなって、真っ暗ですし

何よりまだまだ冷え込みます。


全員ではなかったけれど、今は生きて再会できたことに感謝をして

少しでも休みましょう』


そして私は、そっと兄様の隣に座る

皆も続く様に、その場に座り、身を合わせ

溜まった疲れを少しでも癒そうと、目を瞑った。


今晩が満月で良かった、満月でなかったら、雲がかかっていたら

きっと隣の人の顔も見えなかったことだろう。

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