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呪われた貴方を佑ける方法  作者: 槻 みことӪ
第一章 アウラ島脱出編
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黒い軍勢

『⋯⋯?』


死の覚悟を決めた私に、いつまで経っても痛みが訪れることは無かった。


再度顔を上げると、目と鼻の先にいたあの黒い甲冑は周囲を見渡し、私の前から離れていくのだった。


(ど、どうして⋯?

見逃してくれたのかな⋯)


私は疑問に思いながらも立ち上がり、村を見渡すと

私の前にいた黒い甲冑と、全く同じ容姿の兵が六体程、村を徘徊している。

まるで何かを探しているように、家一軒一軒に入って出てくるのを繰り返していた。


(どういうこと⋯)


見逃したのか、目的が違ったのかは分からないが

命拾いしたようで、私はサフィさんが向かって行った方を目指して歩く

少し膝が震え、ふらふらと真っ直ぐ歩けないが

きっと、サフィさんはこっちの方に⋯


『っ!!

ぅ⋯嘘⋯』


サフィさんが、いた、そこに。


サフィさんはその場に力無く倒れていて

その背中には斬られた痕があった。

そしてサフィさんが守ろうとしたのだろうか、サフィさんの息子さんと、きっと一緒に唐辛子を採りに行ったであろう

同じ歳くらいの男の子と女の子が、無惨にも切り刻まれた姿でそこに在った。


『⋯あ⋯

や、だ⋯』


初めて見る、何かに殺された死体

それもこんな、無惨な姿の⋯


『⋯う、うぅ⋯』


吐きそうになるのを必死に抑え、溢れる涙を強引に拭って、サフィさんの方に駆け寄る。

血が、ドクドクと溢れているが⋯

彼女に触れ、生命活動を確認すると

首の脈は動いており、まだ息もある。


(サフィさんだけでも、助かるかもしれない⋯!)


私は腰布を割いて、サフィさんの傷口に当てて圧迫止血を試みる。

正直大きな怪我だが、致命傷は外されている。

戦好きな帝国軍の兵が、致命傷をこうも大きく外すだろうか⋯


いつも誰かが怪我した時の為に、と

腰に下げている小さな鞄から、止血と炎症を止める効果を持つ薬草を取り出して

サフィさんの服の、患部に当たる部分をそっと脱がし

ある程度止血を終えたところで、その薬草を貼り付け、服の布を巻くように縛った。


その度にいつも、私にも聖属性の力があればと思うが⋯

属性というのは、後から変わることもなければ

癒しの魔法など、覚えることも出来ない。

誰かの怪我を治療する度に、無能な自分に、心底腹が立った。

聖職者(サケルドース)は、そんな気も知らず、手のひらと自身の魔力一つで、簡単に傷など治してしまえるのだから⋯


『よし⋯』


(応急処置はこれで大丈夫かな⋯

問題は、あの黒い兵なんだけど⋯)


処置をしたサフィさんと、斬られて血の海に浮かぶ子ども達を横目に

私はまた溢れそうになる涙を抑えて、立ち上がった。

とりあえずサフィさんだけでも、安全な場所に運ばないと⋯

けれど、兵が徘徊するこの村で一体どうしたら⋯



ザッ⋯、ザッ⋯、


『⋯っ!』


一人の兵が、こちらに向かってきた。

サフィさんを助ける為と、考え無しに動き過ぎたか

兵は私達を見て、真っ直ぐ向かってくる。

私はサフィさんの身体に覆い被さる様な体勢をとった。

こんなサフィさんより小さい身体、意味など無いだろうが、それでも⋯


(何も無いよりマシだ⋯)


私は二度目の死の覚悟をした。

サフィさんにしがみつくように、サフィさんの服を握る手に力が入る。

⋯サフィさんだけでも、助からないだろうか⋯

どうか、どうか⋯誰かを護る力を⋯!


そう、必死に祈りながら私はまた目を瞑った。



『⋯っ』


それでもまた、私を痛みが襲うことなど無かった。


『あ、れ⋯?』


黒い兵が剣を振り下ろし、既に動くことは無い子ども達を再度斬撃が襲う

ビシャッ、と跳ねた血が私とサフィさんにまで飛び散り

そこで黒い兵は、また立ち去る。


(わざと外した⋯?)


それにしては、何だか違和感を覚える。

先程見逃されたとして、二度も同じ事など起こるだろうか

それに剣は私達を捉えてはいなかった様に見えたし、そこにある何かを探る様に剣を振り下ろした気がした。


(もしかして⋯黒い兵は私が見えていない?)


そうしたら、子ども達とサフィさんが襲われた事にも辻褄が合う

そして、そんな私が今サフィさんに触れているから

その不思議な効果が、サフィさんにも発動しているのかも知れない。


『⋯よし』


二度も死を覚悟した身だ。

このまま助けを待つか、兵が去るのを待つのが適作なのかも知れないが

この効果がいつ無くなってしまうか分からないし

バレて襲われるより、一か八かで脱出を試みた方が良いだろう。


あまり今の状態のサフィさんを動かしてはならないが、私はどうにかサフィさんの上半身を起こし

おぶる体勢を作る。

完全に脱力した、自身より体重がある人を動かす事は、とても難しい事なのだが

人間より更に重い鹿や猪の解体方法を兄様に教わった時に、その動かし方について学び、行った事がある

そんな動物に比べれば、サフィさんは動かしやすく持ち上げやすいものだ。


サフィさんを完全におぶる体勢を作れたら、足に力を入れて、何とか立ち上がる。

そして、守れなかった子ども達に何回も心の中で謝りながら、私は村の出口を目指し歩き始めた。


『⋯⋯』


途中、黒い兵とすれ違うことも何回かあったが

やはり私達には目もくれず、まるで何もいないかの様な反応で、気付かれる事はなかった。

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