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呪われた貴方を佑ける方法  作者: 槻 みことӪ
第一章 アウラ島脱出編
4/25

兄の予感

時は少し遡って、謝肉祭(カルネヴァーレ)前日の夜のこと____。




「⋯⋯」


クラース族の族長であるアゲットは、一人深い森の奥で空を見上げていた。


(⋯嫌な予感がする

明日の謝肉祭(カルネヴァーレ)の為の狩り、いつもならこんな憂いなど感じることは無いのに

どうして、こんなにも胸がざわつくんだろうか

俺は村の巫女と違って、予見の力など無いはずなのに⋯)


すっかり夜も深くなり、そろそろ遠征用天幕で皆と休もうとしていた頃の出来事だった。

よく晴れて、空気も澄むこの時期では、夏よりも綺麗に夜空が見えた。

いつもは淡く白と水色が混ざったような、見事な星雲が見られるが

今晩はどうも、赤みを帯びている様に見える。


「おう、アゲット!

こんな所でどうしたんだ?

もう他の奴らは休む準備を始めてるぞ〜」


俺に話しかけてきたのは、俺と同じくクラース族の戦士であり

戦士団では二番目の実力を持つ、俺の右腕の様な存在でもあるタイズだった。


「⋯タイズか、いや何だか胸騒ぎがするんだ」

「胸騒ぎ? 明日の今頃は謝肉祭(カルネヴァーレ)でパ〜っと盛り上がってる頃だぜ?

変にいろいろ考えず今は休んで、残って準備してる奴らの為にも

立派な獲物を連れ帰ってやろうぜ!」


そう言ってタイズが親指で、今回の狩りの獲物の山を自慢げに指した。

今年も豊作で、冬眠から目覚めた猪や熊を襲撃し、既に充分すぎる程の成果を得ることが出来ており

明日の朝には移動を開始し、村に戻る予定だ。


いつもの狩りより多い荷物を持ち、休憩も挟みながらとなれば、日が昇る頃に出立すれば、村には完全な夜が来る前に、戻れるだろう。



⋯だが、それでは遅い気がする。


「タイズ、すまない」

「え? お、おいアゲット!」


俺は皆が休む天幕まで走り⋯


「皆、起きてくれ!」


そう天幕に向かって呼びかけた。

少しの時間も経たずに、クラースの戦士団が天幕から疲れた顔で出てきて、俺を不思議そうな顔で見つめる。


「おいおいアゲット⋯どうしたんだよ」

「夜明けに出発なんだから、もう休まないと」


皆、口を揃えてそう言うのは分かっていたし、言いたいこともすごくよく分かる。


(分かるのだが⋯)


「おいアゲット!

さっきからどうしたんだよ、お前らしくもない」

「タイズ、皆、今から出発だ

急いで村に戻るぞ」


俺のその一言に、空気がどよめいた。

それもそのはず、今日だって夜明けから夜までずっと狩りをしていたんだ

それに村を離れて二日ほど、丸一日以上村を離れることも、連日狩りに励むことも、この謝肉祭の時以外は無ければ

今回初めて参加する、若い戦士も何人かいる。


そして何より、この冷え込みだ。

万一帝国軍と出くわさない為にも、火の扱いは最低限にしており、居場所を示さないことと、夜に目を慣らしておく必要もある為

毛布と人肌以外では暖も取れない環境だ。


「⋯すまない、皆」

「アゲット⋯」


いつもと様子が違う俺に対して、強く反発する者はいなかった。

族長であり、戦士団のリーダーであることが理由ではあると思うが。


「あたしは賛成だ!すぐ出発しよう!

アゲットがそこまで言うんなら、何かあるんだろ!

何もなくっても良いさ、それに越したことは無いしな!」

「スフェン⋯」


ここで真っ先に賛成の意を示したのは、同じく戦士団に属しているスフェンだった。

スフェンは女にして、戦士団の中でもずば抜けて高い実力を持っており、リーダーの座を求めては俺に頻繁に闘いを挑んでくる、ライバルの様な存在だ。

野性味溢れていて落ち着きが無く、普段は手を焼かされることの方が多いのだが⋯。


「そうだな、アゲット

俺も賛成する、リーダーの意見は俺の意見だ!」


続いてタイズも俺に賛成し、まだ状況を読み込めていない戦士団に指示を出した。


「さあ皆、アゲットに続くぞ!」

「お、おう、分かった!」


戦士達は立ち上がり、早急に準備を始める。


「よし天幕を片付けるぞ、そっちを持ってくれ!」

「毛布はこっちに預けてくれ、小さく畳んでこの皮袋に入れるぞ!」


疲れているのに、テキパキと片付け始める姿を見て

申し訳なさとありがたさを感じた。


「ほら、アゲットしっかりしろよ」


俺より歳上であるタイズが、俺の肩を軽く押しながら笑いかけた。

俺も笑い返して、改めてタイズとスフェンに礼を言うと

獲物を運びやすくする為に、縄で縛り始める。


「⋯はあ、メノン⋯

兄ちゃんは、お前が心配だ⋯」

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