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呪われた貴方を佑ける方法  作者: 槻 みことӪ
第一章 アウラ島脱出編
23/25

食べたくない

鳴き声とは違う、叫び声の様な音が海の底から聞こえて、船内の壁をキシキシと鳴らした。


船内と外を行き来していたリベラル軍の兵士さんに話を聞くと

クラーケンという海の魔物が出現したのだそう。

先程の大きな衝撃と揺れに続き、きっと船上では戦いが繰り広げられているのだろう。




____ドンッ⋯⋯!



また小さな衝撃音や、荒々しい人の声が飛び交っている。

私は廊下で、この音や振動でも起きず

爆睡しているスフェンの隣に座り、闘いの終わりを静かに待っていた。


(クラーケンって、初めて聞くけれど

どんな魔物なんだろう⋯)


海の上という、クラース族にとっては慣れぬ環境と

見たことも無い生物への恐怖心

村の人は肩を抱き、身を寄せあいながら

ただただ収まるのを待つ。


『⋯スフェン』


起こした方が良いのだろうか

でも今日一日、先頭を警備しながら歩いていたし

何だか気が引ける。

スフェンは警戒しなければいけない場所なら、少しの物音でも起きるが

逆に休みと、休む場所をきちんと与えると、しっかり熟睡する上

起こすと機嫌が悪くなる。


今は状況が状況だけれど⋯

そんな二つの理由があって、起こす気にはなれなかった。


(⋯大丈夫

兄様とタイズさん、それにリルントさんと

副団長のアモルさんもいるものね)


そう思いながら壁に寄りかかり、膝を抱えていると

半刻も経たぬ内に、甲板へと出られる扉が開く。


「メノン!

メノンはいるか?」

『兄様?』


兄様の声に、私は立ち上がると

こっちへ歩いて来る兄様が見えた。


「皆も無事な様だな、良かった」

「アゲット、今の音は何だったんだい?」

「クラーケンという、巨大な蛸に似た魔物の襲撃に遭ったが

先程撃退したから大丈夫だ」


兄様に駆け寄る一人のクラース族の老婦

兄様のその言葉で、船内は安堵に包まれた。


「それで、その撃退したクラーケンの足を手に入れたんだ

それをメノンに調理して貰おうと思ったんだが⋯」

『え! いくら蛸に似ていても

食べれそうなものなの?』

「蛸に比べると、毒々しく見えるが

活きが良くて美味そうだった!

前に猪に似た魔物が出た時、そいつも美味かったじゃないか」

『確かにそうなんだけど⋯』


私が悩む姿を見て、兄様はいいからいいからと

私の腕をグイグイ引っ張る。


「まあまずは獲物を見てくれ

もう外は安全だし、出ても大丈夫だぞ」

『え、ちょっと

兄様⋯!』









船上に出ると、真っ先にタイズさんと目が合った。

奥にはリルントさんと、あの人が副団長のアモルさん⋯だろうか

ちゃんと姿を見たのは初めてで自信はないが

その二人もいた。


『撃退お疲れ様です


それで、その

私に調理して欲しいクラーケンの足って⋯?』


私の問い掛けに、リルントさんはスッと目を逸らした。

タイズさんも、何だか居心地の悪そうな表情だ。


『⋯?』

「アゲット、クラーケンの足がまだ生きていたのは覚えているだろう

実はその足が激しく暴れだしてな

俺達も全力で捕まえようとしたんだが⋯

海の中に逃げてしまったんだ。」

「なに!

足だけになってもそんなに素早く動き回るのか!」

『待って、その足動くの?』


どこから突っ込めば良いのか⋯

ちょっと想像もつかない状況に、私は一人でに走り出す蛸の足をなんとか思い浮かべてみる。

リルントさん達が、走る蛸の足と鬼ごっこしたということ?


「それは残ね____

ん!?」


兄様は急に振り向き、船の後方を見る。

階段があり、甲板より高い造りになっている場所を見上げ

じっと見つめた。


「生き物の気配だ!」


そう言いながら、走って行く兄様

すると、何故か慌てるリルントさん


「お、おいっ

待てアゲット!」


リルントさんも、そのまま兄様を追い掛ける様に走って行ってしまった。

一体、何があったんだろう⋯


「俺達には分からないが、リベラル軍には

蛸を食べる習慣が無いらしい

だから抵抗があるんだと、さっき兵士と話した時に聞いたんだ」

『なるほど、そういうことだったんですね

あんなに美味しいのに⋯』


タイズさんは腕を組んで、船の柱にもたれ

仕方ないよな、と笑いながら言う。

確かに、見た目から食べたことない人は、抵抗感を覚えるかも知れない。


『だからこそ、美味しく調理して

振る舞いたいですけどね』

「ははっ、やっぱメノンはアゲットの妹だな〜」

「おーい! 足いたぞ!

なんか樽に押し込められていたんだが捕まえた!」


その声に、兄様の方を向くと

衝撃的なサイズの蛸の足を抱えて持ってきた。

縄で十本ほど纏めてあり、兄様の腕じゃ回りきらない程の太さと

お顔も見えなくなるくらいの大きさ


そして、確かにその足は

まだ微かに動いていた。


『す、凄い⋯!』


そんな兄様の後ろから、腰に手を当てて

ばつが悪そうな顔をしたリルントさんが、観念した様に歩いてきた。


「⋯メノン

女には衝撃的な光景だろう

無理して、調理などしなくても⋯」

『いいえ!

俄然腕が鳴ります

調理出来る場所はこの船にあるのですか?』

「⋯⋯」


リルントさんは私にも驚いた顔をして

眉間を指で抑えた。


「⋯調理場は⋯」


小さな声でごもごもと何かを言っている

けど、上手く聞き取れない。


『あ、あの

リルントさん、上手く聞こえな⋯


わっ!』

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