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呪われた貴方を佑ける方法  作者: 槻 みことӪ
第一章 アウラ島脱出編
22/25

クラーケン

「アモル殿⋯?」


俺がリルント殿の横を見ると

俺より背が低く、年齢も低そうな男が立っている。

何回か見かけてはいたが、近くでしっかりと見たのは初めてかもしれない。

副団長とは聞いていたが、威厳も覇気もなく

無口で、何を考えているかは分からないとは思っていたが⋯


「お前、大した奴だったんだな!」

「⋯⋯」


そう言うと、愛想無く顔を背けた。


「あの合流地点での気配と姿を隠す魔法も、アモルの魔法だ」

「え⋯」


あれもだったのか⋯

頭でも撫でてやろうと、伸ばした手が引っ込む。

大陸の魔道士っていうのは、本当に想像もつかない魔法を使うんだな⋯


「防御魔法に長けているということは、

聖属性の使い手なのか?」

「しっ⋯

アゲット、そろそろ襲撃してくるぞ」


リルント殿は、そっと剣を抜きながら

海の方を見た。


幾つか海から伸びてきた、まるで蛸の足の様なものが

確認するかのように、ペタペタと防御魔法に触れている。

防御魔法が張られているといっても、一見何も無い様に見えるが

触れられた部分だけ、透き通った六角形の外殻の様なものが見えた。


「あれが、防御魔法か」

「⋯防御魔法・鎧(ロリカ)

「え?」


アモル殿が小さくそう呟く

それを補足するように、リルント殿が


「通常の防御魔法は、正面にのみその外殻を出現させるが

防御魔法・鎧は対象を中心として

球体状にその外殻を張り巡らせる事が出来るというわけだ」


そして、勢いよくその場で床を蹴り上げて飛び上がると

足の一本に、電撃を纏わせた斬撃を放った。


ズバッと切れた足が、防御魔法・鎧をすり抜け

船上へと落ちてくる。

他にも伸びてきていた他の足が、急に激しくくねりだし

痛みに悶える様に、防御魔法・鎧を叩き付け始める。


「俺達も行くぞ、タイズ!」

「ああ!

相手は水属性のようだから、俺の属性とは相性が良いしな!」


タイズはそう言って、抜いた大剣を鉱石へと変化させる

そしてそのまま、また足の一つを切り落とした。


俺も剣に力を込め、足の一つを斬り裂くと

隣でリルント殿が、更に二本落としていた。


「あいつ、強いな⋯

負けてられん!」


俺は近くに置いてあった樽を踏み台に蹴り上がり、反対側の柱を蹴る

そのまま空中へと飛び上がると、帆まで到達しそうな

一際大きな足へと斬りかかった。


「くっ、さすがに硬いな⋯」


一度剣が弾かれ、俺はマストの登る為の取っ手を掴み

体勢を立て直す。


「っ!」


高い位置へと上がった事で

海の中に、ギラギラとこちらを睨む

二つの鈍い光が見えた。

本当にバカでかい魔物の様だ。


(俺の剣じゃ相性が悪いが⋯

ただの攻撃では、三手はかかりそうだ)


そう思いながら剣を見ると、剣にはめられた

紅い魔石がキラッと光る。


「⋯ふぅ、よし⋯

化け物、これでも喰らえ!!」


もう一度取っ手を蹴って、剣を握る手に今一度力を込め

先程攻撃した足へと斬り掛かる


「うぉおおおっ!」


すると剣の刃が入った少しの断面から爆発が起こり、クラーケンという魔物(モンスター)の足は

斬られる⋯というより、爆ぜて千切れる様に

ぶつッ!と音を立てて、ニ断された。


そのまま、甲板へと着地して

続けてもう一本の足を落とせば、いつの間にか

襲ってくる足の気配は無くなっていた。


「全部やったのか!」


俺がそう言うと、斬られているのに

まだ少し動いている足が、数えると十本ほどあった。

そして、俺が斬った一際太くてでかい足と

同じ足が落ちているのを見て対の足である事が分かる。


「造りはまるで蛸だな」

「ああ、そうだな」


大剣を納めながら歩いてくるタイズと言葉を交わした。


「アゲットは火属性を極めているんだな

爆破の力まで使えるとは⋯

リベラル城にも一人しかいないぞ」



⋯⋯ギクッ

急にリルント殿に話しかけられ、肩が跳ねる。


「あ、ああ⋯

まあな⋯?」

「⋯ん?」


俺の返事を怪しむ様に、リルント殿は顔を顰めた。


「そ、それよりリルント殿も

雷属性まで会得しているとは、風属性を極めた証じゃないか」


横に落ちている、リルント殿に斬られたクラーケンの足は

断面が焦げて、ぷすぷすと小さな煙が出ていた。


「風属性なら、あの灯台の高さから降りて

無傷なのも納得だ」


風を発生させて、落ちる衝撃を緩和できるのも

また風属性の特徴ともいえる。

魔力操作が繊細な魔道士なら、空も飛べるくらいだ。


「⋯当然だ。」

「ところで、このクラーケンの足はどうするんだ?

食うのか?

まだ動いてて鮮度も良いし、でかくて美味そうだ!」

「はあ? あんなぬるぬるとしたものをお前達は食うのか?」

「当たり前だろ? たまに会う行商人から買ったり

他の種族との物々交換でしか手に入れられない、貴重な食材だ!」


俺が胸を張ってそう言うと、他のリベラル軍も

青ざめた顔をしていた。


「俺の妹に調理なんてさせてみろ!

美味くて頬が落ちるぞ?」

「遠慮しておく

船の上で体調を崩すわけにはいかん。」

「何だ失礼な!

妹の腕が悪いと言いたいのか!」

「誰もそんなことは言ってないだろう!」


何故リルント殿はそこまで嫌がるのか

きっと食えば分かるはず⋯。


「よし、こうしちゃいられない!

妹や船内にいる奴らの安全確認がてら

呼んできてやる!」


俺はそう言いながら、その場を後にした。




「⋯⋯クラース族はこんなゲテモノを食べるのか⋯


調理される前に海に捨ててやりたいところだが⋯


お前達、足がまだ動いている

何かに吸い付いたり、絡み付く前に

一先ず縄か何かで縛ってから隠しておけ!


奴に見つからないようにな!」

「「「はっ!」」」

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