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呪われた貴方を佑ける方法  作者: 槻 みことӪ
第一章 アウラ島脱出編
21/25

海の魔物

「妹に会いたい⋯」

「それもう何回目だよ⋯」


出港した時には、まだ空は橙色で

東に向かって、空色から紺色へと

綺麗なグラデーションになっていたが⋯

もうすっかり日が暮れ、アーク港も見えなくなり

完全な大海原の上にいた。


「妹の顔が見たい⋯」

「はいはい」


さすがは海の上、陸地に比べると随分と風が強く

肌寒さを感じる。

リベラル軍と戦士団で、それぞれ交代ごうたいで

見張りを立ててはいるが⋯

こんな何も無い大海原で、何かの襲撃を受ける事などあるのだろうか?


「はあ⋯気持ち悪い」

「はいは⋯

え?」

「陸の上じゃないこの不安定さ

心底落ち着かん⋯

おえ⋯」

「船酔いか!

そういえば湖に小船を浮かべた時も酔っていたな!」


タイズは、火を起こしたいのかと思うくらいの勢いで

俺の背中を擦る。


「うわっ、あっつ!

そんな荒治療じゃ、治るものも治らんわ!」


俺はタイズは払い除けて、柵に寄り掛かり

夜空を見上げながら、最愛の妹の顔を思い浮かべた。


「メノンに会えば、治るんだが⋯」

『わ、私がどうかしたの?』

「え⋯」


そ、その声は我が最愛の妹、メノン!?


「うおー!メノンー!

兄ちゃんは会いたかった!

港襲撃から姿は見れても、全然話せなくて⋯」


きゅるん⋯とした、鮮やかで輝いている

まるで翡翠をはめた様な瞳が、俺を不思議そうに見つめる。

サラサラとした髪は、花の様な良い匂いがするし

何だか重かった身体も、気持ち悪かった気分も

全て嘘みたいになくなってしまった。


『に、兄様

苦しい⋯』

「あ、すまん、身体が勝手に!」


そして、自身でも気付かぬ内に

腕の中に閉じ込めてしまっていた様だ。


「やれやれ⋯

兄バカっぷりは相変わらずだな」


タイズはそう言いながら、メノンの頭を撫でる

男で許せるのはこいつくらいで、他の奴は髪すらも触れることは許さない。


「他の奴から聞いたぞ

部屋を綺麗に割り振ってくれたんだろう


実は体調が優れなくて、けれど休みたいと言い出せなかったのに

メノンはすぐ気付いて、布団で休ませてくれたとか


喉が渇いていたら水を持ってきてくれたり

泣き止まない赤子のあやしまで⋯


何かと聞いているぞ」

『え!

そんな大層なことじゃ⋯』


そう言いながらも、少し照れてしまっている妹を見て

急に心拍数が上がる感覚がする。


「あー、妹が尊すぎて

心臓が口から飛び出てしまいそうだ」

『また変なこと言う⋯』

「外は寒いだろう、船内で休むと良い

まだ夜は始まったばかりだ」

『あ、うん⋯

ちょっと体調が優れない人が一人いるの

だから、夜通し様子を見ていようと思って』

「ぐっ!!!」


また何か、目に見えないダメージが俺を襲う

胸を抑えながら、ふらふらする俺をタイズは無視して話を続けた。


「その体調が優れない人ってのは?」

『サフィさんです、村の襲撃の時に

例の黒い兵に斬られた⋯』

聖職者(サケルドース)が治癒を施したと聞いたが」

『傷はもう塞がっているんですけど、何だかずっと

魘されている様に苦しそうで』

「また診てもらう事は出来なさそうなのか」

『はい、聖職者の方も出来ることはしたと

シャロア様はお疲れのご様子で、まだお目通り叶いません』

「そうか⋯それは心配だな

おいアゲット、見張りの交代の時間になったら

俺達もサフィさんを見に行ってみよう」


タイズが俺にそう言うが

俺は、とある気配を察知して海の方を見た。


「お、おい

アゲット?」

『⋯⋯?

何の気配⋯』




____ドンッッッ!





『きゃっ!』

「メノン!」


急に船底から響く様な衝撃に

ふらつくメノンを抱え、周囲を見渡す。


「な、何だ⋯

魔物(モンスター)か!?」


近くにいたリベラル軍が

船の先頭へ向かって走っていくのが見えた。


「⋯メノン、外は危ないから

一度船内に行くんだ

村の皆を頼んだぞ」

『う、うん!


兄様、アゲットさん

お気を付けて⋯!』


メノンは頷き、船内へと向かう

扉が閉まるまで確認すると、俺達もさっきの兵士が走って行った方へと向かった。




「リルント殿!」


船の先端、操作をする為の舵があり

その横にリルント殿の後ろ姿が見える。


「さっきの衝撃は?

こんな海でも襲ってくる魔物がいるのか」

「海の魔物は、陸の魔物に比べると

数が少ない分、とてつもなくでかいんだ」

「で、でかい⋯

それは、家よりでかいのか」

「お前達が暮らしていた家なんて、奴の頭も入らないだろうな」

「なんだと!?

襲われたらひとたまりもないな

それにこんな、海の真上で⋯」


俺がそう言うと、リルント殿は

そっとこちらに振り向いた。


「その魔物はクラーケンと呼ばれている

巨大な軟体生物だ

恐らく、この船くらいはあるだろう


本来、複数ある足を船に巻き付けて

海へと引きずりこむが⋯」

「お、俺達死んだのか⋯」

「こら、最後まで聞け


この船には防御魔法が施されている

船底から、あの帆が付いている柱まで球体状に。


だから奴は、防御魔法ごと引きずり込む為に

足をあの柱まで伸ばしてくるだろう

そこを攻撃すれば良い


何回か攻撃すれば、すぐ諦めて帰っていくさ

ただ、足に捕まらないように。


リベラル軍で、何人か引きずり込まれた者もいる。」


引きずり込まれた者⋯

何の問題も無いと、涼しい顔でそう言うが

内容は恐ろしいものだった。


「お、俺は泳げないぞ⋯」

「安心しろ

まだこんなに大きな防御魔法を扱える様になる前の話だ

奴の足一本、侵入など出来ないさ」

「ということは、防御魔法内にいる限り

こちらからの攻撃も出来ないのではないか」

「我らがリベルム軍の魔道士をなめるなよ

外側からの攻撃を防ぎ、内側からの攻撃は通す防御魔法くらい

既に扱える様になっている。」

「それは、一体誰が⋯」


「リベラル軍の近衛騎士団副団長、アモルだ。」

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