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呪われた貴方を佑ける方法  作者: 槻 みことӪ
第一章 アウラ島脱出編
20/25

船室

兄様達が考案した囮作戦のお陰で

私達はゆっくりと、比較的安全に船に乗ることが出来た。

今まで遠目でしか見た事がないくらいに大きな船に乗り込む

実際に乗ると、想像以上の大きさに驚き

帆が付いている柱を、思わず見上げた。


楽しそうな子ども達の声

こんな時でも落ち着きを崩さなかったお年寄りの方も、さすがにこの規模の船には驚いた様子だった。

それに、いつも感じないこの不安定な感覚

地面に立っている時とは違って、ずっと微かに揺れている事に、水の上にいる事は分かってはいても

違和感があるのだった。


その後、急な雷の音にはとてもビックリしたし

腰を抜かしてしまった人もいたけれど

リルントさん達も無事合流して、リベラル軍の兵士さんに

船室を案内して貰うことに。


案内をするように、とリルントさんに指名されたのは、

あの天幕で一緒に食器を片付けた兵士さんだった。


一つ一つの部屋から、海が見えるようになっていた。

これは硝子というのだっけ、風や水が侵入しないのに

透明で向こう側が見えるという優れものだ。

そんな丸い窓と、二段になったベッドが

一つの部屋に二台用意されている。


確かに船室の数よりも、私達の人数の方が多い

なるべく、身体が弱い者を優先的に使わせてあげる必要があるみたい。


『あの、兵士さん』

「あ、自分はラルドといいます」

『ではラルドさん

一つお願いが⋯』

「そこの兵士、一番綺麗な部屋はどこですか?」


私が声を掛けるのと同時に、一人の聖職者(サケルドース)がラルドさんに声を掛ける。

ラルドさんは、廊下の一番奥⋯

他とは扉の造りが違う、一つの部屋を指差した。


「あちらです

リルント団長のお部屋ですが、他のお部屋同様

解放していますよ」

「ありがとうございます

ではあのお部屋へ行きましょう、シャロア様」

「ええ」


三人の聖職者に連れられて、 シャロア様は

先に部屋へと入り、扉がそっと閉められた。


「え、あの⋯」


ラルドさんは何やら困った顔で、その部屋を見て

申し訳なさそうに、私の顔も見た。


『ん?

あ、すみません

話が途中でしたよね、一人重症の女性がいるんです

先に休ませてあげたいのですが⋯』

「そしたら、この部屋でしたら東向きなので

朝日も綺麗に差しますし、厨房にも近いので

看病がしやすいのでは?」

『なるほど⋯

そうですね、ありがとうございます!』


私はラルドさんに頭を下げて、サフィさんをずっと介抱しながら歩いてくれた

サフィさんの旦那さんで戦士団の一人でもあるルビさんと、サフィさんの友人であるイアさんを部屋に招く


『この部屋を優先的に使わせて貰いましょう

ずっと介抱されていましたし、明日パトリア大陸に到着するまで使ってください』

「ああ、ありがとうメノン!」

「サフィも、聖職者の人に治癒魔法を施して貰ったのに

ずっと苦しそうだったの

横に出来る場所があって、本当に良かったわ」


イアさんはそう言って、サフィさんの汗を手拭いでそっと拭いた。

確かに何だか、ちょっと様子がおかしいみたい。


『そうですね、後でシャロア様にも診ていただきましょう

私は他の方の部屋の相談もしてきます

また後で来ますね!』


そう言って、部屋を後にした。


それからは高齢者の方や、子どもがいる方を優先的に部屋に

体力に自信があると申し出てくれた女性や、戦士団を引退したばかりの人は

一先ず廊下に毛布を広げ、休息を取る事になった。

あとは身内や仲の良い人と、上手くサイクルを回してくれるだろう。


(問題は、サフィさん)


どうしてあんなに苦しそうなままなのだろうか

私は皆が休息の時間に入れたことを確認して

一番奥の部屋の戸を叩こうとすると、その手を誰かが掴む。


「すみません、メノン様

シャロア様はひどくお疲れですので

また後にしていただけませんか?」


そう言うのは、聖職者の一人であるチャイさん

一番シャロア様に献身的に接している、私より歳はまだ若い男性だ


『チャイさん⋯

分かりました、ではシャロア様にお伝えいただけますか?

サフィさんが少し容態がおかしいんです

あと、今動ける他の聖職者の方は⋯』

「サフィさんの状態は、私達でも分かりません。

傷はもう殆ど塞がっていますが

まるで夢見が悪そうな、そんな表情のまま意識に回復はありません。」

『え⋯

そうなのですね⋯』


チャイさんは少し申し訳なさそうに目を伏せて

私に小さく頭を下げた。

そしてシャロア様がいる部屋の隣の部屋へと入って行くのだった。


『聖職者の人でも治せないものが、あるんだ⋯』

「め、メノン様

今の聖職者の人、この部屋に入りました?」

『わ、ラルドさん!』


閉まった部屋の前で、肩が落ちる気持ちでいると

私の後ろから慌て顔のラルドさんが現れる。


『は、はい

この部屋って何の部屋なんですか?』

「これはアモル副団長のお部屋ですよ

リルント団長の部屋一つ、聖職者の方々が使うかと思ったら

巫女様が一人で団長のお部屋をお使いになって、他の聖職者の方は副団長のお部屋⋯」

『そ、それがどうしたのですか』

「このお部屋はですね、リルント団長が

メノン様と、アゲット様に手配されたんですよ」

『え、リルントさんが?』


えっと⋯それは一体何故?


『わ、私は元気ですから

部屋なんて大丈夫ですよ!』

「何を仰ってるんですか

それに団長の部屋は広いんです

部屋も使えず、今廊下にいる他の皆さんも

まとめてお使いいただけるくらいですよ」

『そ、そんなに広いんですね⋯

十人は使えてしまう部屋を、私と兄様二人で使うのは勿体ないのでは⋯』

「それを巫女様一人で、今使われているのですよ」

『それが何か問題なのですか?』


ラルドさんが慌てる理由はあまりよく分からないけれど

何か間違ったことなどあるのだろうか?


「クラース族の価値観は

我々リベラル兵とは異なるんだな」

「だ、団長!

申し訳ありません、お部屋の手配に間違いが⋯」

「良い、気にするな

何となくこうなる気はしていた

ラルド、次の仕事だ

他の兵士にも配って来い。」


急に現れたリルントさんは

何かが入った袋を、ラルドさんに渡した。

ラルドさんは、それを重そうに受け取ると

私とリルントさんに、何回も頭を下げながら甲板の方へと向かって行くのだった。


『あ⋯

リルントさん、いろいろと手厚くありがとうございます


では、私もちょっと急ぎ向かいたい方がいますので』


私もそう言って、リルントさんに頭を下げ

サフィさんの元へと向かおうとする。


「⋯本来、こういうことはあってはならない」

『え⋯?』


リルントさんに背中を向けると、リルントさんは小さくそう言った。


『えっと⋯

それはどういう事ですか?』

「その頭飾りは、ただの飾りなのか?」


私は振り向き、リルントさんを見ると

不快そうな顔で、私の頭を指差した。

これは族長の一族である証で、兄様も同じく物を付けている。


父様⋯前族長の話によると、巨人の掘り起こした鉄を

竜の炎で溶かし、妖精が持ってきた魔石を用いて

人間が細工して作った⋯といわれている。

おとぎ話と混ぜ合わせて作ったただのお話

子どもの頃は騙されて、はしゃいでいたけれど⋯


『とても名誉あるものには違いないですが⋯

この頭飾りがどうかしたのですか?』


そう返し、頭飾りに触れながらリルントさんを見ると

リルントさんは、そっと目を閉じて小さく

そしてゆっくりと息を吐くと


「いいや、何でもない

俺も気にしすぎたかも知れない」


そう言って、甲板へと向かって行ったのだった。


『⋯何だったんだろう』

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