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呪われた貴方を佑ける方法  作者: 槻 みことӪ
第一章 アウラ島脱出編
19/25

出港

「あいつは⋯!

ブラッパル⋯」

「お、おいブラッパルって⋯

何で奴がここに!?」


タイズが驚くのも無理はない。


____ブラッパル⋯

剃り残した髭と、くたびれた顔

皺の多いマントから、だらしなさをも感じさせる

一見弱そうな中年じじいに見えるが

その正体は、イーオン帝国軍の皇帝直属部隊、その総司令官だ。

あこ赤黒い髪は、返り血によって染まった色とも言われ

イーオン帝国軍では負け無しの、最強軍人。


俺も、顔を合わせるのは初めてでは無い

己を褒めるわけではないが、実力者ほど

奴の隠した牙に気付き、本能的に恐怖をも感じるくらいだ。


そんな奴が、何故ここに⋯

そしてこのままでは、リルント殿が危ないのでは⋯!


すぐに助けに行きたいが、船は既に港門を半分は出ている

今から単身で船を降りても、イーオン帝国軍に簡単に包囲されるだけだ。


「くそっ!

リルント殿は無事なのか!」


何を話しているのか、二人の会話までは聞こえない

だが向かい合って、何かを話しているのは分かる。


「お、おいアゲット

空を見てみろ!」

「空⋯?」


そんな俺の気持ちを知ってか知らずか

タイズは空を指差した。


「なんだ? あいつらの上だけ真っ黒だ⋯」


スフェンも、そう言いながら空を見上げている

つられるように俺も見上げると、ブラッパルと

リルント殿とノゼの真上に

真っ黒な暗雲が、渦を巻いていた。


何故、あそこだけ⋯?

そう思った瞬間____



ドオォオオォオオオオンッッッ!!!




「うわっ!!」


激しい閃光と、空気を破く様な激しい雷鳴

そして、真っ黒に焦げた灯台が見えた。


「か、雷か⋯!?」

「俺の魔法だ。」


驚く俺達を他所に

大きく船を揺らしながら、二人が船へと着地していた。


「あ、あの高さから降りたのか!

というか今の雷は⋯

てかブラッパルはどうなったんだ!」

「アゲット、まずは落ち着け

作戦は成功だ。

全員無事に船に乗り、アウラ島を出発することが出来た。」


リルント殿は相変わらず落ち着いた声でそう言う


「そ、そうだな!

クラース族よ、俺達は無事に出港する事が出来たぞ!」


その俺の一言に、皆肩を抱き合いながら

腕を振り上げ、大声をあげながら喜ぶ

子ども達も、船だ船だと喜び走り回り

疲れたか、やっとの安堵にその場で座り込む者までいた。


「後で、リベラル軍に船室を案内させる


遠征用の船故、休憩の為の部屋も多少は揃っているがクラース族全員分には及ばない。


パトリア大陸には明日の昼頃に着くはずだ

かなり時間がかかるので、交代ごうたいでの利用になるだろう

そこは話し合って使ってくれ、どの部屋も構わず使ってくれてかまわない。


⋯早速、案内を頼む」

「は、はい!」


そう言って指名されたのは、新人だろうか

とても若く、妹と同い歳くらいの男が

少し緊張しながらも、優しい声で

こっちです、と船内に行ける扉へ皆を案内し始める。


俺はその姿を見守りつつ

リルント殿へと向き合った。


「⋯で、さっきブラッパルがいただろう

一体奴と何を話していたんだ」

「ほう、お前もブラッパルとは面識があったのか


まあ、お前の目的は何だとか

そういう類の話だな


奴に剣を抜かせれば、俺でも勝てまい

雷を落として威嚇し、その隙に船に降りただけだ。」

「然しあそこは灯台だったぞ

木の高さとはわけが違う」

「俺は風属性を有している

飛び降りる時の衝撃の緩和くらい出来るさ

ノゼも一緒に下ろしただけだ」

「へえ、風属性は便利だな」


攻撃以外の使い方があるのかと、またも驚く

それに、雷を落とす⋯って

剣士には魔法だけで打ち出せる程の魔力は無いはずだが

こいつは魔戦士だったのか?

それに雷までも操るには、風属性の魔法を完璧に会得する必要がある。


「⋯⋯」


俺とそう年齢も変わらない様に見えて

実はとんでもない奴なのかもしれない⋯










「ブラッパル総司令官

奴らを逃がしても良かったのですか?」

「ああ⋯

リベラル軍の目的は分からなかったが

まああんなちっぽけなクラース族が

村からここまで逃げて来たんだぜ?


その頑張に免じて見逃してやるさ


⋯次会った時は、全員殺さないといけないけどよ」

「⋯⋯」

「あーあ、めんどくせぇ

最近上からの扱いが雑で疲れが溜まっててよ〜


急に本国に呼び出されたかと思えば

アウラ島を制圧してこい、だぜ

簡単に言うけどよー


それに、例のあの黒い軍勢の

テストだとかなんだとか⋯

奴ら喋らねぇし、指示には従順で逆に怖いのよ


いつか、イーオン帝国軍の軍勢は

生きた人間じゃなくて、アンデッドで構成されるんじゃねぇかと不安だわな」

「は、はあ⋯

確かに最近数が増え、表にも出てくる事が増えましたね」

「上が何を考えているか分からないが

ま、仕事だからな⋯


本音を言えば、すぐにパトリア大陸へと追って

アゲットの小僧やメノンの嬢ちゃんとも久々に話したかったし

リベラル軍のその目的とやらを暴きたいところだが⋯


一仕事終えてからの楽しみ、という事にしておくかな」

「そ、そうですね」

「⋯それにしても、リルント

以前より状態が進行していたな


そして俺に、剣を抜くことも

暗雲はたち込めたものの、直前まで雷を落とす素振りもなかった。

⋯殺し合うのが楽しみだぜ」

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