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呪われた貴方を佑ける方法  作者: 槻 みことӪ
第一章 アウラ島脱出編
15/25

お片付け

『⋯ほ、本当だ

美味しい⋯!』


スフェンの言う通り、この白くて丸いものは

ほのかに甘く、そしてもちもちとした弾力があって

とても美味しい。


お米⋯とは形状も食感も違うし

お餅にしては形が綺麗で、弾力の感じが違う

これは一体何なのだろう?

それに、根菜やお芋も村で採れていたものより美味しく感じた。


かなり空腹だったのもあって、どんどん口に運び入れる

そんな私を見て、スフェンは笑うのだった。


「そんなに慌てて食べなくても、食べ物は逃げないぞ!」

『そう言ってるスフェンは、もうおかわりして二杯目を食べてるじゃない』


スフェンも凄い勢いで、美味い美味いと食べていた。

殆ど一日食べていなかった様なものだ

それなのに安心して食べれる環境、温かくて美味しいご飯

こうして落ち着いてご飯を食べれる時間があることに、本当に感謝の気持ちで胸がいっぱいだ。


『⋯⋯』


目頭が熱くなって、下を向けば涙が零れそうだった。

周囲を見渡せば、きっと私と同じ気持ちなのだろう

何人か、ご飯を食べながら涙ぐむ民がいて

上手く言い表せない気持ちを抱く。


『⋯ご馳走様でした』


汁まで飲みほして、私は空になったお椀に軽く手を合わせ

片付けを手伝おうと、周囲で食べ終わっている民のお椀や匙も一緒に回収し

兵士さんの元へと運んだ。


『あ、あの⋯

ご馳走様でした、とても美味しかったです』

「ああ、いえ!

たくさん準備しておいて良かったです」


そんな私の声に、一番近くにいた兵士の方が

私の元へと歩いてくる。


「少しは休憩出来ましたか?」

『はい、お陰様で⋯

ありがとうございます』


そう返すと、兵士さんは口元を緩ませ

私の持つ何個か重なったお椀を受け取った。


『あ、私も⋯

片付けのお手伝いをさせていただけませんか?』

「え!? いやいや!

こんなの下っ端兵士の仕事ですから」

『で、ですが⋯』

「それに、メノン様はクラース族長の妹様ですよね

雑務をお任せする事は出来ないですよ」

『私から言い出した事ですし

その、このまま何もしていない方が辛いと言いますか⋯』


段々と声が小さくなってしまう

先程のリルントさんの言葉と、兵士達が受けている指示

立場的にも、きっと断りたい事だろう

私がこの兵士さんの立場だったら、きっと同じ事を思ってしまうけれど⋯


『お願いします』


兵士さんの目を見て、再度そう言うと

根負けしたように眉尻を下げて


「では、洗い場はこちらです」


そう案内してくれた。






『これで、最後かな』


天幕から少し離れた案内された所で、何人かの兵士さん達とお椀を洗い、水気を拭いていると

天幕がどんどんと畳まれているのが見えた。

全員に食事が行き渡り、その後少しの休息を経て

どうやらもう出発の準備に入ったようだ。


「拭いたお椀はこちらの袋に重ねて入れてください

匙も同じ袋でかまいません」

『分かりました』


私達ももう後片付けが殆ど終わり

隣の兵士さんが大鍋を拭いたら、向こうへ合流出来るだろう


私はお椀などを入れ終わると、袋の口を結び

持ち上げようと、その持ち手に手を伸ばす


「⋯何故、族長の妹がこんな所で働いている」

『えっ⋯』


袋を持とうとした手は、宙を掴んで

その袋を持ち上げたのは、リルントさんだった。


『わっ!』


すぐ私の後ろに居たもので、振り返り様にあまりの近さに

私は後ろへ重心が傾いてしまう。


「⋯!」


そんな私の腰に咄嗟に腕を回し、尻餅をつくのを

リルントさんはそっと阻止してくれたが

返って近くなってしまった距離に、身体が強ばってしまった。


「「「す、すみません団長!」」」


作業を中断して

ぴゃっ!と背筋を伸ばし、慌てる兵士さん達


「俺は丁寧にもてなせと言ったはずだが⋯」


リルントさんが、低い声色でそう言った。

蛇に睨まれた蛙の様に、兵士さん達はその場で固まってしまう。


『あ、わ、私が⋯

無理言ったんです、ごめんなさい』

「そうだとしても、必要ない。


今のあんたに必要なのは

大人しく休息を得る事だ」


その紫色の瞳には、萎縮する私の顔が小さく映っている。

腰に回された腕はまだそのままで、私は居たたまれなくなり

リルントさんの胸をそっと押し退けながら

なんとか体制を立て直した。


『す、すみませんでした!』


そして少しの恥ずかしさと恐ろしさで

天幕があった方へと走る。


(⋯こ、怖い!

クラース族以外の男性と話すのもちょっと怖かったけど

怒らせてしまった⋯!)



「はあ⋯

本当に族長の娘なのか

威厳の欠片も無いな」

「そ、そうですね⋯」

「そうですね、じゃないだろう

お前達は今晩の船の見張り役決定だ

暫し休憩は取れないと思え!」

「「「そ、そんなあっ!」」」

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