夢から醒めて
いつも、同じ夢を観る。
黒い煙の様なものを、口から濛々と出す兵隊
まるで天上から、糸で操られている様に力無く動いて
けれど時折、確かな意志があるかの様に、生き物と大して変わらぬ動きも見せる
そしてその握っている剣で、周囲を無造作に切りつけるのだ。
容姿も、夢だけれど繰り返し見ればしっかり覚えているもので、全身に黒い甲冑を纏っている
全身覆われている所為で、その甲冑の中の姿までは分からない。
兜の目の部分の隙間からは二つの薄く赤い光を放ち、その兜から、涙の様なものを流している。
何が悲しいのだろうか、何が苦しいのだろうか
それでも、周囲を斬り裂くことを止めず、ただ行軍するだけ。
そしていつもその兵隊達が向かう先には、城壁に囲まれた美しい国があるのだ。
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『⋯⋯あ』
それは喉かな初春の、降り続いた雪が完全に溶け消える頃、防寒用の海豹の衣を羽織らずとも外に出られるようになったので
今日は森に、山菜を採りに出掛けていた。
昼間というのもあり、陽光がポカポカと野を照らすので、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
そして、いつもの夢を観たのだが⋯
いつ見ても、不気味で怖い夢だ。
夥しい数の真っ黒な軍勢が、美しい緑と城壁に囲まれた国へと攻め込む
そこには確かな意思は見られず、戦いのことはよく知らないけれど、国を攻めるのだから、指揮官がいたり、攻める為に策を興じたりするかと思えば
何を目的としているのか分からず、数だけ頼りに攻めるのだ。
(何故、そんな夢を繰り返し観るのだろうか⋯)
今となっては、慣れてしまったので
自分の内側の、何かに対する不安などが映像となって、頭に流れているのだと思うようにはしているのだが
どうも現実味があるというか、嫌な胸騒ぎに近いものを毎回感じてしまう
私は生まれた時からこの小さな島の、小さな村で暮らしていて
甲冑姿だとか、城壁がある建物だとか、話を聞いただけで見たことないものばかりなのに、こんなにもはっきりと想像など出来るものなのだろうか
考えても仕方の無いことだと思っていても、やはり見てしまった後では、つい考え込んでしまうのだ。
(⋯さて、私もそろそろ帰らないと。)
普段は村の人と数人で採集に来るのだが、春先の昼間はあまり魔物は出てこないのと、今晩はクラース族にとって一番大事な催しである謝肉祭があって、その準備がある為、皆は先に帰ってしまった。
私は一度採集に出たら、籠いっぱいまでは帰りたくないので、一人残り続ける事にし
お昼寝はしてしまったけれど、そろそろ籠がいっぱいになるので、村に戻ることにする。
謝肉祭とは、クラース族の暮らしは森の恵みあってこそ
狩りでは主に鹿や猪、そして山菜やきのこ等を採集して暮らしている。
春が訪れるその前に、一年間飢えることなく暮らしてこれたことに対する感謝と
そして、またこれから一年間、不作なく暮らしていけることを願って行う。
その謝肉祭の準備の為、村の男達は三日前程から狩りに出掛けており
村に残った高齢の方、女、子ども達は野原や山へ山菜採りに行ったり、食卓の準備をするのだ。
ここで忘れてはいけないのが、聖職者の存在だ。




