(5)
店を出てもまだドキドキは収まらない。緊張も相まってか、のどが渇く。どこかに自動販売機はないだろうか?あたりを探してみるが、見当たらない。困ったな…店の中で水でも飲めば良かった。
「う~ん…自販機とかはこの辺りにはないと思いますね。」
「わ?!そ、そうだよね」
「あ、そうだ!猫カフェとか行きますか?」
「猫カフェ…行く?」
「あは、そんなに硬くならなくても大丈夫ですよ?」
うん、別にそうなんだけども。食べさせあうのは破壊力がすごくて…。自販機がないって言うなら、猫カフェに行くか。アトラクションを乗るために来たわけでもないし。こういうデートもいいのかな。
「はい!良いですよ、私もこういうのは好きですし!」
「そう?」
「では、行きましょうか!」
二人で並んで歩いていく。猫カフェは飲食店街より少しだけ離れた場所にあった。自然に囲まれた中に一軒だけロッジみたいな木造の建物がある。ここだけ別空間というか、隔離されているかのような印象を受けた。
中に入ると、様々な猫が居る。あ、なんだっけ?エキゾチックショートヘア?色々な所で見るけど…結構可愛い。他は…分からない。なんだろう?
カウンターでメロンソーダフロートを注文して席に座る。ワンドリンク無制限らしい。外から見ただけでは分からなかったけれど、中に入るとかなり大きい。席数は100席を超えているとか。
「おぉ…なんて種類なんだろうか?」
「この子は、メインクーンですね、他には…」
ロシアンブルー、ピクシーボブ、マンチカン、シャム…え?これ全部オーナーが家族として迎えた子たち…?多すぎない?他に犬もいるんでしょ?ここだけで猫の別荘みたいになってるけど?
「すごいですよね!まぁ、猫は好きではないですけど」
「あ…ごめんね?というか、なんで苦手?なの?」
「ああ、私が猫だった時ありましたよね?あの時に色々あったんですよ…」
笑夢はいつもの表情を崩して、苦い顔をする。野良猫に喧嘩を売られたり、求愛されたり…主に求愛がしつこかったらしい。動物だから仕方無いよ。しかも野良猫だからね、生きるのに精一杯なんだよ。
「あ、良かったの?ここ、猫カフェだけど」
「はい、別に今は特に何も感じないですよ?」
「分かった」
「肇さんのデレてる表情も見れますからね」
「うぇ?!俺そんな顔してる?」
自分の顔を触り、頬を両手で上に引き延ばす。動物ってなんて可愛いだろう、とかはいつも思っているけど…緩んだ表情をしていたとは。笑夢は残念そうに「言わなければ良かったです」と呟いていた。
周りを見渡して気づいたけど…猫に囲まれている?!なんで?俺らから何かが出ているのか?猫に好かれる何かが。天使効果か?笑夢をちらっと見ると、笑夢は首を横に振って「そんな効果はありませんよ」と言った。
「じゃあ、何だろ?」
「肇さんの人柄に惹かれて、じゃないですか?」
「え?結構怖がられるけど?」
「飼い猫じゃないでしょ?野良猫は警戒して当然ですよ?」
「そっか、飼い猫は触ったことないな」
「いつか触れますよ、きっと…そろそろでしょうね!」
「うん?そうかな?」
「私がそうできるように導きますから」
恥ずかしくなって何も喋れなくなってしまった。すると、店員が飲み物を運んできてくれる。受け取って、飲み物をすぐに飲む。はぁ…生き返る。甘さがあるから、疲れが取れるな~。
膝の上に乗ってきたメインクーンを撫でながら飲み物を飲む。今までだったらこんな事は出来なかっただろうな。怖がられるから店にも入らなかったし。笑夢が居てくれるからこそかな。
「照れますね、そんな。」
「そうだった…慣れないな」
「これから徐々に慣れていきますよ!」
「だといいけどね」
「思ってる事をすべて見られるのは恥ずかしいですか?」
「そりゃもちろん?だって、生きてきて十数年、心を読まれる経験なんてここ数日の事だからね?」
「私たちには当たり前なんですけどね」
文化の違いだ…。ていうか、天使同士だとどういう会話になるんだ?そもそも会話しなかったりして。
「しますよ?でも、あんまりないかもしれないですね?」
「え?!そうなの?」
「はい、思ったことすべて読まれるので、飾る必要がないですからね」
「わぁ…怖い」
「そうですか?皆ほんわかしているので…黒い事も考えないですし!」
「へぇ、居心地が良さそうだね」
「そうかもしれないですね、人間界と比べるとかなり過ごしやすいですよ?」
「う、うん。なんて答えればいいか分からないや」
もしかして…人間界ってそんなにやばいところなのか?




