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(4)

 まさか、アトラクションに乗らずに園内のキャラクターだけを見て、軽く2、3時間飛んでいくとは思いもしなかった。出てきたのは朝の9時頃だった。今時計を見たら昼になっている。ゴールデンレトリーバー、ペキニーズ、シーズー、果てはアザワクという日本に一桁程しかいないとされる犬までキャラ化されていた。

「ふぅ…見終わったのかな?」

「ですね!いやぁ…ここはいつ来てもすごいですよ!」

 笑夢はつやつやした顔をしている。いやぁ…良かったよ、ここを選んでおいて。いつしか俺の緊張もほぐれていたし。う~ん…引っ張ることは今のところ出来てないけど。いいのだろうか?

「良いんですよ、そんなこと気にしなくて!」

「え?そうかな?」

「はい、男性だから引っ張っていくとか気にしないでください!今が楽しいのですから!」

「う、うん。分かったよ」

「マンネリとかも気にしないでください、どこにでも連れていけますからね?」

 頼もしすぎる…。でも、そっか。囚われなくていいのか。気持ちが大分楽になるな。うん、余計な事を考えても読まれるし、やめておこう。

「何を考えようとしたんですか?悪い事ですか?浮気ですか?」

「いや、何も、ないよ?」

「隠してますね…?なんです?」

「本当に何も考えてないんだって!」

「まぁ、いいでしょう。今回は許しますよ?」

「は、はい。」

 笑夢は強張らせていた顔を元の笑顔に戻す。落差があって少し怖いな。はっ…。まずい…ははは、可愛いな~綺麗だな~。

「ふふふ、もう遅いですよ?」

「はい、すいません。少し怖いです」

「そうですか、怖いですか?」

「なんか、作ってるみたいな感じがありまして…」

「なるほど、そういう風に思うんですね?」

 笑夢は繋いでいた手をパッと放して腕を組んで考える。前から思っていた事だけど、考えている時の横顔は驚くほど綺麗だ。怖いって言ったって、怒らせる俺に原因があるし、仕様がないと言えるかな。

「ごめん、ご飯食べに行こうよ」

 俺は頭を下げた後、すぐに手を差し出す。笑夢は俺の方を見てにこっと笑うと答えるように手を取った。お昼に食べるものは…何にしようか。

 テーマーパークに一角に飲食店が立ち並んでいる所がある。洋食、中華、和食…いろいろ並んでるんだな。感心しながら一つ一つを見て回る。こういう遊園地に来ると定番は洋食なんだろうな。

 洋食店の前に出ている看板には、ナポリタン、ハンバーグ、ステーキ…ハンバーガーも書いてある。色々ありすぎても選べないんだけど。

「どうしようか?」

「肇さんは何が食べたいですか?」

「ごめんだけど、食べたい物は浮かんでこないんだよね」

「そうですか…では、ビーフシチューオムライスとかどうですか?」

「美味しそうだね!」

「作るのに手間がかかるんですよ…美味しいですけど!」

 もしかして、ビーフシチューから作るとか?それは確かに手間がかかるな…オムライス自体も簡単ではないし。前に作ろうとしたことあったけど、卵がぐちゃぐちゃになって綺麗に出来なかったんだよな…。

「じゃあ、入りましょうか?」

「そうしよう」

 店の入り口から入り席に案内される。中は割と混雑していて、席の八割程は埋まっていた。何か視線を集めているような…あ、手を繋いだまま入ってきたからかな?そう思っていたら、「隣の人綺麗な人だね」とかいろいろ聞こえてくる。あ、笑夢が視線を集めていたのか。

「なんか、食べづらいかもね?」

「結界張って見えなくしますか?」

「それこそ注目の的じゃない?!」

「そうでしょうか?消えれば何とかなりますよ?」

「いや、イリュージョンになっちゃってるから」

 そんなやり取りをしていると、席に料理が運ばれてくる。ビーフシチューのいい香りとオムライスの卵とバターの香りがマッチしていて食欲をそそられる。

「いただきます」「いただきます」

 俺らのいただきますの声が揃ってしまったが同時に食べ始める。食べている最中にちらっと笑夢を見ると、片方の髪の毛をかきあげて、スプーンを口へ運ぶ。優雅で気品のある食べ方をしていてつい、見とれてしまった。

「ありがとうございます」

「あ、うん」

「一口要りますか?」

「え、いや、同じもの食べてるし…」

 俺は顔をそっぽに向ける。笑夢はスプーンを置いて、俺の視界にわざわざ入ってきて両手で俺の顔を真正面に向けさせる。

「はい、どうぞ」

「いや、恥ずかしいって…」

「良いじゃないですか、別にここに居る人の大半は、もう会いませんよ」

「そうだけど…」

「はい、どうぞ」

 自分にどうしようもない、と言い聞かせて、あーんを受け入れる。心臓がどきどき高鳴っていくのを感じる。もう、味なんて分かんないよ。笑夢は俺の方を見て何かを期待しているように見える。もしかして…

「え、俺もやるの?」

「やってください!ほら、あーん」

「う、分かったよ」

 スプーンにオムライスを盛って笑夢の口に運ぶ。笑夢は満足そうに笑顔で噛みしめていた。もう…やっと落ち着いてきたのに…心臓が持たないって。

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