(8)
皆で二本、三本…と滑っていたら気づけば夕方になっていた。日が落ちて、あたりも大分寒くなってくる。そろそろ切り上げて、コテージに行く時間だ。
「コテージまで少しだけ距離があるので、歩きましょう」
「結構…筋肉痛が…。」
「うちも立ち上がれないかも」
「皆貧弱だな!お、俺はだ、大丈夫、だだだだ」
智一は足をブルブル震わせながら強がりを言っている。その態勢だと…生まれたての小鹿が食べられないように必死に頑張ってるみたいで…少し面白い。
最後の力を振り絞ってコテージにたどり着く。コテージに着いて分かった事は、温泉があるけど、混浴と言う事だった。何故?
「混浴しかないとは…高校生に貸して良いのでしょうか?」
「調べた段階で分かったんじゃない?」
「いえ、書いていませんでした」
「え~…まぁ、男女別れて入ればいいよね」
「男性陣の方が圧倒的に多いから、先に女性が入ってきていいよ」
「そうですの?では、お言葉に甘えますわよ」
「結君は今日楽しかった?」
「はい!美香先輩は僕に付きっ切りだったけど、良かったですか?」
「良いんじゃない?こっちは笑夢が居たから」
「フル稼働してましたけどね?」
「ある程度滑れるようになったから良かったぜ!な?」
「そうでしたか…それなら良かったです、智一先輩」
「お……?どういう?もう一回呼んでくれるか?」
「智一」
「おおい?!違うだろ?!」
辞めて…今笑わせないでくれ…。死ぬ、腹筋が…痛い…。立ち上がろうとすると、腕も痛い。全身筋肉痛ってこういう事なのか?!
「日頃の運動不足…と言いたい所ですが、使用する筋肉が違うのでなんとも言えないんですよね」
「そうなんだね」
「ところで、美香とはどうなりましたか?」
「ど、どうって何ですか?」
「付き合いましたか?」
「いえ…まだです」
「恋バナなら俺だろ!でも、美香は気があるだろ?じゃないとあんなにくっつかないし」
「僕はまだ分からないんですよ…どうすればいいのかが」
ははは…俺に似てる。俺も最初そうだったから分かる。好意を向けられることそのものに慣れてないし、自分から好きになった事なんて無かったし。
「肇先輩は何か知ってるんですか?!」
「うん?俺も昔そうだったな…って。でも、自分で悩んでたら答えが見つかるでしょ?」
「流石です!」
「俺の立場を返せ!!ていうか、今日肇が抱き合ってたのは誰なんだ?」
「誰…?笑夢だけど?」
「そうか?女性に見えたんだけどな?」
「は…?そうなの?」
「ああ、少なくとも…あの肉のつき方は女性に違いない」
ドスッと言う鈍い音が聞こえる。あぁ…怒らせた。肉のつき方なんてもし仮に女性だとしたら言っちゃいけないだろ。気にしている部分かもしれないし。
「痛っ?!なんだよ?!なんで笑夢が起こるんだ?」
「女性に向けていい言葉ではないでしょう?」
「いや、別に太ってるって言ったわけじゃないんだが?」
「肉なんて言わない方がいいですよ?」
「だから!なんでお前が怒ってるんだよ?!」
智一は頭を手で覆いながら不思議そうに見ている。う~ん…親戚だからとかごまかすか。同一人物ではあるんだけど。
そうだな…もし肉を言わないで表すなら…マシュマロがいいだろうか?もちっとしているけど、ふわっとしている。いいところに肉があって、肉がない。完璧なボディだ。
「痛っ?!」
「肇さん…?それ肉って言ってます」
「そ、そうだね。ごめん」
「でも、いいです。」
「だからお前ら言葉を交わしてないのに伝わるの怖いって!」
「笑夢先輩の読心術なんですよ!先輩ってすごいな…!」
「結…?お前はそれでいいのか?」
「智一、それでいいんです」
「だから、俺にも先輩をつけろよ!」
うまい具合に躱せたと思ったら、お風呂から二人が出てくる。よし、じゃあ風呂に入ろうかな?すると笑夢が裾を引っ張ってくる。なんだろう?
こそっと耳打ちで「後で一緒に入りませんか?」と囁かれる。まぁ、男性の姿だし別にいいかな。俺は頷いた。
智一と結君に断りを入れて、先に入ってきてもらう。智一は「お前ら何する気だ?」と訝しんでいた。別に何かするわけじゃない。
「今日進展するって聞いたけど、結君は考えてたね?」
「そうですわね…なかなかに手ごわいですわ」
「ある種ボス的な感じだもんね」
「飽くまで敵ですか?」
「攻略対象?」
「倒しちゃだめですわね」
「押し倒せばいいんじゃないかな?」
ルト…?!そんな強引な方法で結君が納得するか?!そもそも、俺が逆の立場なら…いや、意識はするか。一緒に風呂入ったとき、意識したしな…。
「一緒に風呂に入る…?今のうちに入ってきますわ!」
「智一居るから!ダメだ!!」
美香をなんとか引っ張って引き留める。いや、中性的にしてくれてたからと言う説明省いたらこうなるのも当然か…。




