(5)
翌日、ホームルームでしおりが配られる。修学旅行が今月にあるのは本当だったんだ。なんてことを考えていた。妙に分厚いしおりを開いて見る。中には班は五人と書かれていた。丁度五人、良かった。
ただ、一つ問題が発生していた。あまりにも、美香と笑夢に班の申し込みが多すぎる。これ、下手するとくじ引きとか…なりそう。それだけは…頼む、勘弁してくれ。友達を作ることが目的だったのにって?仕方無いじゃない。仲良い友達が出来たんだから。
「これじゃあ埒があきませんわね?」
「そうですね、困りました…。」
「もう班は決まっていますのに。」
二人が困っている姿を見て、皆静まり返る。え?もしかして圧がある?何かこう…覇気みたいなのを発してるのか?そんなことを考えていたら、笑夢と美香の二人が一斉に俺の方を見る。待て待て!!敵が増えちゃう!!またいじめられちゃうよ!!
「ごめんなさいね…皆様。」
「ええ、本当に申し訳ないです。」
「ん?」
俺はすっとぼけた顔をしておく。当然…恨みを買っているかと思ったが、皆何故か口々に「肇なら仕方無いか」とか言っている。精神操作か!操ったのか?!あんなにダメって言ったじゃない!レンジで卵みたいになっちゃうでしょ?!
「皆さんが理解してくれただけですよ?」
「肇様の伝説がありますから」
「は?!まさか…」
忘れてたわ…あんなの。道理で皆頷いているわけだ…。で?智一に一斉に視線が飛ぶの?智一ベイト?流石に可哀想じゃない…?
「な、なんだよ?俺何かしたか?」
「お前は主人公じゃないだろ?!」
「な、俺だって…主人公になりたい!」
「お前まさか…そのために肇に近づいたのか?!」
「俺の印象なんでこんな最悪なわけ?!」
智一はもみくちゃにされている。可哀そうに…。あ、人気者になる、と言うのは叶ったのかな?いつの日か…言ってたもんね。よくやった、智一!
「違う!!助けてくれ…!!」
智一はそのまま連れ去られていった。ああ、どこに行ってしまうというのだ。わが友よ。じゃ、班で回るために作戦を立てますか。
「肇さん…薄情ですね?」
「そうかな?智一は念願叶ったでしょ?」
「うちもそう思うよ?きっと楽しんでるよ!」
授業が短縮だったこともあり、そのまま皆で家に向かう。智一は…後ろから俺らを追いかけてきていた。
「おい!!俺を置いて行くなって!」
「あれ?人気者のご帰還だ」
「は?!あれ、人気なの?どっちかと言うと…ヘイトだろ?」
「そうかな…?」
「根ほり葉ほり聞かれて…もうどうすればいいか分からなかったぞ?」
「で?なんて答えたの?」
「ん?とぼけて通してた」
そんな会話をしつつ、家に帰る。皆が家に着いた後、結君を呼んだ。そう、直接は関係ないけど、皆で話した方が楽しいから。それと、俺らの部室…要らなくない?この家が部室になってない?
しおりを良く読んでみると、びっしり文字が書かれている。ありえないぐらいスケジュール詰まってる。自由時間多いし…これ、全部調べないとやばくない?いや、こっちには笑夢と美香が居る!全然問題なさそうじゃないか!
「全部行ったこともあるし、案内も出来ますよ?」
「本当に?!」
「ただ…」
笑夢はそっと俺に耳打ちしてくる。「これ、歴史全然変わっちゃいますけど…良いですか?」と。ダメだろ…それは。最近の歴史でお願いします。いや…まぁ、都市伝説みたいに聞いておくのも…ありか?
「なしですね」
「だよね~。」
「何をこそこそ話しているんだ?!」
「もしかして!」
「違う違う!」
いや、違わないんだけど…違うんだよな。なんて説明すれば……!もう、分からん!大丈夫、とりあえず違うから!
「違うんですか…?」
「違う…くない!」
「そうですよね!」
待って待って…ややこしくなる!ちょっと…誰か、助けて!!なんで生暖かい目を向けてくるんだ!ちょっと、どうにかして!!!
「と、言うのは冗談として…何処に行きたいとかありますか?」
「いや、普通に進めるんかい!」
「ええ?そうですよ?」
助かりました、ええ。ありがとうございますね…。どこに行きたい…か。ないんだよね。別に。皆と行ける場所が楽しくないわけがない。正直、お土産買ってもなぁ…。あ、神様にお土産渡すか。あの人、良く来るし。最近、俺らがたまり場にしているから来ないけど。
「居ますよ?」
「は?!居るの?!」
全員の視線がこっちに向く。俺は首を横に振ってなんでもないアピールをする。笑夢に耳打ちで「どういう事?」と聞く。笑夢は俺に向かって小さく「そこに居ますよ」と指さす。部屋の隅っこを良く見て見ると、何やら小さい何かが浮いている。え、これ…神様なんだ。俺の家は随分神聖な領域になっているなぁ…。
神様へのお土産ねぇ…酒しか思い浮かばないけど…買えないんだよね、高校生は。飲酒しない前提なら買わせてくれるのかな?いや、そもそも売るのがダメだし、無理だ。じゃあ、なんだ?つまみ…とか?
神の方をもう一度良く見たら、首を縦に振っている。ああ、いいんだ、つまみで。いつも豪快に飲んでるから要らないんだとばかり思っていたけど。
恋バナの土産でもいいぞ。
何?!急に声が頭に…?!神…それ出来るなら最初から言ってよ…。恋バナはやめときます。どうせ、見てるでしょ?俺らの様子。
そうだ、見てるぞ。もっと甘えろ…もっとくっつけ…もっといちゃつけ…。
厄介な感想送り付けてくるな。閉じろ閉じろ!!手をぶんぶん振って振り払う。そんな俺の様子を皆は不思議そうに見つめていた。恥ずかしい…。




