(6)
騒動は沈静化した。本当に数分の出来事だったけど。噂はまだどうなっているか分からない。放課後まで待つしかないか。
「申し訳ございませんわ…わたくしの所為ですわ…」
「いや…気にしないで」
「いや、気にしてください。これは今後に関わる大事な事ですよ?」
「何に関わるの?」
笑夢はこっそり耳打ちで「神になるために」と教えてくれた。なんだろう?人を率いる資質とかなのかな?分かんないけど…。
「はい…肝に銘じますわ」
「よろしい、では授業を受けに行きましょう」
「本当に…朝から疲れたよ。」
「そうですね、ああいった事が起こらないようにしなければ」
「そんなに起こりそうかな?」
「そうですね…流石にないですね」
頻繁に起こってたまるか!とは思うけど。いやぁ…ファンクラブって怖い。だってさ?発足一日にしてこの団結力でしょ?さらに噂まで広める企て…もう見事としか言いようがないよ。
「何相手をほめているんですか?」
「あ、笑夢も凄かったよ?」
「そういうわけではないです…けど」
「怒ってくれたのは嬉しかったな。」
最初は俺を利用するために近づいてきたんだ、そう思っていた。でも、笑夢と近くで過ごしているうちに…段々俺の考えも変わってきた。本当に好きだから居てくれるんだ、って。
「そう言ったじゃないですか?」
「いやね?好意を向けられたのは初めてだし、事情が事情だからね?」
「そういうものですか?」
「うん、だって突拍子もないし、ありえないと思ってたから」
天使なんて居ない、神なんて居ない、悪魔も霊も。何も居ない、ただ生きている者だけが存在する世界だと思っていたから。
「イチャイチャを見せつけて楽しんでいますの?」
「いえ?そういうわけではないですよ?」
「二人から好意の波動を感じますの。本当に…許せませんわ!!」
「え、え?そんなの出るの?」
「私は分かりませんけど…?」
「わたくしは分かりますの!」
美香は悔しがっている。なんだろう…人間っぽい。すごい人間っぽい。笑夢は結構人間みたいな感じはなかったけど。
「これが上位か下位かの違いですね」
「わたくしを説明材料にしないでいただけます?」
「なるほど…天使って人間っぽいね?」
「わたくしは感情が豊かなだけですの!」
三人でクラスに入る。席に座り普通に授業を受けて、放課後になる。何やら噂は沈静化しているようだった。主犯たちが皆に嘘だ、と言ったようだ。
「この学校…何人いると思ってるの?」
「はい?何ですか、急に。」
「一学年1000人ぐらいでしょ?そんなに早く噂が沈静化できる?」
「それはわたくし達も協力しましたので」
二人の協力があったのか!…一日ですごい速度で広まった噂を回収したの?とんでもないね。
「肇さんを助けたいが故の行動でしたけどね?」
「本当にありがとう」
「いえいえ」
「何か…してほしい事はある?」
「してほしい事…ですか?」
「うん、何か出来たらいいなって思うんだけど…?」
「わたくしは大丈夫ですわ。元はと言えばわたくしの所為ですから」
「私は…帰ったら言いますね?」
「何か不埒な好意をさせようとしていますわね?」
「そんなわけないでしょう!」
「笑夢に限って…まさかね?」
「ありえませんよ…別に?」
何か…不穏な間があったけど?気のせいだよね?うん。そう思っておこう。大体、天使だからね?真っ白だから。
「しませんって!行きますよ!」
笑夢は恥ずかしそうにずかずかと前を歩いていく。そういう行動が…怪しいんだけど。まぁ、ないよね!笑夢に限ってそんなことは!
部室を開けるとルトは目を見開いて俺を見る。え…?またなんか噂が広がってるのか…?何?
「なんかね!うちね、聞いたの!“おしゃれなんだって?!”」
「そっちは消えてないのかい!!」
「うん?どういう事?うち、ファッション教えてほしくて…」
知らない知らない!!女性のファッションなんて!俺自身があんまりおしゃれとか気にしないのに!分からないって!!笑夢…助けて。
「その話は置いておきましょう。根も葉もない噂です」
「それはそれで…悲しい」
「フォローじゃないですか!」
「分かってるんだけど…ね」
「夫婦漫才は後にしてくださいまし?」
「してないって!」「してないですよ!」
「やっぱり…男性が好きなの?」
「違うって!そんなに強く否定するのもあれだけど!」
「うちは別に何も思わないよ?」
「そう…なんだね?って別に恋愛対象は女性だから!」
「あら?笑夢さんは男性でしてよ?」
「うん、そうなんだけど、そうじゃない!」
「ややこしくしないでもらえますか?」
「あら、失礼いたしましたわ」
おほほほと甲高い声で笑う美香。本当に…何かの小説とかに影響されてないだろうね?元々そういう笑い方なのかな?




