表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/61

(2)

 どんどん楽しい時間は過ぎ、あっという間にチェックインの時間になった。ホテルは和風と洋風が程よく混在していて、かなり高級感がある。内装は旅館みたいな和風な感じなのに、何故か洋風も同時に感じる装飾をしてある。

 結構…値段高いんじゃないか?笑夢…高校生の設定だからね?分かってると思うけど…一泊で〇万とか出せないよ?

 「もちろん、分かってますよ?ここは、高校生割引をしている珍しいホテルです」

 「珍しいってか…そんなのあるの?」

 「限定ですね?丁度予約が出来たので!」

 部屋に案内される。ルトは一人部屋で、俺らが三人部屋だという。当然だ、女の子と一緒の部屋は流石にまずい。

 「じゃあ、後でうちもそっちに行くね!」

 「その前に…風呂入るか!」

 「それがいいかもね?ちょっと砂だらけだし」

 「そうしましょうか」

 三人で荷物を置いて温泉に向かう。大浴場の脱衣場がすごい広い。なんか…百人ぐらいいても大丈夫そうなレベルだ。荷物を入れて、いざ温泉へ。

 内風呂と外風呂の二種類があるらしい。一応露天風呂を覗きに行く。石造りの床と、ごつごつした岩に囲まれた風呂は圧巻だ。シャワーを浴びて入浴しようとしたら智一が奇声を上げた。

 「何事?!」

 「やばい…日焼け…痛い…」

 「もしかして日焼け止めを塗らなかった…?」

 「うん、大丈夫だと思った」

 「はぁ…」

 何故大丈夫だと思った?!夏の日差しはかなり強いし、日焼けは火傷なんだ…痛いに決まってる。

 「ちょっと…洗ったら出るわ」

 「嘘…だろ?!ここまで来て?!」

 「あ、水風呂あるらしいし…そっち行くわ」

 「アイシングにもなるし、良さそうですね」

 智一は肩を落としながら露天風呂を去っていった。あ~あ…日焼け止めさえ塗っておけば…完全に焼けないわけじゃないけど、酷くはならないから。

 「二人になりましたね?」

 「そうだね、たまにはゆっくりする?」

 「ええ、そうしましょう」

 「もしかして…何も言わなかったのは?」

 「いえ、計算ではないですよ?どうせ、“いい!”って言われるかなって思いましたので」

 そうでしたか。確かに言いそうなんだよなぁ…。でも、久しぶりに二人で風呂に入った気がするな。と言うかなんでこんなに人が居ないんだ?夏休みだし、もっと人が居てもいいと思うんだけど。

 「別に何かしたわけではないですよ?本当にたまたまですね」

 「そうなの?」

 「ええ、二人きりになれたのは嬉しい誤算です」

 「まぁ、そうかもね」

 女性姿じゃない笑夢とこうして話していると不思議な感覚になるけど、別に笑夢は笑夢だから。今は可愛いって感じじゃなくて、かっこいい、だけど。

 「今日は楽しかったですか?」

 「うん、友達とこうやって泊りに来れたのも…嬉しいよ」

 「そうですか、本当に良かったです!」

 「うん、全部笑夢のおかげだね」

 「そうですか?肇さんの努力のおかげじゃないですか?」

 違うよ…きっと。笑夢っていう大きなきっかけがなければ、何も変わらなかったと思う。違う、変われなかった。頑張ってるように見えて、どうにかしようとしなかったのは自分だから。

 「うん、ありがとう」

 「改まって言われると恥ずかしいですね…」

 笑夢がもじもじしながら頬を赤らめる。そんな笑夢を見ていると、この光景は本当に、夢なんじゃないか。醒めない夢を見ているのではないか。いつか、この日常が終わってしまう時が来るんじゃないか。そんなことを思ってしまう。

「夢じゃないですよ?」

 「でもさ、ありえない話じゃない?笑夢の存在自体がさ」

 「そうですか…?人間からしてみればそうなのかもしれないですね?」

 「うん、俺らは人間だからさ、ありえない奇跡が起こると分からなくなるんだ」

 でも、はっきり言えるのは…今を全力で楽しむ事。それが一番大事なんだと思う。改善の兆しの無かった人生に見えた一つの希望なんだ、笑夢は。

 「大げさな事を…なんですか?何かしてほしい事があるんですか?」

 「ないよ?強いていうなら…これからも傍に居て欲しいなぁ」

 「ぷ…プロポーズですか?!どうしましょう…居るつもりではありますけど…急に?!」

 笑夢は慌てふためいている。珍しい姿が見れて俺も面白く思ってしまう。二人で笑いあっていると、他のお客さんが入ってきたようだ。そろそろ温泉から出る事にし、二人でその場を後にした。

 部屋に戻ると、智一はいびきをかいて寝ていた。ほら、案の定寝てるじゃないか。ていうか…ご飯は?その時になったら…起こすか。

 「やっぱり寝てますね」

 「体を冷やしたら…眠くなったのかな?」

 「純粋に疲れじゃないですかね?雪山でもない限りはそんなことにはならないかと?」

 「え?!あれ本当なの?!寝たら死ぬぞ!」

 「あれが本当かどうかはさておき、低体温症で死んでしまう事が多いのが主な理由ですかね」

 「寝ても死なない…?」

 「寝ると死んでしまうのは低体温症で昏睡状態になるからで、逆に助かる場合も…確か事例があったはずです」

 「そうなんだ?」

 「そうですね、あ、こっちに来るんじゃないですか?」

 ノックの音が聞こえる。きっとルトが来たんだろう。なんだろう…笑夢の聴覚は犬並みなのかな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ