(1)
合宿当日、早朝に何とか起きる事に成功する。実際は笑夢に起こしてもらったわけなのだが。笑夢がすべての手筈を終えてくれていたようで、頭が上がらなかった。電車に乗って待ち合わせ場所である駅に向かう。皆は揃っているのだろうか。
あ…皆もう待ってるじゃん!すごいな…何で来たんだろう?始発でも…ギリギリだったのに。
「お待たせ…ってルト?髪切った?」
「え、すごい分かったの?!切った!」
「それだけ大胆にイメチェンしてれば分かるよ!」
「智一は気づかなかったのに…」
「ん?髪切ったのか?!」
かなり短めだったのが、ショートボブ?というか、可愛らしい髪型になっている。なんでも似合いそうだ。智一は頭を掻いて、目を擦る。よく見ると目元に隠しきれない程のくまが出来ていた。
「智一…寝てない?」
「おう!こういうイベントの前日は寝れなくてな…」
「子供じゃないんだから…」
「いいんだよ!間に合えば何でも!」
がはは、と大きく笑いごまかしている。うん…楽しみなのはいい事だ。だけどさ、この後起きてられるのかな?枕投げが一番楽しみ!みたいな事を言っていた気がするんだけど…。
「寝るだろうな…うん。」
「何を?!起きてられるわ!」
「多分…枕投げしながら寝るでしょ」
「もしかして…俺って超能力者?!」
「ないない」
「見るからに…なさそうですね。」
「そんなに否定しなくても良くない?!」
皆で笑いあいながら、到着した電車に乗り込む。電車に揺られて二時間程度。窓の外には綺麗な海が広がっていた。本当に、事前に見たパンフレット通りの感じだ。透明な水に白い砂浜。朝日がさしていて、道が出来ているみたいで美しい。
「うわぁ…すごい」
「本当に綺麗だね…うち、こんなの見た事無い!」
「すげぇな!こんな綺麗な海があったなんて…」
「あれは、サンゴの死骸や貝殻が砕けているので…気を付けてくださいね?」
そうなの?!風情が一気になくなったような…いや、待て。自然が織りなす奇跡だと捉えよう。そうしたらもっと感謝できる。この状況を生み出してくれた地球に。うん、壮大な考えだ。
駅に降りて、砂浜に向かう。まだ朝の七時、全然人が居ない。借りてきたビーチパラソルとシートをセットして…いざ海へ!
「ほ~!!すごいぞ!肇!」
「俺ね…海怖いんだよね」
「は?!そんなこと言ってる場合かよ?!」
「そうだよ!うちもそう思うよ?」
二人は俺の方を見る。いやさ…何が居るか分からないじゃない。泳げないしさ。浅瀬の所に居ても…ね?分かるかな?この気持ち…。大きなサメとか…来るかもしれないよ?!
「肇さん…来ないですよ、そんなサメは…」
「え?そうなの?だって居そうじゃない…」
「居るにはいますね。ただ、どれぐらいの大きさですか?映画に出てくるようなサメはいませんけど、ホオジロザメとかイタチザメなら…」
「へぇ…居るんだ。」
「後…普通に私が居るので安心です」
「確かに!」
「行きましょう?」
笑夢は何故か手を前に差し出し、俺に水を掛ける。しょっぱ!!何、それ海水?うわぁ…しょっぱいけど、別にそんなに気にするほどでもないのか…。
「分かった、行こう。」
「はい!あ、まずは日焼け止めを塗って…」
笑夢と日焼け止めを塗りあう。と言っても、塗れない背中部分のみだ。笑夢は男性の姿をしていると、筋肉が程よくあって細身なマッチョ。うらやましい。俺の体は…まぁ比べないようにしよう。
「行くぞ!!うぉぉぉぉ!」
「はしゃぎすぎですよ?そんなにはしゃいだら…」
こけた…。砂浜に足を取られて顔から行った…。ナニコレ、めっちゃ歩きづらいじゃん?!ぺっぺっ!砂まみれだ…。
「ははは!なんだそれ!面白そうだな!」
何故か智一も、浅瀬からこっちに走ってきて砂浜にダイブする。砂だらけになるのは楽しくないんだが?!
「いいなぁ!これ!」
「埋めるぞ…智一!!」
「ぎゃ~!!逃げろ~!!」
浅瀬で遊んで疲れが溜まる。休憩するために一度パラソルの所まで戻る。すると、笑夢が本を読んでいた。何故…俺に発破をかけたはずの笑夢が優雅に本を読んでいるんだ。
「笑夢は行かなくていいの?」
「はい、私は元より遊ぶのが目的ではないので」
「え?」
「肇さんが行くところに行くことができればそれでいいのです」
「何それ、嬉しい、ときめいちゃう!」
「……?」
ごめん、ちょっと…柄にもない事した。なんか語感が良かったから使ったんだけど…良くなかったみたい。
「笑夢はさ、本当に肌が真っ白だね?」
「そうですか?皆こんな感じですよ?あ…肌を焦がしてみますか?」
「ねぇ…溶けない?チーズみたいにならない?」
「なるかもしれないですね…どうです?」
「俺をチーズにして食べるつもり?!」
「ふふ、美味しいかもしれないですね?」
「こわ…?!」
「嘘です、支障はないですよ、見た目が変わるぐらいですかね?(使ったことはないですけど)」
ん?何やら不穏な声が聞こえたような…。使ったことない能力ばかりあるんだな。使う機会もないのかもしれないしね…。




