(6)
家に帰って笑夢はそうそうに部屋を見て回る。そういえば、あの時…帰ってきたばかりだったね。いや、掃除だけはしっかりしたから大丈夫だ…と思うんだけど。
「はい、見かけだけは綺麗ですね?」
「う…うん?」
「ここ…詰め込みましたよね?」
笑夢はクローゼットを指さす。はっ…忘れていた。詰め込んだ事も、開けられなくなってしまった事も。やばい…どうしよう。
「まぁ、別にどうにでもできるからいいんですけどね?」
「掃除…しなおします」
「いえ、大丈夫ですよ?元に戻ってもらいますから」
「元に…戻る?!」
「はい、見ていてくださいね?」
笑夢がクローゼットに向かって何やらひそひそ呟いている。何を言っているか聞こえなかったけど、がさがさ!っと一瞬音がした後、すぐに静まり返った。クローゼットを開けると、綺麗になっていた。あんなに詰め込んだのに。
「まぁ、こんな感じですかね?」
「わぁ…久ぶりに見た、超能力!」
「ふふ、こんなもんです!」
胸を張って、「えへん」と言う。可愛いな。なんか…以前よりも可愛らしく見える。一週間程度居なかっただけで俺の思考に何か異常が起きているんだろうか?
「失礼ですね?元々可愛いように出来てますよ?」
「言い方が怖いよ…」
「人間だって神が創ったと言われているでしょう?天使も同じですからね?」
「う~ん…そう…か?」
そういえば、なんの用事でこんなに時間が掛ったんだろう?すぐに帰ってくるかな?って思っていたのに。
「ああ、言ってませんでしたっけ?肇さんを天界に連れて行く方法を神と話していました」
「え?!そんな大それた話してたの?」
よく一週間で帰ってこれたな…。俺特に何かしているわけでもないし、天使になる条件も満たしてないだろうし…でも、確か笑夢は大丈夫って言っていたような…?
「肇さんは、善行のおかげで大丈夫みたいですよ?後は…思考のテストですかね?」
「思考のテスト?!何それ?!」
「天界に行く場合は、審査がかなり厳しいんですよ。誰でもホイホイ上げていいものじゃないんです」
「そうよね」
笑夢が俺を見つめながら説明を始める。地獄と天国の話。
地獄には悪魔が居て、天国には天使が居る。地獄は悪人が送られて、厳しい責め苦を受ける場所、天国は善行を行った人のための理想郷。基本的には人間は転生を繰り返す事で自身の行いを正していくことが目的。
天使と言う存在は稀有で、天国に行くことができるものの中でも、更に自身が潔白で清らかな存在である事を証明できるものがなる事ができる。基本、悪魔になる方法は悪魔から生まれるしか存在しないが、神は天使の階段を上り詰めるか、神に生まれるかの二択が存在する。
「こんな感じなんですけど…大丈夫ですか?」
「う~ん…大丈夫ではないかな?」
「更に深堀されるんですけど…。」
「まぁ…頭にとどめるぐらいなら出来そう?」
今回に限っては、俺を天使にするという感じではないらしい。天国に行けるかどうかの審査をして、そこから身の潔白を証明する事が必要になる。
「じゃあ、結局身の潔白を証明することが第一なんだね?」
「そうですね、ただ…肇さんは珍しいんですよ。」
「人種的に?」
「いえ、人間の身でありながら、ここまで善行を積める人が」
「俺さ…そんなに積んでないよ?人間には関わってないし。」
贔屓目で見られているような気がしてならないよ。だって、人助けとかしてないし。虫とかは助けるけど…俺…Gとか叩き潰しているような気がする。そう考えたら…駄目じゃない?!
「実は…肇さんは命を奪った事が無いんですよ?」
「な…なんと?!すごい…!」
「なんです?急に変な感じになりましたね?」
本当に…すごいしか言葉が出てこないよ?蟻とか、潰しちゃってると思ってた。でも…食べるために命を奪っていると思うんだよな…。それは大丈夫なのだろうか。
「本当は…駄目です、でも生命活動の維持に必要なのも事実ですからね」
「あぁ、ダメなんだ」
「かといって食べないというのは、土台無理な話ですね」
「野菜も生きてるからね」
「ええ、植物も動物も…なんでも生を受けていますから」
うん、なんか教育番組みたいだ。ありがとうを込めて…いただきます。
「というわけです!実際殺傷の類は難しい所ではありますね」
厳格に決まったルールがあるんだな。それでも、曖昧になっているっていうのは…きっと配慮してくれているんだろう。神って…どんな存在なんだろう。笑夢が居るから、きっと会う事があるだろうな。
「う~ん…ないかもしれないですね?」
「え?!ないの?!」
「はい、ほら、私は位が高い天使ではないので」
「でも、位は上がるでしょ?」
「そうですね、今は中間まで来ていますよ」
普段と変わらない生活を送っていていいのだろうか?神に近づくために少しでも善行とか…積む?
「その必要はないです、寧ろ今まで通りが良いですね」
「なんで?!」
「普段通りの生活を審査しているので…」
「審査されてるの?!先に言っておいてよ…」




