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「すごい楽しそうな話をしているじゃない?混ぜてよ」

「恥ずかしいからやめてくれって!!」

 智一のお母さんは化粧をして服装を普段着に着替えて登場した。え、俺のためにこんなにしてくれるの?それにしても…若々しいな。何歳なんだ?智一の恋バナ好きはここからきているのかもしれない。

「あ、どうぞ」

「では、失礼して…」

「肇?!いいの?!」

「だって、智一には申し訳ないけど解決できそうにないし…」

「うぐぐ…確かに。俺は話を聞いて楽しむタイプだ…。」

「ははは、私が必要じゃないかね?」

 楽しそうなお母さんだ。こんな母親が家に居たら愉快なんだろうな。というか…話は聞かせてもらったってどこまで?!最初から筒抜けだったって事?聞き耳立ててたの?!ちょっと恥ずかしいな。

「喧嘩の話は、肇君からすると喧嘩って感じじゃないでしょ?」

「そうなんですよ」

「なん…だと?!」

「心のもやもやがあるってだけに聞こえるのよね」

 なんだ?!エスパーか?!超能力者ってどこにでもいるのか?!俺…普通に話してたよね?というかやっぱりきっちりすべて聞こえていたのか…。思った以上に大きな声になっていたかもしれない。

「そうなんですよ」

「なんでそこまで分かるんだ?」

「年の功だよ!言わせるな!」

 智一の頭をひっぱたく。ははは、本当に漫才を見ているみたいだ。変に飾っている大人じゃなくて、こういう大人になりたいかもしれない。周りを下げて笑いを取るのではなくて、自分のマイナスも面白可笑しく話せるような。

「私からは顔が怖いように見えないけどね?そもそも礼儀正しい子だと思うし」

「そんな…ないですよ」

「謙虚なのはいいけど、謙虚すぎるのはあまり良くないのよ?自分のモチベーションが下がっちゃったりするでしょ?」

「そうかもしれないですね」

「私だって年齢を気にしないの、いつだって気持ちよ」

「お母さんはお若く見えますよね」

「もう私も38でアラフォーよ?」

「あ、本当に若かった」

「ありがとう、本当にいい子だね」

 お母さんは凄いニコニコしている。智一は複雑そうな顔をして俺らのやり取りを見ている。気の持ちようなのか、本当に若い。智一を産んでいるとは思えない程だ。20代と言われても飲み込めるだろう。

「自分のマイナスを笑いに変えるぐらいの気持ちが大事よ?」

「はい…顔が怖いと結構避けられてきまして…それでつい」

「智一?あんたももしかして避けてた?」

「う…う、ん」

「あんた!見た目じゃないって言ったでしょ?!」

「ご、ごめん」

「肇君、いい?大事なのは謝るんじゃなくて、言葉にすることよ?」

「言葉…」

「そう、向こうは気にしていないかもしれないけど、こっちが気にしていると軋轢が生まれたりするでしょ?嫌なものは嫌だと言いなさい?」

「わ、分かりました…」

 諦めていたのかもしれない。顔が怖いと避けられているから。どうせ言ったって無駄だ、と。でも、無駄じゃない。言葉にしないと伝わらない事もある。今日だってそうしていたら良かったかもしれない。もしかしたら笑夢には気持ちは伝わっていたかもしれないけど。

「解決できそうかしら?」

「はい、とりあえず言葉にするために今日は帰ります」

「そう、なら良かったわ」

「肇、ごめんな」

「いいんだ、友達ができて良かったよ、智一」

「お、おう」

「お邪魔しました」

「また来なさいな」

 そういって見送りをしてくれる。辺りはすっかり暗くなっていた。そのまま駅に向かい電車に乗る。笑夢は家に帰っているだろうか。帰っているんだろうな、第一声はどうしようか。そんなことを考える。

「う、気が重いな」

 家の前に到着して息を整える。扉を開けると、笑夢はこちらに走ってくる。「ごめんなさい、あんなに気にするなんて思わなかったです」と言ってぎゅっと抱き着いてくる。想定していなかった、こんなに気にしてくれていたなんて。

「顔が怖いって、傷ついたよ?」

「ごめんなさい…まだネタには昇華できませんでしたか?」

「うん、まだ駄目だ。でも、これからはできそうだよ?」

「違う女の匂いがしますよ?」

 笑夢は俺の事をクンクンと犬のように嗅ぐ。わお…これはこれで違う火種になりそうだ。でも、別に友達の母親だし…友達も居たからいいよね?友達の母親は恋愛対象にはならないよ?

「そうですか、なら良かったです」

「うん、俺もごめん。笑夢は気を使ってフォローしてくれたんだよね?」

「そのつもりだったんですけど、結果的に傷つけてしまいました」

 笑夢は項垂れて反省しているように見える。あの場でフォローするってそういう風にしか出来ないか。俺の不器用な笑顔とかが怖がられる原因だったんだし。これからはちゃんとツッコむよ?誰の顔が怖いんや!って。

「それはそれで…違う気がしますね」

「え…本当?」

「お笑いを勘違いした人の発想みたいな…」

「うわぁ…笑いって難しい。」

 そう言って二人で笑いあう。今日1日の厄日はこれで終わったのかな。

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