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 日曜日になり、クラスメイトの名前を必死に覚える。自分の名前を憶えてもらっているからこそ、相手の名前を間違えたりしてはいけないという使命感が生まれる。ただ、何故人の名前ってこんなにも覚えられないものなのだろうか。

「う~ん…この地域何?苗字が皆一緒なんだけど?」

「そうですね、昔から続く名家とかがあると同じになったりしますよ?」

「そうなの?」

「はい!後は…苗字というのが明治時代に名乗ることを許されたはずです」

「え?皆同じ苗字を名乗ったって事?」

「先祖が名乗っていたものを探したりしていたり、新しく名乗ったりですね?皆同じでは意味ないですからね」

「その知識のおかげで今覚えたクラスメイト全部消し飛んじゃった」

「あら、それは残念です、やはり…やりますか?」

「ま、待って!!覚えられるから!思い出すから!」

 待てよ…?顔写真もないと覚えても誰だ?ってなるんじゃ。え、詰んでるじゃん。どうしよう…。笑夢はこちらを見ながらニコニコしている。さては、まだ頭に直接書き込もうとしているな?俺の問いかけに笑夢は頷いていた。

「でもさ、本当にどうしよう?」

「見ますか?クラスメイトの顔?」

「いや…もう素直に名前教えて、と言おう!」

「あら?もう諦めちゃうんですか?」

「仕方ないよ、皆の事を覚えていたら良かったんだけど…」

「でも、肇さんに興味が無かったのは向こうですけどね?」

「まぁ…そうだね」

「なので、仕方ないとかの問題じゃないかと。そもそもあんな状況になってるのに友達を作りたい!と言って頑張っているのがすごいと思いますけどね?」

「そうなのかな?普通じゃない?」

「普通って言葉はありませんよ?人には人の個性が存在するので」

「そ、そうですか」

「はい!なので、肇さんの優しさや真面目さは捨ててはいけない個性となります!」

 笑夢はうっとりした表情をしている。個性か…じゃあ、俺の顔も個性の一つって事なのか。ちょっと待って?優しさが個性なのに顔が怖いってどういう事?!なんでよ?!せめて優しそうな顔をしていてほしかったよ?

「そうですか?優しそうな顔をして優しいと、今度は胡散臭いとか言われますよ?」

「うわぁ…二進も三進も行かないじゃん」

「なので、個性をどう使うかですよ!ね?」

「俺は自分の個性を扱いきれていなかった…と?」

「そうなりますね!」

 確かに、自分の事を良く知らないのに、他人を良く知ろうとしても…か。趣味ないです、やりたいことないです、でも友達になりましょうって言われたら…俺でも怖くなっちゃうな。

「で…なんの話だったんだっけ?」

「クラスメイトの名前を覚える、同じ苗字が多い、苗字は好きに決めていた、個性、の4本構成です」

「あはは、メモがAI機能を搭載してアニメ風に喋ってくれたみたい、ありがとう」

「いえいえ、面白かったのなら何よりです?」

 笑夢は不思議そうな顔をして首を傾げる。面白いでしょ、会話なんてなんの話だっけ?って言ったら大半忘れているのに、笑夢は全て覚えているし、伝えてくれる。しかも、4本構成って…そんな大層な話はしていないよね。

「私にとっては忘れられない話なんですけど…?」

「そうなの?」

「肇さんと会話したり、同じ感覚を共有したり。どれも大事な記憶ですから」

「感覚が全然違うんだね。天使の方が、短い時間を一生懸命生きているみたいな?」

「人間はゆっくりしすぎなんですよ。100年って1世紀ですから。私たちは数10世紀以上生きますけど」

「う、そうかも。」

「色々やってみる方がいいんですよ?1世紀の間に。」

「う~ん…悩むな。俺、やりたいことが無いよ。」

「ああ、肇さんは大丈夫です!私と共にずっと生きますので!」

「え?!そうなの?!」

「はい、最初に了承してくれた時点で決まっています!」

「うわぉ…今決断が鈍ってきたよ?」

「まぁ…逃がさないですけどね?」

「あらまぁ?!怖い。」

「怖いなんて思っていない癖に!」

「はは、バレてる」

 笑夢が一緒に居てくれるなら、別にいいかな?とか思ってしまった。一般的に考えれば超絶怖いストーカーなはずなのに。超能力を使ってどこまでも追いかけてくるような…いや、怖いわ。超怖い。一生逃げられないストーカーとか、怖すぎる。

 落ち着こう、水を汲んで椅子に座る。一息ついて…うん、落ち着いた。多分、恐怖に心が支配されないのは、最初だけ距離を驚くほど縮めてきたけど、それ以外は緩やかに日常が進んでいるからかも。

「私もちゃんと考えていますからね?」

「あ、うん、そうだよね。」

「ああやって登場すればきっと驚くだけで済むし、そのあとは過剰に行かなければ大丈夫、と本に書いてありました」

「びっくりしすぎて心臓止まる可能性もあったけどね?」

「ないですよ、肇さんはびっくりすることに耐性がありますから」

「え?!知らないんだけど?」

「というか…落ち着くのも早いですし、慣れるのも早いんですよ」

 言われてみれば、昔からそうかもしれない。両親が海外出張に行ったことも慣れたし。いや、友達が居ない事に慣れてはいないな。

「それは作りたい願望があるからですよ?作りたい願望があることに慣れたら、友達が居ない事に慣れないじゃないですか?」

「難しすぎて意味が…」

「願望を持っていれば、友達が何故居ないのか?を考え続けるので、慣れることはない、という事ですね」

「そうかな?」

「分かってないし、飽きてきましたか?」

「ぎくっ…そ、そんなことは…ないよ?」

「あからさますぎますね、じゃあ、もう明日に備えましょうか」

 ああ、もうこんな時間なのか。最近喋りすぎて口と頭が疲れている気がする…これが友達ができる感覚なのだろうか?

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