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 会計を終えて店を出る。もう、外は夕焼けに染まっていた。長い事わんわん王国に居たんだな。そろそろデートも終わりか。最初から最後まで緊張してて、体はかなり疲労している。

「そろそろ…終わりですか?」

 笑夢は潤んだ目をして悲しそうに呟く。時間だからしょうがないけど…俺も少しだけ寂しさを感じるかもしれない。なんだろう、終わりって聞くと寂しくなるのは。それに、夕焼けの中って言うのも雰囲気が出ているのかな。

「帰ろうかって言いづらいよ…また、来ようか?」

「え、本当ですか?!」

 わぁ、見事に騙されたみたい。ずるいよ…あんな表情されたら誰だって言っちゃうと思う。楽しんでもらえたみたいだし、良かったかな。笑夢が俺の腕にぎゅっと抱き着いてくる。む、胸が当たる…ちょっと。

「帰りましょうか?」

「う、うん」

 最後までドキドキさせてくれるな…。嬉しいんだけどね?嬉しいんだけど…本当に困ったなぁ。駅まで二人で無言で歩く。なんて話せばいいか分からないし、疲労と胸の高鳴りで言葉も出てこない。

「肇さんは…楽しかったですか?」

「あ、うん。楽しかったよ」

「本当ですか?!なら良かったです!」

「笑夢も楽しめた?俺は笑夢に何も出来なかったけど」

 笑夢は悩んだ表情をする。え、あんなに楽しそうだったのに?!ダメだったかな…。やっぱり、言ってくれてはいたけど…男らしさが欲しかったかな?

「肇さんの色々な表情が見れたので、ほんっとうに楽しかったですよ?」

「はぁ…良かったぁ…」

「男らしさは別に要らないです、だって私両性になれますからね?」

「はっ?!そうだった…」

「男の私はどうですか?」

 うん、かっこいいと思うけど。何かこう…背徳感というか、後ろめたさ的なものがあったりする。もし、好きになったら二つの姿を好きになるってことだし。なんか浮気しているみたいな感じになりそうで。

「大丈夫ですよ?要望には応えられますので…」

「う、なんて答えればいいのか…」

「受け入れてくれればいいのです、安心してください!」

「出来るか?!」

「ふふふ、いいんです、余計な事は考えなくて!」

「そう?かっこいいとは思うよ」

「そうですか、良かったです!学校でしか使わない予定ですからね」

 一番手っ取り早いと思う。友達を作るって、どういう方法だろう?と思ったけど、学校で仲介役をやってくれるなんて。最初こそ、驚いたけど、クラスメイトは名前を憶えてくれたし…って俺が覚えられてない!!まずいな…

「教えましょうか?覚えてますけど…」

「ええ?!あんなに囲まれていつの間に聞いたの?」

「見たら覚えました」

 もう、驚かない。トンデモ能力が山ほどある、と思っておこう。教えてもらうって言っても…クラスメイト約30人全員分を…一晩で?俺は…覚えられないと思う。頭が爆発するんじゃないかな。

「頭に直接書き込みますか?」

「え?!こっわ?!」

「もしかしたら…ゆで卵みたいに破裂する可能性も…」

「電子レンジ?!レンジだけは勘弁してください…」

「ふふふ、しませんよ。なんで大事な人を失わなくてはならないのですか!」

「え、爆発は冗談じゃないんだ?」

「う~ん…多分しませんけど、何が起こるか分からないですからね?」

「うわぁ…手術の誓約書と同じ気持ちになるんだ」

 責任は取れません…って。そんな不安な気持ちになるなら、ちゃんとクラス名簿見て覚えるよ。笑夢ははにかんで頷いている。同じ苗字の人とかいっぱい居るんだろうな…下の名前まで覚えよう。

「佐藤さん6人、鈴木さん3人、高橋さん4人、田中さん5人ぐらいですかね?」

「え?それだけで18人?うわぁ…絶望だ」

「大丈夫ですよ、苗字だけ一緒ですから」

「12人の方から覚えようかな」

「肇さんって珍しい方ですよね?」

「そうだね、谷古宇って聞いたことないし」

「全国に1500人程しか存在しないですからね」

「へぇ…え?何?調べたの?」

「いえ、思い出しました」

 珍しい苗字のおかげで人から名前を覚えられることは多かった。主に悪い方にだけど。今は少しだけ状況が変わってきたから、1500人しかいないなら嬉しいかもしれない。

 電車のアナウンスと同時にホームに電車が入ってくる。それに乗り込んで家の方へ帰る。デートは良く考えてみればあっという間に終わってしまった。楽しかったけれど、緊張で記憶がほとんどない。

「さて、夕飯は何にしましょうか?」

「何がいいかな…なんでもいいかも?」

「もう…倦怠期ですか?」

「え、ごめん?何か、思い浮かばなくて」

「仕方ないですね…ハンバーグにしますか?」

「うん、ありがとう」

 笑夢の作ってくれたハンバーグに舌鼓し、初デートは成功?という形で終わった。

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