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戦国時代に転移した話  作者: べりある
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大きな失念

 能美郡支配を計画しつつもこのところ特に問題もなく平和が続いている。交流と交易も順調だ。

 平野部では夏の匂いが強くなり、ここ能美郡山間部でも少しずつ暖かくなって過ごしやすい季節になってきていた。

 

 そんな日の出来事。


 白山麓牛首あたりでも順調に取り込んでいきつつある、つまり経済的な依存度をかなり高められてきているという報告を聞いて安心していた時に、ある報告が紛れ込んできた。


 それは大日川上流、新保に交易と交流、勿論諜報もさせている者からの報告だった。


「新保峠を越えた先、越前大野郡の一向勢が平泉寺に対して攻勢に出つつある、という噂が入ってきているようです。江沼郡の一向勢や石川郡の二曲も支援に回るとか。現状は兵の派遣ではなく物資による支援程度でしょうが。」

 氷雨は既に他からあがった一連の報告をまとめていたようだ。

「大きな軍事行動になりつつある?」

「このままですと、その可能性は高いかと。」

「よし分かった。氷雨、報告ありがとう。琥珀、閣僚級までを集めてくれ。」

「恐悦至極に。」

「承知しました。」


 閣僚級は大臣、長官クラス、まあ何かしらの担当を任せている配下達だ。部下がいるいないにかかわらず。なのでそこそこ人数はいる。ちなみに桜と弟夫妻の場合は首脳って言い方をすることもある。


「みんな忙しいのに急いで集まってくれてありがとう。わが神護寺家に緊急事態、という訳でもないけど、放置すればそうなる可能性がある。」

「いえ、当然の事です。で、どのような?」

いつものように景久が代表で話を進める。

「氷雨頼む。」

「はっ。」


 氷雨から状況の説明を聞き、それに対して配下から氷雨に質問があり、皆それぞれの立場からの状況を一通り把握していく。


「状況は理解しました。それで如何致しましょうか。」

「そこなんだよね。まずはそこからの意見が欲しいかな。」

「承知いたしました。まずは私から。」

景久に頷き返す。

「では、静観と関与という選択肢があります。静観と言っても戦略的なもので注視は続けながらというものがありますが、、。」

と言って周囲の配下達を見渡して話を続ける。

「今回は誰もその選択肢は望んでいないようです。勿論私もその一人ですが。その理由も今回は省きます。」

「うん、そうだね。俺もそうだからね。続けて。」

「はっ。では関与について。まずはどちらにどう関与するのか、でしょうか。越前側白山麓の一向宗か平泉寺。手勢を向かわせるのか何らかの支援までにするのか。いずれにせよ、長所と短所はあるかと。」

景久はここで一旦区切って一息をつきこちらを軽く伺う。

「みんなそれぞれの立場もあるし考えもありそうだ。少し考えを纏める時間も必要だろうし、長丁場になりそうだ。昼餉を挟んで続きを行おう。みんな急ぎの要件があれば先に済ませてきて欲しい。」


 景久の意図と合っていたようで安心している。俺も安心だ。改めて午後から集まることを伝えて解散させる。

 傍には首脳と琥珀翡翠、炎だけが残った。まあ首脳というより家族だね。

 お昼ご飯の準備に向かった琥珀と翡翠、残った俺たちの話題は当然今回の件になる。


「周囲の状況、と言っても大野郡は広大だな、美濃や飛騨とも接しているのか、ややこしいな。」

「美濃の東氏や土岐氏、飛騨の内ケ島の情勢も深く探らせる必要があるかと。」

「評定を始める際に、分かってる範囲でもう一度氷雨からも説明してもらおうか。氷雨にそう伝えておいてもらえるかな。」

外で控えているであろう、藤と菖蒲に聞こえるように声をかける。

「承知しました。」

という返事がして気配が消える。


 しかし便利だなあ。大変だろうけど。まあ彼女達は護衛と氷雨との連絡役だから、スマホもない時代だしああやって控えていて貰うしかないんだけどね。

 控えていると言っても、庭と言う程でもないけど外で訓練していたり、隣の部屋で勉強していたりするので、常に待機してるわけでもないからね。


さて、昼食を済ませたら会議が始まるまでにもう少し考えを纏めておこうか。桜たちにも手伝って貰おう。加賀国ばかりに意識をとられていて、郡境を接する越前方面を完全に失念していた挽回をしないとね。


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