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戦国時代に転移した話  作者: べりある
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計画は遠大に。気宇は壮大に。悪口は放題で。

 今日は本覚寺側が条件を受け入れて動いてくれることになりそうという事で、一先ず安宅を見学に来た。少し大きめの川船での移動だ。大きめとはいえ船頭1人が操作する船だ。船より舟の方が適切な気がする。

「二千人くらいはいるのかな。」

「はい、その程度はいそうですね。」

川から流れゆく町並みを見ながら何となく発した独り言に、お付きの琥珀が答える。

 思っていたより栄えている、と言って良いのかな。寂れていない、と言うべきか。

 判断基準が令和だからね。この時代の基準は分からないけれど、それでも活気はあるように感じる。

 安宅は漁港でもあるからね。お土産に海の魚でも買って帰ろう。実際そのくらいしか見るものが無いんだよね。

 一応、日本海交易の中継地としての機能もあるし、ここを起点に前川方面と梯川方面への運送基地ではあるのは間違いないようで、蔵や船もそれなりに並んでいるし活気はある。でもそれだけだ。大きな市が開かれている様子はない。能美郡全体がもう少し発展しないと、この地方の中継地点でしかないのは当たり前ではあるよね。


「まずは物々交換でも、商取引そのものを活発化させたいですね。」

「銅の放出量を予定より増やす方が良いのかもしれぬな。」

これはうちの財務のトップの六兵衛と十兵衛こと夜叉丸の会話だ。

「二人の判断に任せるよ。備蓄量との兼ね合いは佐美の小父さんと話し合って決めてくれればいいから。」

ゲームの時は、食料生産力を向上させて治安維持をするだけで、基本的には人口は勝手に増えていくものだったけれど、上杉謙信みたいに関東(はたけから拉致(しゅうかく)してくる訳にはいかないだろうしなあ。

「能登畠山氏は金山もあったとはいえ、管領家だからこそ貴族が頼ってきたんだろうし。公共事業は有効だろうけどその立場でもないからな。」

「そうですね、今できることは民業の立場から商取引を活発化させるくらいかもしれません。その分、情報収集やその情報を活かした計画を立てられるだけ立てておきましょう。」

「そうだね、まあ結局は六兵衛に頼むことになるんだけどね。」

「ええ勿論ですとも。任せてください。」


 その後も六兵衛と夜叉丸の話を聞きながら、前川を遡り三湖方面に舟を進めていく。

「放出量を増やすより、それを証拠金に使って信用取引、先物取引を始めませんか?」

「米転がしか。銭を稼ぐのか?」

「はい。銭と言っても銅銭ではなく金や銀ですが。」

彼らの言っていること自体は理解はできる。けど実際どうすればいいのかは分からない。金融とかは全然やってこなかったからなぁ。俺の会社を上場させようとかも考えてこなかったし、そもそも『信用』という価値も分かっているようで、本質的に理解をしているのか?と問われたらば自信をもって肯定すること難しいかもしれない。もっと理解が深ければ株や暗号資産にも手を出せたんだろうけどね。

 なので彼らの話には入らない。入れないとも言う。俺は俺で将来的な農地改革や治水事業を見越して連れてきた治棟(はるむね)と景色を見ながらたまに会話をしている。

「何か思うことはあるかい?」

「ええ、結構改善の余地はありますね。というかほぼ全面改修というのが一番良さそうですがね。一つ一つを局所をやるより、かえって早く済むでしょうな。」

「それはそれで大変そうだね。資金や労力の確保もね。崇景あたりが卒倒しそうだよ。」

「それは確かに。まあそれも結果的に抑えられそうですがね。その分、事前準備や根回しは大変そうだ。まあワシらは事務方に押し付けて現場でのんびりやっつけるだけですから気軽なもんですわ。」

「崇景が来られなくてよかったよ。」

「崇景殿は普段は鷹揚な方ですが、崇弘様の無茶振りを必要以上の大事に請け負ってしまいますからな。」

「真面目なんだよ。」

「面白味には多少かけますがな。」

「それが崇景のいいところじゃないか。」

「それも崇景殿本人が聞いたらそこじゃないって嘆きそうではありますな。」


 など。


 江沼郡に入ることになってしまうので柴山潟には入らなかったものの、今江潟と木場潟は十分に見て回れたと思う。

 俺がパッと見ただけでも、農地としても水運の津としても十分発展しそうに感じられる場所は沢山あった。

 どうしても21世紀日本の知識からくる既成概念があってこの地の潜在能力を低く見積もっていた気がする。

 そう思ってしまった以上、ある意味責任は重大だよな。一体誰に対しての責任なのかは知らないけどね。この地を支配しようとする立場への責任感、と言うべきかな。

 まあでも楽しそうだと思ってしまったんだよね。戦国ゲームの廃プレイヤーとしてなのかもしれないけども。



治棟 はるむね

真護寺家の出身。同じ親父衆からは所帯出と呼ばれている。年代的には親父達より少し下がるので主人公にとっては親年代ではなく、歳の少し離れた従兄のような感覚である。

還俗したため真護寺姓は名乗っていない。

僧をせず農業を生業としており、新規作成武将に農家が増え、プレイ内容に土木作業の必要性が増えたとこで土木建築の責任者となった。

町割りなどでの土木作業も担っているが本職適正から治水を含む農地改革を得意としている。

本人はあくまで現場で働く農家で土木建築の職人のつもりだが、いわば建設大臣であり農林水産大臣でもあり、立派な行政官の立場である。

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