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戦国時代に転移した話  作者: べりある
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いつだって鍛錬は必要なのである。

 初めての戦があったということは、初めての戦後処理があるのも当然だ。かといってすべて事前に決まっていたことを遂行するだけだ。特に決済することもないので、適当に皆の様子を見て回ることにする。


 狭義の戦後処理、(つまりハリネズミと化した死体の処理の事だ。)はまだ夏前とはいえ、放置しておくのは見せしめとしてもあまりよくない。首領の松永何某の首だけ塩漬けにして、二曲城にでも届けておこう。引き取るかは分からないけどね。ここにはいつも頼ることになるけど季久叔父さんにお願いすることにした。

 元から強面の上、落ち着きも纏ってまるで何処かの組の大親分みたいな風貌だ。国人程度なら貫禄負けすることはないだろう。


「そう難しい交渉ではありません。関の廃止と松永一党を滅ぼしたこと不問としてもらえば上々です。」

「ああ、分かった。任せておけ。取れるものは取ってきてやるさ。」

その季久叔父さんは崇景と二曲氏との交渉について話している。本来意味の戦後処理だ。やはり任せて問題なさそうだ。


「義叔父上ならキッチリ『落とし前』までつけてきそうだよね。」

「ああ、右京進の片腕くらいは落として来て欲しいものだな。」

葵と炎はすることがないから暇そうだ。いつぞや話した俺知識の『任侠』を覚えているんだろう。特に葵は随分と気に入ってたからね。


「父上は比咩神社へ改めて挨拶と手土産をお願いしたい。」

「承知した。若住職は後処理で動けないとでも言っておこう。しかし良いのか?白山権現などと言っても今は実効力のない古ぼけた権威しかない相手だ。松永一党にすら馬鹿にされておったぞ。」

「ええ、構いません。寧ろ力のない権威ならば精々利用させていただきましょう。」

こちらは崇久と親父が話している。


 白山比咩神社。崇神天皇の御代に創建、泰澄大師によって開山し、加賀一の宮として栄えて5世紀以上。だけどこの戦国時代になると信徒衆も一向宗によって解散させられ、困窮しているという。

 そりゃあ石川郡山内庄を纏める二曲氏には逆らえないよね。まあ同じ地祇の姫神を奉る同士だ。彼方は大和王朝から従三位に初叙されていて、此方はまつろはぬ忘れられた神とはいえ。


 ともあれこちらも頼もしい限りだ。


 暇そうにぶらついていると、同じく暇そうな炎から声が掛った。

「藤と菖蒲を連れて、弓を戻しに行くんだけど崇弘様も一緒に来るかい?」

「ああ、行こうかな。せっかくだから少し弓の練習をしておこうかな。」


 という事で元から侍っていた翡翠を含めて5人で兵器庫にやってきた。

 数人の職人が弓の確認や調整をしている。


 弓。先刻の山賊退治に使ったのは小弓だ。小弓とは言ってもいわゆる合成弓だ。小弓とはいえ、単一素材で作った長弓よりも飛距離も威力も桁違いだ。正直、火縄銃よりも取り回しがしやすく、どんな環境でも使え、連射も出来る。

 だけど合成弓は一張作るのにも数か月から半年は必要だし、小弓とは言え使いこなすまで修練が必要だ。

 それに引き換え、火縄銃は生産開始から完成までが短いし、連射出来ないとはいえ誰でもすぐに撃てるようになる。

 つまり弓の教育さえ徹底して行うことができるなら、鉄砲隊より弓兵部隊の方が強いと言っても過言ではないのだ。という信念の元、全軍を弓部隊として配備しようとしたら、火縄銃配備の方が圧倒的に効率が良かったので断念したという思い出がある。

 変なところまでリアルすぎるんだよね『BUSHI』は。


 でも今回の山賊退治で改めて思ったんだよね。やっぱり連射も出来ない直射しかできない火縄銃より弓の方が強いなって。

 数千人規模の弓部隊、やっぱり難しいかな。

「すべての兵に弓の訓練を徹底するのは構いませんが、現状総勢250名の中で崇弘様より下手な者はおりません。理想を語るより、まずは自ら範を示して欲しいものです。」


 的確なことを『的を得る』とはよく言ったものだ。

 翡翠の言葉は俺の放つ矢よりも確実に、俺の弱点に突き刺さったのであった。

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