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戦国時代に転移した話  作者: べりある
16/31

根はより深く、より広く 5

 さて殺す覚悟はした。だからって「よし()るか。」といってすぐに飛び出すわけじゃない。

「集まってくれてありがとう。」

桜たち集まった配下武将に声をかける。いつも心の中で武将って呼んでるけどみんな武将じゃないんだよな。武を司る指揮官、みたいな広義で解釈しても、半分以下なんじゃないかな。なんか部下とか配下ってどうにも慣れないんだよね。だからって仲間というのも違う。いや彼らは全幅の信頼を寄せる仲間ではあるんだけどね。彼らが俺に求めているのは善政を布く独裁者だ。まあそういうプレイをしてきたし俺もそうあろうとして来たし、これからもそうしていこうと思ってる。まあ、今はそれはいいや。今は緊急山賊対策会議だ。

「織津天龍八部衆、および真護寺四天王、参集の命を受け、崇弘様の御前に揃いましてございます。」

「光顕、そんなものはない。黒歴史だ、早く忘れてくれ。」

「そうですか、私は気に入っていたんですけれど。」

受肉後、それぞれより個性を発揮するようになってきたけれど、光顕はこういう感じになってしまった。

 そういえば桜はくだけた俺に合わせてくれるけれど、弟たちはいたって真面目だ。

 柔和な容姿で狂気の戦争屋。厨二のお調子者。そんなキャラメイクはしてないはずなんだけどな。まあ俺自身はこの変化を悪くないと思ってるし、みんなからも受け入れられている。曲がったことは嫌いそうな委員長キャラの蓮も呆れて苦笑しているだけだ。反感を買っている様子は全くない。

「ご当主様いじりはもういいですか?光顕叔父上もご当主様も余談が多くて話が進みませぬ。ほどほどになさいませ。」

と最年少の葵がぷりぷり怒ってるけど、本気で怒ってるわけではない。まあお約束みたいなものだ。

「そうだな、雑談はこのくらいにして本題に移ろうか。」


 その後俺は能美山内五箇村の乙名から聞いた話をみんなに話した。

「確かにそうですね。話し合いで解決するとは思いません。」

光顕はおいておいても、比較的武断派の多いわが陣営の武将たちの中で最も非戦的なのが(なぎ)でそう判断するんだな。まあこの時代の人間なら当然と言えば当然だ。彼らは武装集団だ。

「確かに交渉で折れるとは思いません。面目が丸つぶれですからね。日和ったと判断されると彼らの寄って立つ存在意義がなくなりますからね。」

武断派とはいえうちの行政長官を担当する崇久も同意する。

「難儀なもんだね全く。」

言葉と裏腹に炎は楽しそうだ。

「多かれ少なかれ武士とはそういうものであろう。」

役割としていつも武士の裏側を見てきたであろう氷雨ならともかく、明鏡止水を地でゆく剣客の葛葉が珍しく皮肉がこもったような発言をする。受肉後に変化したのは葛葉も同じだ。なぜか炎が気になって仕方ないらしい。普段落ち着いているのに炎の事となると少しポンコツ気味のおせっかいなお姉ちゃんと化す。今の発言も武士に対しての皮肉というよりも炎を諭すような感じなんだろう。なんだろう、ギャップ萌えか?それが狙いか?

「いずれにしても情報収集が先決でしょう。背後、と言うほどのものがあるかは分かりませんが、諸勢力の思惑や関係も徹底的に調べてまいります。」

と氷雨が姉妹が作った空気と俺の脳内ツッコミを現実に引き戻す。

「そうだな。氷雨。頼む。うちにとって喫緊な問題ではないかもしれないけれど、こうしてる今だって五箇村の誰かが被害にあってるかもしれない。」

「かしこまりました。直ちに」

氷雨の返答に俺もうなずき返す。

「俺は季久叔父さんを連れて村を回る。明日から3日間もあれば亡くなった人たちの家を回ってこれるだろう。情報部から気の回る小僧を3人ほど付けてくれ。見舞い品を持たせて村の慰撫をさせながら情報収集だ。」

「畏まりました。」

「それでは兄上達はそのように。私たちは交易などを通じて表から情報収集を行います。夜叉丸もこちらで動いてもらいます。」

と崇久に「頼む。」と頷いて返す。

「私も崇弘様についていこうか?」

と炎が同行の許可を求めてきた。なんだかんだ言って心配性なんだよな。

「いえ、ここは私が。」

と翡翠が俺の返事を待たずやや食い気味に割って入る。変な対立関係を作るんじゃないよ。まあじゃれあってる感じだけど。

「そうだね。翡翠にお願いするよ。炎は討伐時には実行部隊の責任者だ。氷雨たちとの情報を常に共有して天籟たちと作戦を考えておいてくれ。うちからは一人の負傷者も出したくない。天籟も頼む。」

「はいはい、分かったよ。私に任せとけ。」「承知いたしました。」

炎は内心はともあれ渋々といった様子で、天籟は恭しく頭を下げた。

俺の後ろで翡翠が勝ち誇っている。てか翡は表情で炎を煽るんじゃない。ほら炎も張り合わない。

「崇弘義兄上、そこはお前だけが頼りなんだ。っていうんですよ。そうすれば炎お義姉さまだって素直になるんです。」

葵ちゃんや、君はちょっと黙ろうか。それに呼び方がご当主様から兄上になってるし。てかさっきは光顕に余計な話すんなって言ってなかったか?

「葵!お前!」

はいはい炎もね。刀をひっつかまない。まあ抜かないだろうけど。

「んん!」

と崇景の咳払いで二人を、いや翡翠も入れて三人か、を諫める。ありがとう崇景。感謝の目配せを送る俺。いかん思考を戻そうか。

「ええと、桜は慰霊の準備をしておいてくれ。琥珀をつける。琥珀も手伝ってくれ。そう大げさなものじゃなくていい。村を回って帰ってくることを考えると5日後かな。乙名さんたちも呼ぶから。」

「ええ、承知ました。」「畏まりました。」

桜はこの少しにぎやかな会議が楽しいらしい。琥珀なんかはイメージ的には目くじら立ててそうだけど、案外楽しそうだ。

「では、それまでに可能な限り調査を進めます。」

氷雨は空気を引き締めようと頑張ってる。少し苦労性なのかもしれない。

ずいぶんと人間臭くなったな、みんな。いい傾向だと思う。勢力が大きくなると新しく入ってくる人もいるだろうし、こんなのは今だけかもしれないけれど、だからこそ今はこれでいいと思う。


「最初ここに来たときは自分たちの事だけでいっぱいいっぱいだった。実際今でもそれは変わらないけれど、俺たちがこの地に覇を唱えることは俺たち自身だけじゃなくこの地にも安寧をもたらすことになる。それを改めて思い出したよ。この地に安寧と繁栄を。それこそが大義名分だし、目指すべき理想だ。俺はそれを成し遂げたいと思う。みんな、よろしく頼む。」



禍津凪 まがつなぎ

禍津一族。真護寺家幹部武将の中では最も慎重派で穏健派。戦略系軍師タイプで作成したものの既にそこそこ武将がそろっていたため、活躍の場が後方の内政官に。ただ根本の能力が個人戦闘が得意なわけではないものの軍事向きな為、領地全体の治安維持を担当することになった。外見は冷酷薄情で血も涙もない粛清好きの情報局幹部のよう。内面はそれほどでもなく普通。特に温情家でもない。どちらかと言えば冷静で慎重。ただいったん行動に移ると神速。受肉後、ある種の超然さを漂わせてるので掴みどころがない。



※主人公兄弟の嫁、織津三姉妹の性格。

桜はまさに絵にかいたような正ヒロインに相応しく、典型的な可愛く優しい幼馴染キャラ。織津一族を率いる主人公を陰日向問わずに支える慈愛の聖母。

二女の蓮は委員長的生真面目な優等生、クール系美人である。冷たいように見えるけれど冷静なだけ。言葉や態度が冷たいのは翡翠。

三女葵。空気を読まない元気娘。理知的な蓮とは対照的に根性論で熱く語る。かなり炎を慕っている。逆に光顕の事は敵だと思っている。(当然、そこに憎悪はない。単なるおふざけレベルの話である。)

変化したというよりも、より明確化して個性が強くなった感じ。


※織津と神護寺と禍津の関係

設定では、織津は祭神瀬織津姫の子孫で、女が祭司を務める。なので瀬織津姫神社の宮司は女性である桜が継いでいる。


真護寺は瀬織津姫神社を仏道から守護する別当の当主家。男性が当主を司る。織津と真護寺の当主通しが婚姻関係である必要はないが、かといって特に問題があるわけでもない。歴代を遡れば何度かあって、そもそも織津の外戚として織津の世事を担うことになった経緯がある。以降、祭祀は織津が司り、政治は真護寺が担うこととなった。祭祀を司る権威と、政治を司る権力を分けて統治するのは古代日本から受け継がれた文化でもあり、大和王朝にまつろわなかった瀬織津族もその文化を色濃く残している。

世俗の事に関しては織津は真護寺に従っているし、真護寺も祭祀に関しては織津を立てている関係。お互いを尊重する関係であり、役割を明確化しているため、どちらが偉いかというのは決まっていない。その時の人間関係で決まる。

主人公の父、崇顕の代では織津の当主は桜の祖母であり一族の長老である大婆様だったため、崇顕や季久らは頭が上がらなかったという。


禍津は織津の分家で、今代に禍津直系に(つまり桜の兄弟にあたる)男子はいないが、織津を継げない男子一族が禍津を名乗る。

男性による一門なので織津を武力で守ってきた経緯があり、必然的に軍事集団となった。成立期はともあれ軍事は政の領分なので今は真護寺に従う関係になっている。そういった経緯もあって禍津は真護寺と姻戚関係を結び融和してきた。

なので炎が主人公の嫁であるのも生まれた瞬間に決まっていたことでもあり、順番から言えば炎が主人公の第一夫人でもある。桜との婚姻は実はAI時代の桜による押しかけ婚でもある。



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