第一話①
朝、それは、一日の初めに必ずやってくるもの。地球は自転を繰り返し、太陽系に従って公転を繰り返している。だから、必ず「朝」はやってくる。
春風が街をかける。
町に響く雑踏。陽だまりに当たるとほのかに暖かく、日陰に入れば、肌身が少し冷えるのがわかる。空を見上げれば、澄み切った青空が広がっていた。
マンションの二階部分の一室。そこから物語は始まる。
彼は、そこを住まいにしている。いや、彼らと言ううべきだろう。
窓を背に椅子に腰かけ、足を机の上に放り出し、顔を天井に向け、耳を澄ますと寝息が聞こえる。彼の名前は、ラウル=システマ。
その姿を横目に、コーヒー豆をひいている、片目に黒い眼帯をした男。もう一人の彼、名前をシグル=グローレン。引いた豆に、沸騰したお湯を注ぐと、ポタポタとデカンタに漉されたコーヒーがしたたり落ちる。
出来上がったコーヒーを一口飲むと、テーブルに置いてあったタバコに火を付ける。そのまま傍らにあった椅子に深く腰を掛けた。
すると、一本の電話が鳴る。・・・
始まりは、この一本の電話。
「なんだ、電話か、、、」
寝たままの彼は、ちらりと音のなるほうを見たが、すぐにまた目を閉じた。
「電話ぐらい出ろよ」
同居人である『シグル』が、自分の代わりに、受話器を取るのがわかる。
おそらく仕事の依頼だろう・・・
彼は、伸びをすると、椅子から立ち上がった。
「殺しだ」
「了解」
かけてあったジャケットを手に取った。
陽だまりに当たっていたおかげか、羽織るとほのかに暖かさを感じた、、、。
「場所は?」
「飛鳥地区」
「めちゃくちゃ遠いな
車で、四、五十分ってとこか、、、」
「そんなもんだな、、、」